最終章 決着

最終章 決着 (1)



○東都大病院・庄司の病室 (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 00:15」


 まだ意識が戻らない庄司を、ベッド脇の椅子から見つめている夏目。その表情は無。




   夏 目 「リクソンはおまえを撃とうとしたんちゃう」

       「俺を撃とうとして、たまたまおまえに当たっただけや」




 確認作業のための思考の音読なので、感情がこもっていない。




   夏 目 「分かってんねん。おまえが撃たれたんは俺のせいや」

       「せやから……俺がリクソンを殺してまうようなことはないと思うねん」




 間があってから、さらに言う。



   夏 目 「ないと思う」



 さらに間があってから、言う。



   夏 目 「ないはずや」



 それから長い沈黙ののち、立ち上がる夏目。



   夏 目 「ほなな」



 挨拶として少し庄司を見つめてから、病室を出てゆく。

 ここで暗転。






○神室町・大通り (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 00:32」


 賽の河原を出た東城。覆面ではなく、サングラス着用の状態。


 歩いていると、数十人という規模で不良がぞろぞろ現れ、大きく囲まれる。


 東城、立ち止まり、周囲を見回す。


 そんな中、ボス格(不良Gと表記)が正面から近付いてくる。

 不良G、やや怪訝そうな様子で、しかしなれなれしく話しかけてくる。



   不良G 「あのさあ、ちょっと聞きたいんだけど」

   東 城 「……何だ?」

   不良G 「あんた、もしかして、さっきまで覆面かぶったりしてなかった?」

   東 城 「……だったらどうなんだ?」



 すると不良G、我が意を得たりという顔で笑い出す。



   不良G 「やっぱな! 服装は言われたまんまだし、デケエ態度ってのも確かにそうだわ」

   東 城 「……おまえたちは一体何なんだ?」



 不良G、そこでイヤなニンマリ顔になる。



   不良G 「いや、ちょっと頼まれごとがあってさ」

   東 城 「頼まれごとだと?」

   不良G 「そっそ。あんたをボッコボコにして劇場前通りに晒せば、一千万やろうって人がいるんだよ」



 東城、無言のまま不良Gを見据える。

 不良G、ニタリと笑う。



   不良G 「で、きっちり息の根止めて晒せば、一億」


       「もう100万は貰ってっから、その分くらいの力で済ませりゃコスパ最強だよな」




 それで後ろの奴らがゲラゲラ笑い出し、それが周囲に伝染し、笑いに取り囲まれる形となる東城。



   不良G 「よおし! 最初にダウン取った奴が半分持ってけ!」



 周囲の笑い声が鬨へと変わる中、呟く東城。



   東 城 「変わらねえな、この街は……。分かった、まとめて面倒見てやる」



 そして東城、構えを取ると、宣言。



   東 城 「手加減はしねえ。死にてえ奴だけかかってこい!!」



 ここで、「vs. 神室町の不良集団」の戦闘になる。





○神室町・大通り (深夜)

 戦闘後。周囲は死屍累々となっている。


 東城、道の真ん中で立ち尽くし、やや息が切れている。


 そこへスマホが鳴る。疲労を隠し切れない東城、息をつきながら出る。




   東 城 「次は何だ?」

リクソンの声 「そろそろ1時だな」


   東 城 「ああ……そうだな」


リクソンの声 「ミレニアムタワーの屋上には100億が積まれている頃だ」


   東 城 「ああ」


リクソンの声 「ところで、その100億を回収した後……堂島はどこで解放されると思う?」


   東 城 「……どこなんだ?」


リクソンの声 「誰にも明かさずおまえひとりで、私の許まで来れたら教えてやろう」


       「まあ、約束を違えたと分かった時点で、堂島を殺すだけのことだが」


   東 城 「誰にも言わない、必ず俺ひとりで行く。おまえ、今どこにいるんだ?」


リクソンの声 「東都大病院の屋上だ」


   東 城 「何だと?」


リクソンの声 「聞こえなかったのか? 東都大病院の屋上だ。必ずひとりで来い」




 そこで通話は終了。

 東城、スマホをしまうとすぐに駆け出す。


 そこで暗転。








○冴島道場 (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 00:49」


 ジムの中はそこそこ盛況。


 それをリング脇から見ている冴島組の若衆の1人(冴島組若衆Aと表記)、隣の冴島に問う。




冴島組若衆A 「俺ら、やれることはないんすかね」

   冴 島 「ミレニアムタワーには真島組のモンがぎょうさん控えとる。磐井組と矢部組の精鋭もおる」


       「俺ら5人ぽっちが行ったとこで、却って邪魔するだけや」


冴島組若衆A 「そうかもしれませんけど……」




 そこへ、ヒクソンがやってくる。



   冴 島 「おう」



 声をかけられたヒクソン、気まずそうな笑顔を見せ、手を上げる動作で答えると、更衣室へ。





○冴島道場・更衣室 (深夜)

 ヒクソン、バッグを空いているロッカーに押し入れる。


 その瞬間、スマホが鳴る。取り出して見たスマホ画面には「RAY RICKSON」と表示されている。


 急いで出たヒクソン、日本語で話しかける。




  ヒクソン 「レイ? どうしたんだよ、これまで全然出てくれないで――」


リクソンの声 「ギル、おまえまさか神室町にいるのか? 冴島のジムがあるビルに入っていったように見えたが?」




 ヒクソンは口ごもったのち、正直に答える。



  ヒクソン 「そうだよ。東城会に復讐するなんて言われて、じっとしてられるわけないじゃないか」

リクソンの声 「(少し呆れ声で) それでナンバー2のところに潜り込んだってわけか?」


       「おまえ、それは見当違いだぞ。そいつは我々の復讐の相手じゃない」


  ヒクソン 「レイ、聞いてくれ。復讐なんかやめるんだ。そんなことは――」


リクソンの声 「時間がない、おまえこそ話を聞け。――今夜、神室町ヒルズには行くな」


  ヒクソン 「……何だって?」


リクソンの声 「爆弾が仕掛けてある。爆発すればビルが倒壊する。その場にいれば確実に死ぬ」


  ヒクソン 「レイ! どうしてそんなことを!」


リクソンの声 「あれは堂島が建てた六代目東城会のシンボルだ。見ているだけで不愉快なんでな」


  ヒクソン 「レイ! あそこには何の関係もない人たちが大勢いるんだぞ!」


リクソンの声 「そうだ、こんな堕落した街に遊びに来るような、下劣な人間ばかりがな」


       「彼らは死者となることで、我々の復讐の壮大さを演出してくれるんだ」


  ヒクソン 「レイ、駄目だ、それは絶対に間違ってる。いくら父さんの復讐を言い訳にしたって――」


リクソンの声 「おまえが今いる場所も危険だ、早めに退避しておけ。――じゃあな」


  ヒクソン 「レイ! レイ! 駄目だ、お願いだから――」




 しかし通話は切られる。



  ヒクソン 「レイ! レイ! くそっ、何でこんなことに……」



 折り返し電話しようと必死になっているところへ、冴島がやってくる。



   冴 島 「ヒクソン? どないしてん、えらい怒鳴って」



 その冴島を、すがるような顔つきで振り返るヒクソン。

 それにより変事が起こったことを悟った冴島、表情が険しくなる。






○ニューセレナ (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 00:54」


 イライラMAX状態にある秋山と伊達。


 その時、秋山のスマホが振動。画面を見た秋山、




   秋 山 「あれ? 冴島さんだ。向こうから電話なんて初めてじゃないかな……」



 と言いながらスピーカーを解除し、出る。



   秋 山 「はいもしもし、秋山です」

  冴島の声 「おお、冴島や。急にすまんな」


   秋 山 「いえいえ。どうしました?」


  冴島の声 「おまえ、伊達さんの連絡先知らんか?」


   秋 山 「伊達さんの連絡先……ですか?」



 

 秋山、伊達を見る。伊達も驚いたように秋山を見返す。



  冴島の声 「せや。知らんか?」

   秋 山 「いや、知ってますけど。て言うか、いま隣にいますけど」


  冴島の声 「そうか! ほな替わってくれ。大事な話があるんや」


   秋 山 「大事な話……」


  冴島の声 「神室町ヒルズに爆弾が仕掛けられとるらしいんや」




 それにより、さしもの秋山の顔も凍り付く。



   秋 山 「爆弾!?」



 そこで暗転。







○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)

 ビル屋上を上空から映すことで、屋上に100億が積まれているのが確認できる。


 メールの指示どおり、帯封がついただけの札束がむき出しで積まれ、その上から透明ビニールシートで覆い、その四方をコンクリ片で押さえてある状態。






○ミレニアムタワー・正面玄関 (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 00:57」


 ミレニアムタワー正面玄関の手前には、真島組本家の組員たちが集結している。


 その中心部にいるのは夏目、真島、若林、西田。


 周囲には南を始め、真島組本家の若衆が揃い、皆一様に厳粛な面持ち。


 真島、夏目のほうへ進み出ると、いつもの調子で話し出す。




   真 島 「これから大仕事やっちゅうのに、辛気臭いのはかなわんなぁ?」



 周囲のみなの顔つきを見回した真島、大仰に溜息。



   真 島 「ワシがどんだけ「明るく見送ったれ」っちゅうても、全然聞きよらへんねん」



 それで夏目、苦笑い。



   夏 目 「さすがに明るく見送んのは無理でしょ」

   真 島 「そうか? 一番大事なことやと思うけどなぁ」


   夏 目 「そらそうですけど」




 すると真島、真剣な面持ちとなり、穏やかな口調で言う。



   真 島 「なあ夏目」

   夏 目 「はい」


   真 島 「もしリクソンとガチンコすることになっても、殺したらアカンで?」


   夏 目 「えっ?」




 夏目、ギョッとした様子で真島の目を見返す。その夏目を、真島もさらに強く見返す。

 それからいつものニンマリ顔になり、いつもの明るい調子で続ける。




   真 島 「まだ庄司は生きとる。せやから、トドメは庄司のために取っといたれ――っちゅうこっちゃ」

   夏 目 「……俺にはその権利ないですもんね?」


   真 島 「せや。これは庄司の問題や」


   夏 目 「……ほんまにそう思たはります?」


   真 島 「ほんまに思てるかなんかどうでもええねん」




 イラッとして突き放す物言いをした後で、真っ向から夏目を見据えた真島、言い聞かせるように言う。



   真 島 「とにかくワシは何が何でも、おまえに殺しはさせへん。それだけは許さん。ええな?」



 がっちり見合う2人。

 その真島の瞳の一瞬の揺らぎにより、「頼むから」という訴えがそこにあることを悟る夏目。


 夏目、フーッと息を吐き出し、自分の気持ちを整えるように何度か頷いたのち、真島をまっすぐ見つめ返し、答える。




   夏 目 「分かりました。絶対に殺しはやりません。約束します」



 夏目が本気で約束していることを悟った真島、夏目の両肩をぱんぱん叩き、ニンマリ。



   真 島 「よっしゃ。それでこそ夏目や」

       「ワシらはここにおる。――降りてくんのん、待っとるからな」


   夏 目 「はい」




 その時、真島のスマホが鳴る。



   真 島 「っか~~、何やねん。こんな時に……」



 しかし取り出したスマホ画面に「冴島」とあるのを見、真剣な面持ちになる真島。

 真島が夏目を見ると、夏目も真剣な目で見返す。


 皆が固唾を呑んで見守る中、真島はスマホに出る。


 (※以降、セリフの間を取る参考として、冴島のセリフも括弧つきで表記。音声はナシ)




   真 島 「何や?」

 (冴島の声 『すまんな、こんな時にかけてしもて』)


   真 島 「ええわ別に、もうかけてしもとんねんから。ほんで、何やねん」


 (冴島の声 『実は、まだ確実やないけど、神室町ヒルズに爆弾が仕掛けられとるらしいんや』)


   真 島 「何やと!?」


 (冴島の声 『ほんで伊達さん曰く、警察の爆処理は爆弾があるてハッキリしてからでないと動かんらしい』)


   真 島 「ああ、せやねん、前もそうやったわ」


 (冴島の声 『せやから今からみんなで爆弾を探しに行くんや』)


 (     『それで伊達さんが、おまえが勘で爆弾解体できるて言うから――』)


   真 島 「よっしゃ、分かった。ほな、そっち行くわ」


 (冴島の声 『こんな時にすまんの』)


   真 島 「ええ、ええ、大丈夫や。ほなな」




 真島、電話を切ったのち、やや声をひそめ、皆に報告。



   真 島 「まだ確実やないけど、神室町ヒルズに爆弾が仕掛けられとるらしい」

   西 田 「ば――」




 と叫びかけたのを、真島がバチコーンと真上から頭をはたいて黙らせる。



   真 島 「静かにせんかいボケ!」

   西 田 「す、すんません……」




 西田が頭を抱える中、真島は改めて説明。



   真 島 「せやからワシはあっちに行ってくる。兄弟のほかに秋山と、伊達さんもおるらしい」

       「仕掛けられてんのが確実やと分からん限り、警察の爆処理は動けへん」


       「せやから、現物を早よ見つけなアカンねん」


       「ほんで……」


       「もし見つけた時限爆弾の時間が迫ってる――っちゅうようなことやったら、ワシが解体してくる」


   若 林 「捜索ってことなら、うちからも何人か出しますか?」


   真 島 「いや、ここはここで固めなアカン。それより山門に連絡せえ、山門組の手ぇ借りる」


       「あと山門に、ヒルズの全警備にワシらの動きを見過ごすよう命令させえ」


       「それと、念のためや。爆破予告があった――っちゅうて、全館の客を避難させろや」




 若林、ニヤリ。



   若 林 「こんな時、子分が経営権を持ってると便利ですね」

   真 島 「せやな。何や自分がヤクザの大親分みたいな気ぃするわ」




 とぼけた口調で言った真島、振り返って夏目を見、呑気そうに言う。



   真 島 「ほな、行ってくるわ」

   夏 目 「はい。――気ぃ付けてください」


   真 島 「おまえもな」




 そして2人、真顔で真っ向から見合う。

 しばしのち、真島はニンマリし、夏目もニッと微笑み返す。


 その一瞬後に真島、身を翻し、神室町ヒルズに向けて駆け出してゆく。


 その姿を見送ったのち、夏目は改めて皆に挨拶。




   夏 目 「ほな、俺も行ってきます」

   若 林 「ああ。……気を付けてな」


   夏 目 「はい」




 夏目がミレニアムタワー内に入っていく後ろ姿を、真島組の面々が黙って見送る。

 ここで暗転。






○ミレニアムタワー・屋上前のスペース (深夜)

 屋上へ出る階段のすぐ下のスペースに、磐井と磐井組組員数人、矢部と矢部組組員数人がいる。


 矢部と矢部組組員は、いざ破壊活動という事態に備えて、いろんな武器・工具を取り揃えている。


 (※その中に大型のワイヤーカッターがあるのが映し出される)


 磐井組組員は銃器を確認している。


 そんな物々しい集団の中にひとり、丸腰の夏目が立っている。


 その夏目に、今の状況を伝える磐井。




   磐 井 「100億は向こうの指示どおりに用意した。あそこから向こうがどうするつもりかは分からんがな」

   夏 目 「はい」


   磐 井 「……本当に、銃は要らないのか?」


   夏 目 「はい。使い慣れてませんから」


   磐 井 「しかし、こんな時だ。念のために――」




 夏目、磐井をまっすぐ見、言葉を遮る形で答える。



   夏 目 「持ってたら撃ってまうかもしれんのです。六代目のことを忘れて」

   磐 井 「……分かった」




 磐井、夏目の精神状態と、それにもかかわらず判断が冷静であることを容れ、引き下がる。

 夏目、その場で深呼吸し、体をほぐしてから、決然とした調子で言う。




   夏 目 「ほな、もう行きます」


   磐 井 「そうか」


       「俺たちを呼んでもいい状況になれば、すぐ呼べよ。いつでも飛び出せるようにしておくからな」


   夏 目 「ありがとうございます」




 そして夏目、ひとりで屋上への階段をのぼってゆく。






○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)

 屋上へと出た夏目。


 夏目、透明シートで覆われた100億を一瞥。他には何も目立つものはない。


 しかししばらくして、どこからかヘリの音が近付いてくる。


 暗い空を見上げ、目をこらすと、徐々に近付いてくるヘリが見える。


 それはとうとう屋上の真上までやってき、「H」のところに着陸する。エンジンは切られる。


 そのヘリから降りてきたのは、リクソンひとり。銃は構えていないし、ヘリの中にいるらしき私兵は降りてこない。


 リクソン、夏目の10メートルほど手前で立ち止まり、ニヤリとする。




  リクソン 「あいつはどうした? 死んだか?」



 夏目、リクソンを睨みつけたまま、歯を食いしばる。



  リクソン 「私はあいつを撃つ気はなかったんだがな。――おまえは本当に悪運の強い男だ」

       「しかし、これで少しは、大切な人間を奪われる痛みが分かったろう?」




 夏目、リクソンを睨みつけたまま。



  リクソン 「私を殺したいか? あいにくだが、私はおまえとやり合う気はない。ただ殺したいだけだ」

       「だが、おまえとやり合いたがってる奴がいる」




 リクソンが手を上げ、こちらを向いたまま手招きすると、ヘリの中から1人降りてくる。

 楽しくて仕方がないという顔でニマニマしているその男は、ヒューズ。




   夏 目 「おまえ……! おまえも無事やったんかいな」

  ヒューズ 「もちろん、ピンピンしてる」


       「あん時ゃ、目ぇ覚めたら船がマズい感じで振動しててな」


       「裏に回ってみりゃ、リクソンたちがプレジャーボートに乗り込んでやがる」


       「それで、こりゃヤベエと慌ててすっ飛んでって、ギリギリ乗り込めたんだ」


   夏 目 「……俺より悪運強いやんけ」


  ヒューズ 「ただ、定員超過で、すぐ立ち往生しちまってな」


       「救助ヘリが来るまで、とんだマヌケ野郎の気分だったよ」


   夏 目 「贅沢言うな。俺がどんだけ泳がされたと思とんねん」




 そこでリクソン、傲然とした顔でニヤリと笑う。



  リクソン 「悪運の強い者同士、どちらが勝つか見ものだな」



 ゲームの支配者気取りでいるらしいリクソン。

 その脇をすり抜けたヒューズ、たいそう嬉しげに夏目のところまで近付いてくる。




  ヒューズ 「こないだは楽しかったよな? なあ?」

   夏 目 「いや、そうでもなかったな」


  ヒューズ 「何でだよ? ケンカほど楽しいもんはねえだろ?」




 そこでニタリと笑い、



  ヒューズ 「しかも、おまえは強い。最高だ」

   夏 目 「何にでもTPOっちゅうもんがあってやな……」


  ヒューズ 「そうか! なら今はバッチリだな」


   夏 目 「はっきり言うぞ、そうでもない」


  ヒューズ 「スターダストではやれなかったから、残念だったんだよなあ」


       「おまえがなかなか来ねえから、つい外で遊んでるうちに出遅れちまってな」


   夏 目 「自分、出遅れてばっかりやな」




 ヒューズ、夏目の前で立ちはだかる。




  ヒューズ 「今日は完全にシラフだ。気合い入れろよ」

   夏 目 「おまえ、何でリクソンなんかについてんねん?」




 ヒューズ、肩をすくめる。



  ヒューズ 「誰についてるかなんか考えたことねえよ。ただ強い奴とやれりゃあいい、それだけだ」

   夏 目 「何でそれでリクソンにつくことになんねん」


  ヒューズ 「まあ何つうか……イラクで一緒だったダチがいてな」

       「そいつが、俺が強い奴とやりたがってるのを知ってて、いつもバカ騒ぎに誘ってくれるんだよ」

       「で、今回も乗っかったら……こうして今、ここにいるわけだ」

   夏 目 「おまえ、アホやろ」


  ヒューズ 「(にんまり) 多分な」




 言うなり仕掛けられた正面からの上段蹴りをよけた夏目。


 さらに攻撃をいくつかよけてから、「vs. ヒューズ」の戦闘となる。


 (※夏目にとってのラスボスなので、それ相応に強い設定)






○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)

 戦闘後。


 ボロボロになっているヒューズ、たいそう満足げ。




  ヒューズ 「強えなあ……」



 幸せいっぱいのまま、気絶するヒューズ。

 夏目、内心「気持ちわるっ」と思っているため、そんな顔になっている。


 そこへ、含み笑いのリクソンが声をかける。




  リクソン 「なるほどな。仕方がない、認めよう。おまえは強い」



 含み笑いし続けているリクソンを、夏目は無言で睨みつけながらも訝しんでいる。

 リクソンがサッと手を上げると、背後のヘリから手下2人がヒューズの許へ駆け寄り、瞬く間にヘリ内へ運んでいく。




  リクソン 「だが、世の中、強い者が必ずしも勝つわけじゃない。だからこそ面白いんだ」



 リクソンが再び手を上げると、それを合図にヘリから降りてきたのは、後ろ手に手錠で拘束されている大吾。

 まさか大吾本人が現れようとは思わなかった夏目、思わず叫ぶ。




   夏 目 「六代目!」

   大 吾 「夏目さん!」




 大吾が応じて大きく前へ出ようとした瞬間、大吾を連れてきた背後の男が、大吾の体をぐいと後ろに引く。

 そのそばへと近付いていったリクソン、すでに銃を手にしており、振り返って夏目を見る。




  リクソン 「まあ待て。そう焦る必要はない」



 その途端、ヘリの扉が大きく引かれ、リクソンの手下6人が黒いボックスを抱え出してくる。

 相当の重さがあるらしく、運び出すのも体格のいいのが6人がかり。


 (※大きさは1m×1m×高さ1.5mほど?)


 そのボックスの側面には、カウントダウンが見えるためのデジタル表示の窓がある。




  リクソン 「あれは爆弾だ」



 ギョッとしてリクソンを見た夏目に、リクソンはニヤリとする。



  リクソン 「解体できないよう、鉄製のボックスの中に入れてある」



 そのボックスは、ヘリと100億の間ほどのところに、立たせて設置される。

 その後、そちらへと大吾が引き立てられたため、夏目が叫ぶ。




   夏 目 「やめろ! 何する気や!」



 するとリクソン、銃口を大吾の後頭部に押し付け、夏目にニヤリとする。




  リクソン 「おまえはじっとしていろ。そして、よく見ているんだ」



 夏目が歯噛みしながら何もできないでいるうちに、大吾は爆弾のそばまで引き立てられていく。

 それからリクソン、手下に向かって呼びかける。




  リクソン 「おい」



 すると手下の1人が銃を取り出し、それを大吾の頭に向ける。

 別の手下がリクソンに、電子錠付きの恐ろしく太い首枷を差し出す。


 リクソン、自分の銃をしまって首枷を受け取ると、それを夏目に見せびらかすように披露する。




  リクソン 「これは電子錠付きの首枷だ。私のカードキーだけでなく、12桁の暗証番号でも解除できる」



 大吾と夏目から見えない角度で、リクソンは電子錠のタッチパネルのテンキーを押す。

 12回の「ピッ」という電子音ののち、電子錠は解除され、首枷はパカッと開く。


 リクソンがそれを手下に渡すと、手下はそれを爆弾本体に溶接されている半円の輪に通す。


 そこへ大吾を押さえつけ、首枷を閉じる。


 電子音がし、完全に閉じられたことが分かる。


 これにより大吾は、背後の爆弾にもたれ、足を投げ出して地面に座り込む体勢になる。


 そうなってからリクソン、高らかに笑い転げる。




  リクソン 「見れば分かるな? これで堂島は爆死する」


       「そして、どこまでも忠実で愚かなおまえは、最後まで何とかしようと粘り……」


       「結局、一緒に死ぬことになる」


       「実におまえたちにふさわしい最期だ。そうじゃないか?」




 含み笑いするリクソン。




  リクソン 「本当なら、できるだけ長く苦しめてやりたいが……」


       「爆処理の専門家を呼べるほどの猶予はやれないからな。20分だけやろう」


       「その間、12桁の数字と格闘し続けるも良し、もっと望みのない方法を試してみるも良し」


       「みじめに足掻けるだけ足掻くがいい」




 そしてリクソン、爆弾を起動。窓に表示されたデジタル数字がカウントダウンを始める。




  リクソン 「そうそう、親切心で教えてやるが、この爆弾、横に倒すのはやめたほうがいいぞ」


       「もう起動してしまったから、少しの振動でも即座に爆発する」


       「そんなふうにあっさり終わってしまったんじゃ、面白くない」




 夏目、リクソンの目を食い入るように見る。

 それにより、リクソンの発言が真実と分かったため、睨みつけ歯を食いしばる。


 リクソン、心地よさげにニタリとする。


 手下2人が100億へと向かい、透明シートを取り払って、100億をむき出しのまま晒す。


 その後、手下は全員ヘリへと乗り込む。


 しんがりのリクソン、ヘリに乗り込む手前で立ち止まり、振り返る。




  リクソン 「これで、下賤の輩が金につられて、このビルを取り囲む」

       「そこへ、おまえたちの血や肉片が降りそそぐわけだ」




 リクソン、またも含み笑い。



  リクソン 「では、ごきげんよう」



 リクソン、右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向に水平に差し出す「Bow and scrape」の御辞儀を、わざとらしく気取ってして見せる。

 そして元の姿勢に戻るなり、哄笑。


 そのリクソンがヘリに乗り込むと、ヘリのエンジンがかかる。


 扉が閉められた直後にヘリは離陸。ホバリングのダウンウォッシュの風でもって、100億のほぼ全てを神室町へと舞い散らせる。


 その後、さらに高く飛翔したのち、ヘリは悠々と飛び去ってゆく。






○ミレニアムタワー・下 (深夜)

 ミレニアムタワーの周辺に、ふわりふわりと札が降ってくる。


 そのことに1人、2人と気付いた後、途端に周辺はお祭り騒ぎとなる。




  通行人A 「やった!!」

  通行人B 「来たあ!!」




 すでに夢中になって拾っている人々のところへ、さらに多くの人々が押し寄せてくる。

 その狂乱の様子に、ミレニアムタワー入口を固めている真島組の組員たちは、若林・西田・南を中心に困惑の態。






○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)

 夏目、大吾の許へ駆け寄りながら、叫ぶ。




   夏 目 「矢部さん!! 矢部さん!! ワイヤーカッター持ってきてください!!」



 その叫び声により、磐井、磐井組組員、矢部、矢部組組員が、一気に屋上へなだれ込んでくる。

 その全員が、舞い散る万札を目の当たりにして一瞬驚く。


 その直後、爆弾に固定されてしまっている大吾を見てさらに驚き、駆けつけてくる。




   磐 井 「六代目! これは……」



 とデジタル数字のカウントダウンを見、



   磐 井 「まさか、爆弾ですか?」

   大 吾 「そうだ」


   磐 井 「矢部! おまえ、確か爆処理できたな?」


   矢 部 「ある程度ならやれます。ただ、現物を見てみないと……」




 そこで磐井と矢部、爆弾の周囲を巡り、状態をチェック。

 そして、それが完全なるボックスになっていて、どこかを外せば配線が出てくるという仕様ではないことを確認。




   磐 井 「ダメだ、継ぎ目も何もない完全なる箱だ」


       「ひょっとすると、底に開けるところがあるのかもしれないが……」


   矢 部 「倒してみますか?」


   夏 目 「あきません! 横に倒したら振動ですぐ爆発するて言うてました! あれは本気でした!」


   矢 部 「くそっ」




 これで、爆発前に大吾の首枷を外すしかないことが確定。


 矢部のワイヤーカッターは大吾の手錠の輪の部分さえ楽々切断できたものの、特別製らしい首枷には到底歯が立たない。


 (※首枷の半円同士を繋いでいる蝶番部分が凹と凸を組み合わせるタイプなので、壊せそうな脆弱な部分が存在しない)


 首枷が繋がれている爆弾本体側の半円の輪も、ボックスに溶接されている鉄製の太い輪なので、やはり歯が立たない。




   矢 部 「仕方ねえ、今からバーナーを持ってこさせて――」

   磐 井 「無理だ、この近さじゃ六代目も一緒にやっちまう」


   矢 部 「じゃ、その鍵みてえな部分をぶち壊しちまえばいいんです」




 すると大吾、静かな口調で制止する。



   大 吾 「駄目だ。この手の錠は、無理に壊せばその瞬間にフリーズする」

       「そうなった状態のそれを完全に壊し切るには、それこそ特殊な工具が必要になる」


   磐 井 「これは……電子錠ですか?」


   大 吾 「そうだ。リクソンが持つカードか、12桁の暗証番号でしか解除できない」


   磐 井 「12桁!」


   矢 部 「しかし……本当に暗証番号なんかで解除できるんですか?」


   大 吾 「できる。さっきリクソンがやって見せた」


   矢 部 「ちくしょう、イヤな遣り口だな」




 そこで夏目、申し出る。



   夏 目 「もうそれしか方法があれへんねやったら、俺にやらしてください」



 磐井と矢部があえて制止する理由が見つけられないでいる間に、大吾の脇にしゃがみ込む夏目。

 ここから夏目は、真剣に電子錠と向き合うこととなる。


 夏目、自分に暗示をかけるように呟く。




   夏 目 「いける。いける。親父は爆弾解体もやれはんねん。俺かて……せめて鍵の解除ぐらい……」



 その後、眉根を押さえながら、電子錠に集中し始める。

 そして大吾、磐井たちに言う。




   大 吾 「おまえたちは下がれ」

   矢 部 「なっ――」


   磐 井 「そんな!」


   大 吾 「おまえたちを巻き添えにはできない。早く下に避難しろ」


       「そして、このあたり一帯の道路を封鎖してくれ」


       「どれほどの規模の爆発になるか分からないんだ。カタギに怪我人を出しちゃいけない」


   磐 井 「いや、しかし!」




 と粘る磐井に、夏目が怒鳴る。



   夏 目 「六代目の命令です! 引いてください!」

   矢 部 「でも――おまえは残る気なんじゃねえのか?」


   夏 目 「せや。俺はやれるとこまでやる」




 すると矢部、ワイヤーカッターを構え直す。



   矢 部 「なら、俺も最後までこれで――」



 そのため夏目、ブチ切れ一喝。



   夏 目 「あんたらまで死んだら、これから東城会はどないなるんじゃ!!」




 驚く矢部と磐井に、さらに怒鳴る夏目。




   夏 目 「この先の東城会のために、あんたらは要るんじゃ!! せやから引け!!」

   矢 部 「おまえ……」




 呆然とする矢部。

 磐井、苦渋に満ちた表情ののち、決然と立ち上がり、大吾に向け一礼。




   磐 井 「六代目。無事降りてこられるのをお待ちしております」



 そして矢部に声をかける。



   磐 井 「行くぞ」



  さらに、磐井組組員と矢部組組員にも号令。



   磐 井 「おまえらもだ! 下に下りるぞ!」


 

 そして、大吾と夏目を残し、それ以外の全員が屋上を立ち去る。

 ここから夏目、「電子錠を解除せよ」のミッションに入る。


 (※「投資ゲーム」と同じシステムのパズルゲームになる。仮にマッチ3ゲームなら、特定のブロックを消すことで当該ナンバーが浮かび上がり、それが画面に表示されている入力テンキー画面に自動入力されるシステム。1回のゲームで2つの数字が浮かぶシステムなら6ゲーム、3つの数字が浮かぶシステムなら4ゲームをこなすことになる)






○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)


 電子錠解除の途中、(残り1ゲームを始めようとしたところを邪魔する形で)ムービーに戻り、大吾が言う。




   大 吾 「夏目さん、あなたも行ってください。あなたもこれからの東城会に必要な人だ」


   夏 目 「黙ってください。集中できません」


   大 吾 「あなたはこれまで、本当に俺に尽くしてくれた。もう充分です」


   夏 目 「ええから黙ってください、集中さしてください」


   大 吾 「“何があっても六代目を守れ”、その真島さんの命令は俺が解除します」


       「もう俺を守る必要はありません。だから早く――」


   夏 目 「うっさいボケェ!! 黙れ言うとるやろが!!」




 びっくり眼の大吾を睨み据えた夏目、さらに怒鳴りつける。



   夏 目 「俺が助けたいねん!! 俺がやりたぁてやっとんねん!! 親父が引け言うたかて引くかあ!!」

       「せやから黙れ!! 集中せなあかんねん!!」


   大 吾 「わ、わかりました」




 目を白黒させている大吾、沈黙する。

 おかげで夏目、やっと集中できることに。


 (※これにより、ゲームを再スタートできる。それを「開始」の状態にしたところで、次のシーンのムービーに移行)








最終章 決着 (2)



○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)


T「16日前  2017年12月12日 01:03」


 ビル内部の非常階段を駆け下りているのは、真島と冴島、秋山と伊達、ヒクソンと冴島組若衆4人。




   伊 達 「おい、ホントに地下なのか?」

   真 島 「ワシの勘を信じへんのやったら、今から山門組と一緒に上で探せや」


   伊 達 「しょうがねえな……」




 そんなふうにやり合いながら、地下6階へ到着。

 その途端、スーツ&サングラス姿の男たちがズラリと現れる。


 その先頭に立つボス格(スーツ男Eと表記)、流暢な日本語で言う。




 スーツ男E 「ここから先は立入禁止だ。出て行け。ここは我々が死守する」

   秋 山 「あんたら、ここに爆弾が仕掛けられてることを知ってて言ってんの?」




 するとスーツ男E、ニヤリとする。



 スーツ男E 「我々は命令されているタイムリミットまでに退避するから心配無用だ。ただし」

       「おまえたちは今ここを引き揚げない限り、いざという時に退避できる状態かどうか……」


       「我々は保証しないぞ」




 そこで真島、肩をほぐしながら言う。




   真 島 「見るからに雑魚ばっかりでやる気出えへんけど、しゃあないなぁ」


   伊 達 「ナメてかかって痛い目見ても知らねえぞ」


   冴 島 「(若衆たちに) よっしゃおまえら! こいつら全員叩きのめすで!」


  若衆たち 「はい!!」




 そして秋山、がっちり構えを取り、スーツ男Eに向けて言う。



   秋 山 「逃げるなら、今だよ?」



 するとスーツ男E、号令。



 スーツ男E 「やれ!」



 ここで、「vs. リクソンの私兵」の戦闘となる。





○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)

 戦闘後。リクソンの私兵、全てが床に転がっている。


 うつ伏せに倒れ込んでいるスーツ男E、何とか上半身を起こして呟く。




 スーツ男E 「大馬鹿者どもめ……タイムリミットが過ぎちまった……早く逃げないと……」



 そう言い残し、気絶。

 秋山、溜息をつく。




   秋 山 「やれやれ」

   真 島 「ま、どうせ時間との戦いなんは変われへんしのう」


   伊 達 「そうだな、早いとこ取りかかろう」


   冴 島 「せやな。――おまえらも頼むで」


  若衆たち 「はい!」




 ここから、皆で手分けして爆弾を探し始める。

 そこで暗転。








○東都大病院 (深夜)

 病院の正面玄関を遠景で映し出す。






○東都大病院・エントランス (深夜)

T「16日前  2017年12月12日 01:06」


 病院のエントランスへと入ってきた東城。


 歩を進めるにつれ、スーツ&サングラスの男たちが山ほど待ち構えているのが分かる。


 ここから「vs. リクソンの私兵」の戦闘となる。


 リクソンの手下を殲滅しつつ、上階へと向かう東城。


 (※最終、エレベーターに乗り込む。そこでも戦闘がある)






○東都大病院・屋上に出るフロア (深夜)

 エレベーターを降りる東城。


 覚悟を決めた表情となったのち、屋上へ出るドアへと向かう。







○東都大病院・屋上 (深夜)

 屋上へやってきた東城。


 そこには傲岸な顔つきのリクソンと、手下4人が揃っている。

 東城、ゆっくりとサングラスを取り、リクソンを睨み据える。




   東 城 「おまえがリクソンか?」

  リクソン 「そうだ」


   東 城 「大吾はどこだ?」




 するとリクソン、フンと笑う。



  リクソン 「ここにはいない」

   東 城 「どこにいるんだ?」


  リクソン 「質問が違うな。今どんな状態か、と聞くべきだ」


   東 城 「どういう意味だ?」


  リクソン 「(腕時計を見) ああ、もうそろそろだな」




 とリクソン、北東の方角に顔を向ける。

 (※東都大病院の位置を東京医科大学病院と想定すると、ミレニアムタワーまで直線距離で1㎞強ほど)






○ミレニアムタワー・屋上 (深夜)

 ミレニアムタワーの屋上を遠景で映し出したのち、夏目の視点に戻る。


 (※ここで、電子錠解除のための残り1ゲームがスタート)


 (※当該ナンバーのテンキー自動入力が終わった時点で、ミッションが終了)


 夏目、とうとう電子錠を解除。




   夏 目 「よっしゃあ!!」

   大 吾 「やった!」




 無事、大吾の首から首枷を取り、解放することに成功。

 しかし、もはや爆弾は爆破寸前。


 夏目と大吾、屋内へと戻るドア口へ猛ダッシュ。


 その数秒後、爆弾はカウントを終え、大爆発。


 階段を駆け下りかける手前だった2人、背後に感じた爆炎と爆風を避けるためにダイブ。


 しかし、いくらか巻き込まれる形で階段を転げ落ちることに。






○ミレニアムタワー・下 (深夜)

 爆発直後の、炎上しているミレニアムタワー屋上。


 そこからカメラが下方へ広がると、金を拾うために集まっていた人々が、ミレニアムタワー屋上を見上げたまま、つい硬直しているところ。


 そこへ、瓦礫や大ぶりの金属片などがぞくぞく降ってくる。


 そのためか、さすがに今まで金に目が眩んで磐井達の声が届かなかった人々の耳にも、若林の一喝が届く。




   若 林 「みんな逃げろ!!」



 その一瞬後から、この場は混乱状態となる。

 突き飛ばされて転んだ人に手を貸して起こす若林や、酔っ払い中年を引っ張って一緒にダッシュする形で退避している西田の姿。


 そんな中、カタギに向かって落ちてきた、ひしゃげた爆弾のボックス。


 (※いったん上空に舞い上がっていたため、落下までにタイムラグがあった状態)


 それを南が、




     南 「おらあああ!!」



 と間一髪のところで、バットでクリーンヒット。 (※ちゃんと人がいない方向に向けている)







○東都大病院・屋上 (深夜)

 ここからでも、ミレニアムタワーの屋上が炎上しているのが見える。


 東城、険しい顔でリクソンを振り返る。




   東 城 「あれは何だ? おまえの仕業なのか?」



 リクソン、ニタリと微笑む。



  リクソン 「そのとおりだ」

   東 城 「あそこには夏目が……」


  リクソン 「そうだ、いたとも。爆弾に繋がれた堂島を助けようとしてな」


   東 城 「何だと!?」


  リクソン 「もし見捨てて逃げていれば、今ごろ夏目だけは生きているだろう」


       「しかし堂島は――あのとおりだ」


   東 城 「おまえ!! 何てことを――」


  リクソン 「さあ、次はおまえだ。楽には殺さん、覚悟しろ」




 東城、怒り爆発。



   東 城 「殺して楽にはしてやらねえ。覚悟しろ」



 そして、「vs. リクソン一味」の戦闘となる。





○東都大病院・屋上 (深夜)

 戦闘後。屋上には、リクソンと4人の配下が倒れている。


 それを見ていた東城、顔を上げると、呆然たる面持ちで彼方を見やる。


 その東城の視線の先では、ミレニアムタワーが今なお燃えさかっている。

 ここで暗転。





○ミレニアムタワー・屋上前のスペース (深夜)

 下からせっせと階段を登ってきた磐井と矢部と、その子分たち。

 (※爆破のせいでエレベーターが止まっているため)


 屋上への階段途中の踊り場に、倒れている大吾と夏目を発見。2人とも意識がない。




   磐 井 「六代目! 六代目!」


   矢 部 「夏目! おい!」




 その2人に揺すられた大吾と夏目、ほぼ同じタイミングで意識を取り戻す。



   磐 井 「六代目! 御無事で!」

   大 吾 「ああ……何とかな」




 まず右側を見た大吾、次に左側を見て夏目の姿を認め、ホッとした様子で声をかける。



   大 吾 「夏目さん、あなたは?」

   夏 目 「はい、大丈夫です」




 夏目も、気絶から覚めたばかりの割には元気。

 磐井と矢部、ホッと安堵の溜息をついたのち、顔を見合わせて少しばかり呆れ笑いを浮かべる。


 それから矢部、夏目の肩を「よくやった」というふうにバンバンと叩く。


 夏目、痛みに顔をしかめる。




   矢 部 「おっと、すまねえ」



 その気遣いに、夏目はにっこり。

 その時、ふと夏目、内ポケットからスマホを取り出す。


 振動する画面には「秋山駿」の表示。






○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)

 秋山、爆弾を捜索しながらスマホを構えている。




  夏目の声 「はい、もしもし」

   秋 山 「あっ、夏目さん! よかった、無事なんですね?」


  夏目の声 「はい、何とか」


   秋 山 「何とかってことは……。やっぱりそっちで何か起こったんですね?」


  夏目の声 「はい。爆弾が爆発しました」


   秋 山 「やっぱり! いや、すごい音がここでも聞こえたんでゾッとしましたよ」


  夏目の声 「はい、爆弾は爆発してもうたんですけど、俺も六代目も無事です。六代目、取り返しました」


   秋 山 「そうですか! よかった!」


  夏目の声 「――せや、そっちの爆弾はどうなりました?」




 その時、真島の大声が響き渡る。



   真 島 「あったぁ!! 多分これやでぇ!!」



 そこで秋山、そちらへダッシュ。

 皆と共に駆けつけると、1つの小部屋の内部に、かなり大がかりな装置(以下、「起爆装置」と表記)が仕掛けられている。


 全員、息を呑み、それをマジマジと見つめる。


 (※爆破解体の起爆コントロール装置的なもの。遠隔装置付きの爆薬はヒルズ内部のあちこちに仕掛けられている設定)


 秋山、見つけられてホッとしたのと起爆装置があったことで緊張が高まってきたのがごちゃ混ぜになった表情になる。




  夏目の声 「秋山さん? 秋山さん?」



 秋山、起爆装置を見つめたままスマホを構え、答える。



   秋 山 「夏目さん……。今、こっちにも爆弾――起爆装置かな? 見つけましたよ」

  夏目の声 「そうですか!」


   秋 山 「また後で連絡します」


  夏目の声 「はい。じゃ――また」




 夏目が「また」を強めに繰り返したことに気付いて微笑んだ秋山、はっきりと強めに答える。



   秋 山 「ええ。また」



 そこで通話終了。

 伊達、さっそくケータイで、警察のどこかへ電話している。




   伊 達 「俺だ。すぐ爆処理を寄こしてくれ。場所は神室町ヒルズの地下6階――」



 そんな伊達を背景に、手をすり合わせながら前に出てきたのは、ニンマリ顔の真島。




   真 島 「よっしゃ。ほな、ワシの出番やな」


   冴 島 「いや、待て兄弟。もう爆弾は見つけたんや。それに幸い、時限爆弾でもなさそうや」


       「ほな、後はもうプロに任したほうがええ」


   真 島 「いつリクソンが起爆させよるか分からんのちゃうんか?」




 それにより沈黙が広がったのち、真島が言う。




   真 島 「5分だけ待ったるから、おまえら逃げろや」




 すると冴島、数秒考え込んだのち、決意の表情。




   冴 島 「ええわ。おまえの勘に賭けるで、兄弟」




 それで真島、ニンマリ。


 冴島、若衆4人(その先頭には冴島組若衆Aがいる)に言う。




   冴 島 「おまえらは上行け」

冴島組若衆A 「いえ、その5分が惜しいです。親父が真島の叔父貴に賭けるなら、俺らも賭けます」




 すると冴島、伊達→ヒクソン→秋山の順に見る。 (※伊達はすでに通話を終えている)

 伊達、ハーッと溜息をつき、後頭部をガリガリ掻く。




   伊 達 「ああもう、しょうがねえよな。一蓮托生だ」



 ヒクソン、真島に向け、頭を下げる。



  ヒクソン 「どうかよろしくお願いします」



 秋山、諦観の笑顔で真島に言う。



   秋 山 「そういうわけなんで、どうぞ」



 真島、ニッと笑う。



   真 島 「おまえら、ええ度胸しとるのう。――大好きやで」



 真島、冴島組若衆の1人が開けて差し出している工具箱から、小型のワイヤーカッターを取る。


 皆が緊張の表情で見守る中、真剣に起爆装置と向き合う真島。


 眉間トントンで勘を働かせたのち、まず1本のコードを切りにかかる。


 一瞬、冴島組若衆たちが息を呑む。


 真島、コードを切る。何も起こらない。


 冴島組若衆たち、ホッと息をつく。


 冴島・伊達・ヒクソンが真島の作業を見守る中、秋山も同じく見守っている。


 真島、またしばらく眉間トントンで勘を働かせたのち、次のコードを切る。何も起こらない。


 そしてまた眉間をトントンし……






○東都大病院・屋上 (深夜)

 東城、燃えさかるミレニアムタワーから、未だ目を逸らせないで直立不動のまま。


 その背後遠くで、よろよろと起き上がったリクソン。内ポケットから銃を出し、東城の背に向けて構え、撃つ。


 肩をかすめて撃たれた東城、肩を押さえ顔をしかめて振り返る。


 よろよろと立ち上がったリクソン、銃を構えている。




  リクソン 「今のは呼びかけだ。次は外さん」



 リクソン、内ポケットからスイッチ的な何かを取り出す。



   東 城 「それは何だ?」

  リクソン 「起爆装置のスイッチだ。これを起動させれば、神室町ヒルズが一瞬で崩れ落ちる」


   東 城 「馬鹿な真似はやめろ!」


  リクソン 「もう遅い」




 ニヤリとしたリクソン、起爆スイッチの蓋を開けると、中のスイッチに指をかけようとし――





○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)

 真島、まさしく最後のコードを切ったところ。


 かすかな機械音がヒュンと鳴った後、それまでは気付かなかったモーター音が徐々に静まって消えてゆく。




   伊 達 「――やったか!?」



 ヒクソン、ホッとした笑顔。



  ヒクソン 「ええ」



 小部屋に仕掛けられた装置の灯が次々に消えてゆくことで、起爆装置が停止したことが分かる。

 冴島は笑みを浮かべ、冴島組若衆4人は大喜び。

 秋山も、かぶりを振りながら笑顔。


 真島、会心のニンマリ。






○東都大病院・屋上 (深夜)

 東都大病院屋上から見た、神室町ヒルズの方角が映し出される。爆発や倒壊が起こる気配は微塵もない。


 焦ったリクソン、何度もスイッチを押す。しかし、やはり何も起こらない。




  リクソン 「そんなはずはない、どうして――」



 リクソン、憎々しげな顔で東城を睨み据え、構えていた銃の狙いを東城の心臓に定める。



  リクソン 「あっちは後回しだ。まずおまえを片付けよう」



 そして、



  リクソン 「地獄に落ちろ。そして、天国の父に向け懺悔を叫ぶがいい」



 そう言って引き金を引こうとし、銃声がした――その一瞬後、側頭部を撃ち抜かれて倒れたのはリクソン。

 東城、状況が分からずに唖然。


 すると、遠くから声がかかる。




   斉 木 「相変わらず甘いな、兄弟」



 その声のほうを振り返った東城。

 屋上のドアの手前で銃を構えて立っているのは、錦山顔の男・斉木貴志(39)。


 その顔は12年前に死んだ錦山とそっくり同じ。


 つまり秋山が指摘したとおり、東城と同い年にしては若すぎる。




   東 城 「おまえは……」



 東城、傲然とした笑顔の斉木を見据える。

 そこで暗転。






○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)

 起爆装置解体でホッとしていたそこへ、大勢の足音が近付いてくるのが聞こえる。




   秋 山 「何だ?」



 小部屋の外に出たところ、向こうから駆け寄ってくる十数人のサングラス&スーツ姿の大集団が見える。

 その先頭にボス格として、ホサカがいる。


 ホサカ、秋山を憎々しげに見る。




   ホサカ 「やっぱりおまえか。――まさか、起爆装置を解体したのか?」



 秋山、笑顔で肩をすくめて見せる。

 ホサカ、歯噛みしたのち、憎々しげに言う。




   ホサカ 「そんなものはどうとでも復活させられる。だが――その前におまえを片付けないとな」

   秋 山 「往生際が悪いねぇ」




 すると冴島、秋山の背後から声をかける。



   冴 島 「何や秋山、知り合いか?」

   秋 山 「ええまあ、ちょっとした因縁で」


   冴 島 「そうか。ほな、おまえの邪魔せえへんように、雑魚はキッチリ片付けたるわ」


   秋 山 「そりゃどうも」


   真 島 「しゃあないのう。(背後の皆に向けて) おまえらも手伝えや」


  若衆たち 「はい!!」




 そこでホサカ、構えを取る。




   ホサカ 「覚悟しろ」



 秋山、ハッと笑ってから、構える。



   秋 山 「覚悟なんか12年前から、ずっと決まってるんだよ」



 ここで、「vs. ホサカ」の戦闘になる。

 (※秋山にとってのラスボスなので、それ相応に強い設定)


 (※他の面々の戦闘は、秋山の戦闘中には画面に映り込まない)






○神室町ヒルズ・地下6階 (深夜)

 戦闘後。ホサカがぶっ倒れ、呻く。



   ホサカ 「It can’t be... (こんなはずは……)」



 その瞬間、ホサカの顔から、戦闘で壊れていたサングラスが落ちる。

 その顔を目の当たりにした秋山、真島、冴島、伊達は、驚愕の表情を浮かべる。

 なぜなら、その目がホサカ特有の細いものではなくなっているのみならず、こうしてサングラスを取って全体像を見てみると、明らかに桐生一馬にそっくりそのままの顔立ちだからだ。

 その顔のホサカにニヤリとされ、驚いたままの全員は無言。

 ホサカ、真島を見据え、低めの声で言う。



   ホサカ 「真島の兄さん。話を聞いてくれるか?」



 真島、一瞬妙な顔になったのち、いつもの調子で答える。



   真 島 「ふざけんなっちゅうねん。声が全然ちゃうやんけ」



 それでホサカ、笑い出す。



   ホサカ 「だいぶ似せたつもりだったんだけどな」



 ホサカ、溜息をつくと、その場であぐらをかく格好に座り直す。

 しばしの沈黙ののち、喋り出す。



   ホサカ 「初めてだったんだ」

       「これまで何もやり遂げられなかった俺に、あの人が初めて「頼む」と言ったんだ。「おまえにしかできない」と」

       「ずっと見捨てられてると思ってたからな……。嬉しかったんだ」

       「でも結局、こうなるんだな」



 ホサカ、ブーツの隠しポケットからナイフを取り出す。

 秋山たち、すわと構える。

 しかしホサカ、ニッと笑い、自分の首に突き付ける。

 一瞬後、周囲に鮮血が大量に飛び散る。

 倒れているであろうホサカの体を、呆然として見下ろしている秋山たち。

 そこへ、伊達が要請していた爆発物処理班の隊員たちが装備万全でやってくる。



   伊 達 「おい、こっちだ!」



 我に返った伊達に案内され、小部屋へと向かう隊員たち。

 秋山と真島と冴島、ホサカの許に近付く。

 真島、ホサカの顔を見下ろしながら呟く。



   真 島 「ほな、こいつが……例の桐生ちゃんのニセモンやったっちゅうことか?」

   秋 山 「いや、どうでしょう。渡瀬さんから聞いてた感じとはだいぶ違うんで……」



 秋山、戸惑った様子のまま、呟く。



   秋 山 「とにかく……。後は東城さんに任せるしかないですね」



 ここで暗転。







最終章 決着 (3)



○東都大病院・屋上 (深夜)

 銃をしまった斉木、屋上ドアの手前からこちらへ、ゆっくり歩いて近付いてくる。




   斉 木 「いいことを教えてやるよ。大吾は無事だ」

   東 城 「……何だと?」


   斉 木 「夏目ってのが大吾の拘束を解除して、間一髪で二人とも爆発から逃れたそうだ」




 無表情&無言の東城に、ハッと笑う斉木。



   斉 木 「疑うのか? 秋山にでも確認すりゃどうだ?」



 そこで東城、秋山にスマホでかけてみる。しばしの間ののち、秋山は出る。



  秋山の声 「東城さん!」

   東 城 「おい秋山、さっきの爆発は? 大吾と夏目はどうなった?」


  秋山の声 「無事です。さっき夏目さんと電話しました」


       「爆弾は爆発したけど二人とも無事で、堂島さんは取り返したと」


   東 城 「(ホッとして) そうか……。わかった」


  秋山の声 「ところで、今そっちはどうなってるんです?」


   東 城 「いま取り込み中だ。またかける」


  秋山の声 「東城さん――」




 までで、通話を切る東城。ホッとした様子。



   斉 木 「な? 無事だったろ?」



 笑顔の斉木に、向き直る東城。



   東 城 「……おまえ、斉木の息子か?」

   斉 木 「おっと、もう知ってるのか。なら話が早えや」


       「そう、だからさ。兄弟って言ったのは、あながちウソでもなかったろ?」


       「兄弟の兄弟なら、そりゃやっぱり兄弟だからな」


   東 城 「……なら、斉木は殺されずに済んだのか? 風間のおやっさんが逃がしたってことか?」


   斉 木 「はあ? そんなわけねえだろ。助かったのはたまたまだよ」


       「風間は初代の嫁さんを撃っちまった後で初代を撃ち、それから親父にも撃ってきたんだからな」


   東 城 「初代の嫁さんを撃っちまった……? なぜだ?」


   斉 木 「風間が初代の隠れ家にやってきた時だ」


       「親父が「こいつは宍戸が飼ってるヒットマンだ」「俺らを始末しに来たんだ」って騒いだんだが……」


       「それを、初代の嫁さんは奥の部屋で聞いてたらしいんだな」






○(回想)1968年の初代の隠れ家

 ここで、画面は無音の回想ムービーとなる。

 「初代と斉木敦に向き合って立つ風間」「初代の妻が駆け込んできて銃を乱射→咄嗟に風間が銃を抜き射殺」「倒れた妻の手から銃を取った初代、銃口を風間に向ける→風間が初代を射殺」「外へ逃げ出した斉木敦を風間が撃ちながら追う」「斉木敦、足を撃たれてよろめき、崖を滑落」のダイジェストムービーに、斉木の声が乗る形。




  斉木の声 「親父が焦って騒いでも、風間は落ち着き払ってたらしい」


       「で、初代に挨拶した後、こう切り出したそうだ」


       「「始末する――その第2の指示を実行しないために、俺は第1の指示を全うしたいんです」」


       「「東城会に戻るってあなたの申し出、その真意を確認し、そこに義があることを納得したいんです」ってな」


       「ところが、そこまで言った時だ」


       「初代の嫁さんが銃構えて駆け込んできて、風間に向けてめちゃくちゃに発砲したんだよ」


       「それで風間は咄嗟に銃を抜いて、彼女を撃っちまった」


       「その倒れた彼女に駆け寄った初代は当然、その手から銃を取って風間に向けたわけだ」


       「だから風間はそのまま初代も撃つ破目になって、その目撃者になっちまった親父にも撃ってきた」


       「逃げる途中で足を撃たれた時、もし崖を滑落してなかったら殺られてただろう――って、親父は言ってた」




 そこで回想ムービーは終了。





○東都大病院・屋上 (深夜)

 戻って、東都大病院の屋上。


 東城、曰く言い難い表情。そこから、しばしの沈黙。


 (※ジングォン派襲撃当日の自身の行動と、今聞かされた母の行動をダブらせているため)


 その後、東城がようやく言う。




   東 城 「……初代を東城会に呼び戻そうとしたのが仇になったな」

   斉 木 「全くだ」




 そこから斉木、父親のその後を説明。



   斉 木 「親父はそのあと、意識が戻った時から記憶を無くしててな」

       「崖の下の集落の未亡人に拾われて、世話になることになった」


       「そのうちに夫婦同然に暮らすようになって、子供も出来て……」


       「とまあ、ヤクザ稼業から一転、呑気な人生を生きることになったんだよ」


       「親父は人当たりが良かったから、集落の人間にも気に入られてな」


       「だが、俺が六つの時だ」


       「東城会系の組員が敵対組織にひとりでカチコミして18人殺った――」


       「そんなニュースが、ド田舎だったうちの集落のテレビにも映ってな」


       「その東城会ってとこの会長の映像がテレビに映った瞬間――親父は全てを思い出しちまったんだ」


       「東城会のことも、初代のことも……」


       「自分の浅はかさが結果、大事な兄弟を死なせる破目になったってこともな」


   東 城 「浅はかってのは……風間のおやっさんに跡をつけられたことか?」


   斉 木 「いいや。親父はウソをついたんだよ」


   東 城 「……ウソ?」


   斉 木 「どれだけ東城会へ戻るよう説得しても、初代は頑として譲らない」


       「それで親父は考えたんだ」


       「東城会のほうから好条件を用意して迎えに来るよう、仕向けりゃいいと」


       「だから、デマカセを二代目に持ちかけちまったんだよ」


       「総裁の椅子を用意するなら、初代が東城会に戻ってもいいと言ってるってな」




 東城、衝撃のあまり息を呑む。



   東 城 「なら初代は――東城会に戻るつもりなんか、これっぽっちもなかったってのか?」

   斉 木 「だろうな。何を言っても駄目だったって、親父が言ってたからな」


   東 城 「……何てことを……」




 東城、愕然とする。父の本意、そして「元の場所に戻って皆を守る方法」など無かったということを知ったために。



   斉 木 「それ以来、親父は人が変わっちまった。暗い顔で部屋にひとり閉じこもるようになってな」

       「そこへ俺がこそこそ入り込んでいくと、思い出した自分の過去を俺にだけ話してくれた」


       「そんな時、親父が一番幸せそうにしてたのは、兄弟分だったっていう初代の話をしてる時だった」


       「ヤクザの世界での“兄弟”ってのには、親友とかそんな言葉じゃ足りねえくらいの絆があるんだろ?」


   東 城 「ああ……そうだな」




 錦山を思い返しているらしい東城。




   斉 木 「で、その2年後だ。ある日を境に、親父がさらに陰鬱になってな」


       「口を開けば「もう仇も取れない」「俺はグズだ」って言ってたんだが……」


       「ある日、とうとう俺に「すまない」って言った後、ふいと家を出ていった」


       「山ん中で親父が腹掻っさばいて死んでるのが見つかったのは、翌朝だった」


       「数年後、たまたま床屋で親父が死んだ年の古雑誌を見てな」


       「そん中に“二代目東城会会長、病死”って記事を見つけて、それでやっと、親父が腹切った理由が分かったよ」


       「親父は遅すぎたんだ」


       「初代を殺したのが二代目なのか自分なのかを決めかねてるうちに、時間切れが来たのさ」


       「――馬鹿な話だよな」




 斉木、せせら笑うかのような素振りをする。



   斉 木 「その後、俺は高校を出たはいいが、空前の就職氷河期でな」

       「しかも、そん時にはもう母親も死んでてさ」


       「で、外国行きゃ道開けるかな――ぐらいのつもりでLAに行ったんだ」


       「そしたら意外と居心地よかったんで、ずっとバーテンやってたんだが……」


       「去年の年末にビザ切れがバレて、日本に強制送還されることになっちまってな」


       「帰国してバーテンの仕事を探してるうちに、神室町に流れ着いたんだ」


       「そしたら、自然と東城会の話が耳に入ってくるようになった」


       「で、ある日、ついこないだまで生きてたっていう伝説の極道――堂島の龍のことを聞かされてさ」


       「そこから気になってネットで調べてな」


       「物好きのブログだのアップ動画だのをチェックしてるうちに、ハマっちまったんだ」


       「で、親父の兄弟だった人の組織が生んだ伝説の極道の存在に、近付きたくなってな」


       「ヤクザ事務所に押しかけて、入れてくれっつってゴネて、追い払われたりもしたよ」




 ここで一息入れた斉木。




   斉 木 「ところが、そんな時だ」


       「俺はある人間から聞かされたんだよ。実はあんたが生きてるって秘密をな」


       「俺は驚いた。けど、なぜあんたが死んだことになってるのかを聞いて、もっと驚いたよ」


       「あんたは何と、昔のオンナがよその男と作ったガキと、そのガキが生んだガキ――」


       「そいつらを守りたいがために、自分の存在を消したっていうじゃないか」




 斉木、腹立たしさのあまり、つい笑ってしまっている。



   斉 木 「こんな馬鹿げた話があるか?」

       「そんなことのために唯一無二の伝説がこの世から葬られちまうなんて……」


       「そんなことがあっていいのかよ?」




 そして斉木の表情は、目だけが笑っていない笑みに固まる。




   斉 木 「だから俺は決めたんだ」


       「俺がこの手で堂島の龍を蘇らせてやる」


       「その障害になってるしがらみを消し去って、伝説の目を覚まさせてやる――ってな」




 東城、斉木を見据える。



   東 城 「じゃ、ハルトを誘拐し、遥たちを拉致しようとしたのは……」



 すると斉木、錦山そっくりの困り笑顔を浮かべる。



   斉 木 「どう言ったら分かってもらえるんだろうな」



 そこから斉木、熱心に話し始める。



   斉 木 「正直俺には、全く理解できねえよ。あんたがなぜ宇佐美遥とハルトをそこまでして守るのか……」

       「自分が一途に惚れてた女がよその男と作ったガキと、そのガキが生んだガキだぜ?」


       「どう考えても、自分の人生棒に振ってまで守るようなもんじゃねえ。俺に言わせりゃあな」




 そこで斉木、諦めの溜息。



   斉 木 「ただ、他ならぬあんたがそこまでして、その二人を守りたがってるんだ」

       「なら、もうその二人は守らなきゃならねえんだよ。それは分かった」


       「しかし、だ」




 斉木、一呼吸置いてから、




   斉 木 「だからって、そのために堂島の龍をこの世から消すなんて、正気の沙汰じゃねえだろ?」


       「だって、伝説なんだぜ?」


       「あんた自身がどう思ってるかは知らねえがな」


       「桐生一馬ってカリスマは、ガキ二人のためなんかに潰させていいようなチンケなもんじゃねえんだよ」




 斉木は腕を広げ、懸命に東城に訴える。



   斉 木 「分からねえのか?」

       「あんたを老害だ何だって言ってるガキんちょも、あんたに一声かけられりゃ尻尾振るようになる」


       「あんたにケンカ売ってぶちのめされた奴も、その後はあんたを崇拝するようになる」


       「カタギの生き方ができねえ奴にとって、あんたはカリスマどころじゃねえ。神に等しいんだよ」




 (※ここのセリフのために、東城のサブストーリーは基本、それを証明するような内容のものか、その要素が含まれているものにしておく)

 斉木、ここで一息入れる。




   斉 木 「あんたこそが東城会の会長になるべきなんだ。堂島のことを思うのなら、なおのことそうすべきだ」


       「あんた、これまで自分がどれほどの重荷を堂島に背負わせてきたと思ってんだ?」


       「かわいそうに、もう解放してやれよ」




 そうして斉木、持論を並べ立てる。




   斉 木 「あいつは頭が切れる。下のモンがついてくるカリスマもある。人の上に立つ器だよ、そのとおりだ」


       「だがな――極道向きじゃねえんだよ」


       「あいつの性根はカタギだ。茨の道を歩くことはできても、泥水を飲むことはできやしねえ」


       「あいつは根っからの極道一族に生まれながら――」


       「あるいはそのおかげで、極道稼業の比較的明るい側面しか見ないで済んだんだ」


       「あいつの犯歴を見ても分かるだろ?」


       「正義感からの暴力沙汰だの、グレて極道気取って足元すくわれただの……お寒い限りじゃねえか」


       「あいつはまだ若い。あんたの裁量で今からでも人生やり直させてやれる」


       「で、俺に言わしゃそうしてやるのが、あいつに対するあんたの責任であり、贖罪だと思うがな」




 そこで東城、諭すように言う。



   東 城 「俺には東城会の会長なんか、とても務まらねえ」

       「仮にカリスマなんてもんをおまえの言うとおりに持ってるとしてもな」


       「組織ってのは、それだけでどうにかなるようなもんじゃねえんだ」


   斉 木 「わーかってるよ、みなまで言うなって。だからこそ、こうして俺がいるんじゃねえか」


   東 城 「……なに?」


   斉 木 「あんたは神だ。まさか神に雑用させるほど俺が馬鹿だと思ってるのか?」


       「違うよ、あんたは神としててっぺんに君臨しててくれりゃいいんだ」


       「下の雑用は全部俺が引き受けてやる」


   東 城 「おまえは……何を言ってるんだ?」


   斉 木 「聞こえなかったか? 要は、あんたの女房役になってやろうって言ってんだよ」


       「あんたに取って代わろうなんて絶対に思いやしない」


       「そんなことを考えるのは身の程知らずの馬鹿だけだ」


       「はっきり言うがな、俺はあんたに惚れ込んでんだ」


       「だから一生涯、あんたの忠実な手足でいてやる。いや、いさせてくれ」


       「俺は器用だから、あんたの命令なら何だってこなして見せるぜ?」


       「それに俺は――あんたの代わりに泥水も飲める」


   東 城 「何だと?」


   斉 木 「つまり、汚れ仕事もやれるってことさ。例えば殺しでも――な」




 斉木が見やった先には、リクソンの死体。

 その時、斉木はふと思い出したらしく、それを軽いノリで告白。




   斉 木 「あっ、そうだ。あんたのニセモノが神室町にいたんで、目障りだから始末しといたよ」

   東 城 「……なに?」


   斉 木 「あんなゴミに伝説を汚されちゃたまらねえからな」


       「あんたはこれから七代目になろうっていう大事な体なんだ」




 東城、怒りを押し隠して尋ねる。



   東 城 「おまえはそんなことのために……俺を七代目にするために、遥とハルトを殺そうとしたのか?」



 それで斉木、びっくり顔。



   斉 木 「殺す? まさかだろ」

       「そんなことしたら、あんたは俺の言うことなんか絶対聞いてくれねえじゃねえか」




 東城、やや気抜けした様子。




   東 城 「……なら、なぜ遥とハルトを?」


   斉 木 「俺はあんたの真似をしようとしただけだよ」


   東 城 「……何だと?」


   斉 木 「つまりさ、結局あの宇佐美遥とハルトがネックなんだ」


       「あの二人さえいなきゃ、あんたが死んだフリをする必要はない」


       「アサガオってとこの子供たちにも迷惑はかからない。だろ?」


       「だから俺は、あの二人のほうに――死んだフリしてもらいたかったんだよ」




 東城、驚きのため目を瞠る。

 斉木、自分の作戦を素直に打ち明ける。




   斉 木 「でもさ。死んだことにして偽造の戸籍で生きてくれ――なんて、どう頼みゃいい?」

       「「そうすれば桐生一馬が帰ってくるから」とでも言ってみるか? 下手すりゃ病院送りだ」


       「それでどうしたもんかと思ってたら、リクソンの計画に二人の拉致があってな」


       「だから俺は、それを利用することにしたんだよ」


       「元アイドルの澤村遥とその息子が、東城会絡みの騒動に巻き込まれて殺された――」


       「そうなりゃ世間は、そのインパクト大の情報を間違いなく飲み込む」


       「そしたらあんたには弱みがなくなるし、死んだフリを続ける必要もなくなる」


       「それに、あんたが今回の騒ぎを治めるにあたって大活躍したとなれば、七代目を襲名する後押しにもなる。一石二鳥だ」


       「けどまあ、リクソンの好き放題を見過ごしてたんだ。俺が真っ白とは言わねえよ、そこは謝る」


       「だからさ、ここは一つ、協力してくれねえか?」


       「あの二人がシェルターにいる限り、どうやっても殺しを偽装できねえ」


       「シェルターから出たとこを拉致されて殺された……」


       「その状況を作り上げなきゃ、俺の計画はオジャンなんだよ」




 東城、斉木を見据えたまま、尋ねる。




   東 城 「リクソンに東城会がどれほど痛めつけられても構わなかったのか?」


   斉 木 「東城会がいつ痛めつけられたってんだ?」


   東 城 「……なに?」


   斉 木 「そりゃ、リクソンはそのつもりだったろうよ」


       「あいつは、100億要求をきっかけに不満が噴き出して、堂島がピンチに陥ると思ってた」


       「100億って金が消えちまえば、東城会の財政は立ち行かなくなる――そう思い込んでたからな」


       「けど、それが目論見どおりにいったか? ノーだ」


       「リクソンは堂島を見くびり過ぎてたんだよ」


       「でも俺は、100億如きで今の東城会が混乱するとは思ってなかった」


       「だから、リクソンには好きにさせといたんだ」


   東 城 「大吾と夏目を殺そうとすることもか?」




 斉木、肩をすくめる。



   斉 木 「俺としちゃ、その二人は生きてようが死んでようが、どっちでも構わねえからな」

       「それに、あんたもそうだろうと思ってたんだよ」


   東 城 「……何だと?」


   斉 木 「いや、だってよ、夏目は赤の他人だし、堂島はあんたの親父を殺した仇の孫なんだぜ?」


       「わざわざ守る理由なんかねえって考えるのが普通じゃねえか?」


       「実を言うと、俺はついこないだまで思い込んでたくらいだ」


       「あんたが堂島を六代目に指名したのは嫌がらせのためだろうってな」


       「なのに堂島が拉致されてからのあんたは、ハルトの時と同じ熱量で事に当たってた」


       「そこんとこが、俺にはよく分からねえんだが……」


       「(ケロッとして) ま、堂島が無事でよかったよ」




 東城、「話にならねえな」というふうにかぶりを振り、さらに質問。



   東 城 「アサガオや病院を襲ったのは?」

   斉 木 「ああ、後から聞いたよ。言っとくが、あれは俺の命令じゃねえぞ?」


       「あんなことしたら、あんたがキレることは分かり切ってるからな」


   東 城 「神室町ヒルズの爆破は?」




 斉木、キョトン。



   斉 木 「何だそれ?」

   東 城 「リクソンが神室町ヒルズを爆破しようとしてたんだ」


   斉 木 「そうなのか!?」


   東 城 「ああ。上手くいかなかったらしいがな」


   斉 木 「そうか! そりゃよかった。あれは東城会のデカい財源だからな」




 心からホッとしたらしい斉木、それから少し怪訝そうな顔をする。



   斉 木 「いや、そのことは、俺は何も知らされてねえ」

       「つうか、あいつ、そんなこと企んでやがったのか……。俺に黙ってどういうつもりなんだ?」




 東城、信じていいのかよく分からないまま、さらに質問。



   東 城 「なぜ槇を撃った?」



 すると斉木、いたずらが見つかった子供のような笑みを浮かべ、困った様子。



   斉 木 「うーん、いやさ……」

       「ホントは、リクソンと裏で繋がってた東城会の裏切り者だから片付けた――」


       「ってことにする予定だったんだけど……」




 と困り笑顔でソワソワしたのち、思い切るようにパンと両手を打つと、話し始める。



   斉 木 「ま、いいや。今後の信頼関係のためにも、ここは腹を割って白状しとくか」

       「――あいつは、最初から殺す予定だったんだよ」


   東 城 「なぜだ?」


   斉 木 「だからー、ぶっちゃけると、あんたが七代目になるためには邪魔だったんだよ」


   東 城 「なに?」


   斉 木 「あいつはあんたほどじゃねえが、堂島程度にはカリスマがある」


       「腕っぷしは強いし頭が切れて、金も生める。しかも、いざとなりゃ泥水だって飲めるタイプだ」


       「その上で今現在、若頭補佐筆頭の位置にいるとなると――こいつはちょいと目障りでな」


       「だから、“実は東城会の裏切り者でした”って態で死んでもらおうと思ったんだよ」


       「ま、要はあんたのために――」


   東 城 「ふざけるな!!」




 東城に怒鳴られ、斉木は驚きポカン。



   東 城 「おまえに言っておくことがある」


       「俺が守りたいのは遥とハルトだけじゃねえ。アサガオの子供たちも、東城会も、神室町もだ」


       「だからこそ、騒動の種になる俺が消えることにしたんだ」


   斉 木 「いや、だから、消える必要はねえんだって。遥とハルトに死んだフリしてもらえりゃ二人は安全だ」


       「で、あんたが東城会の会長になれば、東城会も神室町もあんたが守れる」


   東 城 「おまえには理解できないのか?」


       「俺がそこにいるということ――それ自体が、逆に東城会や神室町に害をもたらしちまうってことが」


       「――そうだろうな」


       「初代が俺と同じ立場に置かれた時、おまえの親父も理解できなかったんだからな」




 斉木、読めない無表情。



   東 城 「しかも、さっきから黙って聞いてりゃ……」

       「結局何もかも全部、てめえが座りたい椅子に座るための小細工じゃねえか」


   斉 木 「ん? なに言ってんだ? 会長の椅子に座るのはあんたなんだぜ?」


   東 城 「で、自分は女房役になってやる――そうしおらしいツラで言ったな」


       「だが、おまえがなりたがってるのは女房役じゃない。俺という人形の操り手だ」


       「おまえは黒幕になりたがってるんだ。俺を盾に、裏で好き勝手やろうってだけのことだ」


   斉 木 「いや、それは違うぜ――」


   東 城 「違わねえ。実際おまえは、もうそれをやってる」


       「俺のためという言い訳の下で、都合がいいからと人を利用し、
どうでもいい相手だからと人を見捨て、計画に邪魔だからと人を殺してる」

       「そんなイカれた奴が据えようとしてるお飾りに、俺がなってやるとでも思うのか?」




 斉木、やはり読めない無表情。

 東城、そんな斉木をまっすぐ睨み据える。




   東 城 「その、人を人とも思わねえ根性、俺が叩き直してやる」

       「二度とそんなイカれた考えが頭をかすめないよう、骨の髄まで叩き込んでやる」


       「極道以前に、人の道ってやつをな」




 すると斉木、ニヤリとする。



   斉 木 「ここで受けて立って、もし俺がイイ線行ったら、俺の話を聞いてくれるか?」

   東 城 「ああ。もしおまえが勝てたら、俺は七代目になってやってもいいぜ」




 それにより斉木、途轍もなく嬉しそうな顔になり、服を脱ぐ。


 その体は錦山と同程度に出来上がっており、その背中には錦山と同じ鯉の刺青まである。


 それに応じて服を脱いだ東城の背中には、応龍の刺青。オープニングのニセモノの刺青とは比べ物にならない素晴らしさ。


 ここで、「vs. 斉木貴志」の戦闘となる。






最終章 決着 (4)



○東都大病院・屋上 (深夜)


 戦闘後。叩きのめされた斉木、




   斉 木 「……やっぱすげえな……」



 そう言い残し、気絶。

 東城、茫然自失の態で膝をつき、座り込み、うつむく。


 その時、彼方からここ屋上の上空へとやってきたヘリ。譲二が乗っているのが見える。


 それがヘリポートに着くと、CIAの人間が数人駆け下りてくる。


 リクソンは死体袋に入れられてから、倒れている手下や斉木はそのままで回収されていく。


 その作業の中、悠々と階段を降りてきたのは譲二。ヘリはいったん引き上げていく。




   譲 二 「心配する必要はなかったな」




 そう呼びかけても、東城は何も言わない。


 譲二、東城の正面までやってくると、その肩に手をかける。


 東城、ハッと譲二を見上げ、途方に暮れた様子。




   東 城 「俺はどうすればいいんだ?」



 譲二、無言。



   東 城 「俺は、俺さえ死ねば遥もハルトも、東城会も無事にやっていけると思ってた」

       「なのに、そこまでしても嗅ぎ付けて群がってくる奴らがいる。もうどうすればいいか分からない」


       「本当に死ねばいいのか?」


       「だが、俺が死んだら――その死を信じない人間が遥やハルトを襲った時、誰が助けてくれる?」


   譲 二 「カズ、私は思うんだがな」




 やや間を置いたのち、




   譲 二 「ユーは東城会に戻るべきじゃないか?」


   東 城 「! 何だと?」


   譲 二 「今回のことで、死んだフリでは遥とハルトを救えないと分かったんだ」


       「なら、もう彼らを悲しませてまで、死んだフリを続ける理由はないだろう」


   東 城 「……それは……」


   譲 二 「ユーが東城会の会長となれば、その全権力を使って彼らを守り切ることもできないではない」


       「むろんそうなれば彼らは今後、これまでのようには生活できない」


       「沖縄の自然の中でのどかに暮らすというわけにはいかないだろう」


       「しかし、ユーが生きていて、会いたい時に会える……」


       「その一番の幸せが叶うなら、彼らにとっては住環境など問題ではないんじゃないか?」




 東城、譲二の説得に心が揺らいだらしく、再び目を落とす。

 その時、鋭い声が屋上に響く。




  ローガン 「騙されるな」



 そう言いながら屋上に登場したのは、銃を構えたローガン。

 東城、状況が理解できず、困惑。




   東 城 「パット? あんた、何をしてる?」

  ローガン 「カズ、そいつはジョージじゃない」


   東 城 「何だと?」


  ローガン 「ニセモノだ。いつのタイミングで入れ替わったかは知らない。おそらく入院中だろう」


       「ともかく、そいつはジョージじゃない。――声を録音して、声紋鑑定させたからな」




 すると譲二、嘆息。



   譲 二 「やれやれ。余計なことを言ってくれる」


  ローガン 「本物のジョージはどうした? どこへやったんだ!?」




 しかし譲二が答えず銃を抜いたため、2人は撃ち合う。

 (※ローガンは9ミリを2発、ニセ譲二は44マグナムを1発)


 ローガン、くずおれるようにして前へ倒れ込み、ぴくりとも動かなくなる。


 対して譲二、何の問題もなく平気そう。




  東 城 「パットが外すはずない……」



 すると譲二、ニヤリとしてコートの前ボタンを開く。

 その下には、見るからに防弾チョッキと分かるそれがある。

 (※防弾チョッキはNIJ規格レベルⅣ)


 心臓付近の2つのかすかなへこみが、大写しになる。


 東城、信じられない思いで、譲二を見据える。




   東 城 「おまえ……誰なんだ? 譲二じゃないのか?」



 すると譲二、今までの風間譲二らしい重厚なトーンはすっかり捨て去り、ごく一般的な喋り方になる。

 (※声はそれまでと同じ)(※以降、「ニセ譲二」と表記)




  ニセ譲二 「聞いただろう? 声紋鑑定させたんだとさ」

       「そう、私は風間譲二じゃない。それがバレたからには、もう終わりだ」


       「せっかくここまで漕ぎ着けたというのに……。実際、いい迷惑だよ」


   東 城 「おまえ……どういうつもりなんだ?」


  ニセ譲二 「さっきの演説で大抵わかりそうなものだがな」


       「私の動機は斉木と同じだよ。おまえを東城会の会長にしたかったんだ」


   東 城 「……なぜだ?」


  ニセ譲二 「おまえが会長になれば、私は風間譲二としておまえを操り、東城会の力を自由に使えるからだ」


       「もちろん、おまえが途中から言うことを聞かなくなることは想定済みでな」


       「そうなった時点でおまえを始末し、ニセモノと入れ替える――それで乗っ取りは完了ってわけさ」


   東 城 「……そこまでして東城会を乗っ取って、どうするつもりだったんだ?」


  ニセ譲二 「日本での隠れ蓑にしようと思ってな」


   東 城 「……何だと?」


  ニセ譲二 「しかも、すでに兵隊を持っている隠れ蓑だ」




 ニセ譲二、東城を見据える。



  ニセ譲二 「今の東アジアの情勢からすると、いずれ現実に防衛兵器開発のメドが立つ」

       「なら、その日米共同開発のために、米軍基地拡大が確定する。そのために沖縄の土地買収が必須――」


       「そうなった時、東城会を手足に使えれば、我々の考えで事を進めることができる」


   東 城 「防衛兵器開発……基地拡大……沖縄の土地買収……おまえ、まさか……」




 東城が思い当たったことを受け、ニセ譲二はニヤリ。



  ニセ譲二 「そう。我々はブラックマンデーだ」




 ここから、ニセ譲二による説明。




  ニセ譲二 「8年前、日本にブラックマンデーの足掛かりはなかった」


       「だから土地買収の際、東城会をコマに使おうとしたんだが……結果はあのザマだ」


       「当時のボスだったリチャードソンを含め、相当数の優秀なメンバーを失う破目になった」


       「あれで、東城会がコマとして使うのが難しい組織であることはよく分かった」


       「とは言え……。何と言ってもその兵力は魅力でな」


       「しかも近江連合ほど組織が複雑化していないから、命令系統がシンプルで効果的だ」


       「だからいっそのこと、ブラックマンデーの隠れ蓑として乗っ取ることにしたんだよ」


       「だが、その肝心の方法が思い付かなくてな」


       「その件はずっと放ったらかしだったんだが……」




 肩をすくめたニセ譲二、続ける。




  ニセ譲二 「もともと私は、CIAに一職員として入り込んでいた」


       「すると1年前、おまえが自身の死を偽装し、あろうかCIAの風間の許へとやってきた」


       「その直後、風間は病気療養で長期休職することになった」


       「その時、私は天啓に打たれたんだよ」


       「私が風間譲二になり代わる」


       「そして、おまえをいずれ堂島の龍として復活させ、東城会の頂点に就け、それを風間譲二として操る――とな」


       「私はCIAを退職し、すぐに風間の顔に整形した」


       「その後、喋り方や立ち居振る舞いなどを完璧に仕上げた」


       「誰かになりきるのは得意でね。それがCIA時代には役立ったもんだ」




 ここで一息つき、



  ニセ譲二 「ある日、防犯カメラで神室町を覗いていた時だ」

       「風間組から叩き出されている斉木を偶然見つけてな」


       「情報にあったおまえの兄弟分とあまりにもよく似ていたんで、驚いたよ」


       「調べてみると、普段は単なるバーテンだ。しかしその後、堂島組からも叩き出されているところを見てな」


       「それで興味が湧いて、わざわざ日本まで出向いてきて声をかけたんだ」


       「話を聞くと、斉木の父親が初代会長の兄弟分だったことが分かった」


       「それより何より、斉木自身が桐生一馬に惚れ込んでいることが分かった」


       「こいつはいい手駒になる。そう思った私は「内密だが」として、CIAの職員だと名乗った」


       「そしておまえの近影を見せ――」


       「「桐生は生きている」」


       「「CIAは桐生を日本の裏社会をまとめられる唯一の人材と見込んでいる」」


       「「私は桐生を七代目にしたい」」


       「「君は彼の右腕になるべきだ」」


       「――そんなふうにそそのかし、計画に引き込んだんだ」


       「その後、初代が桐生一馬の父親だったことと、錦山が斉木の兄である可能性が高いという調査結果を伝えた」


       「斉木はずいぶん感動していたよ」


       「自分は桐生一馬の兄弟分となる運命にある……。そう思い詰めた斉木を操るのは造作もなかった」




 ここで再び一息つき、



  ニセ譲二 「一方で私は、リチャードソンの息子のリクソンを在沖米国領事館に見つけていた」

       「それでまず、リクソンのオンラインデータを見た」


       「その結果、彼が東城会と堂島への復讐を目論んでいることは明らかだった」


       「だからその復讐心を利用するため、私はやはりCIA職員を名乗って奴の前に出た」


       「そして、こう言ってやったんだ」


       「「君の東城会への破壊衝動は、ヤクザ殲滅作戦を継続中のCIAと利害が一致している」」


       「「我々に協力するなら、君の復讐に手を貸そう」」


       「それから、リチャードソンが実際どんな成り行きで死んだのかを教えてやった」


       「実は桐生は生きている――。そう教えたら、彼は私と神に感謝した」


       「そして、復讐のリストの最後に、おまえの名を付け加えたんだ」




 ニヤニヤしているニセ譲二。

 東城、喋りまくるニセ譲二の意図が分からず、黙って聞いている。




  ニセ譲二 「私はあくまでリクソンに手を貸すという形で、まずハルトだけを誘拐させた」


       「そして、単なる営利誘拐として100億要求することで、東城会を揺さぶった」


       「最初から遥まで誘拐したら、おまえはそこでもう表舞台に登場してしまっただろう?」


       「それじゃマズい。ただの迷惑なOBに七代目も何もあったもんじゃないからな」




 と笑ったのち、続ける。



  ニセ譲二 「次に、東城会を脅かすために、わざわざ派手な遣り口で夏目を拉致した」

       「そして、自分の手で殺したいというリクソンの許まで運んでやったんだ」


       「その後の予定は本来、こうだった」


       「ミレニアムタワー屋上へ100億を用意させ、堂島ひとりを交渉人として呼び出し、爆死させる」


       「その後、桐生一馬が生きていることが世間に知れるよう細工し、おまえを表舞台へ引きずり出すため、遥を拉致」


       「そこでおまえに登場してもらい、“東城会の敵”たるリクソンと斉木を片付けさせる」


       「そして、その功績により、おまえはめでたく七代目に就任――という手筈だったんだが……」




 ここでニセ譲二、嘆息。



  ニセ譲二 「リクソンが夏目を仕留め損ねた上、ハルトまで連れて逃げられてしまってな」

       「情報を得て向かわせたアサガオは、バイカーの集団で固められていると来る」


       「その後は真島組によって完全に警護され、我々は手の出しようがなくなった」


       「そこでやむなく作戦を変更した。堂島を拉致して、改めて100億を要求することにしたんだ」


       「リクソンの望みどおりの派手な爆死のため……」


       「それに、あくまで営利誘拐としておけば、ハルトの件との辻褄も合うし、東城会の動きを抑え込みやすいからな」


       「その後、夏目を神室町で殺害し、遥とハルトを見つけて拉致――」


       「のはずが、またもリクソンは夏目殺害に失敗」


       「遥とハルトに至っては、首相直轄のシェルター行きになってしまった」


       「そこで、2度目の作戦変更となったんだが……」


       「ミレニアムタワー屋上に夏目を呼び出し、堂島と共に爆死――」


       「のはずが、またも夏目はその難局を切り抜けた。全く、悪魔のような悪運の強さだ」




 ここでニセ譲二、ふと微笑み、



  ニセ譲二 「悪運が強いと言えば、あの宇佐美親子もだろうな」

       「本来リクソンはおまえとの直接対決前に、おまえの目の前であの二人を殺すはずだった」


       「大切な肉親を殺された悲しみを思い知らせるために――だ」


       「斉木はそうさせないつもりでいたが、私は好きにさせるつもりだった」


       「遥とハルトのような目には遭わせない――」


       「そう考えたおまえがアサガオの子供たちを守るため、東城会会長になる」


       「そんな展開も悪くはなかったからな」


       「だが、結局どうしてもシェルターから出せず、諦めざるを得なくてな」


       「仕方なくリクソンには“二人を確保した”というウソで計画を進めさせた」


       「実は、ついさっき言ったばかりだったんだ」


       「「手違いがあった。宇佐美親子の身柄は諦めてくれ」とな」




 そして含み笑いをし、




  ニセ譲二 「堂島弥生も堂島が拉致されて以降、東城会の本部に入ったきり出てこないしな」


       「リクソンはおまえと堂島のどちらにも“大切な肉親を殺す”という復讐をやり損ねて、ずいぶん苛立ってたよ」




 思い出し笑いをするニセ譲二。



  ニセ譲二 「それにしても、斉木は実に上手く芝居がかりにリクソンを始末した」

       「しかも、私がおまえに“東城会に戻るべきかもしれない”と思い込ませるために必要な、下地さえ作った。もう充分だ」


       「だから斉木は本来この後、CIAの監視下から悠々と逃げ去ったことになるはずだった」


       「本人の望みどおり、黒幕の栄誉を担えたんだよ」

       「我々は死体を丸ごと消し去るのもお手の物でね」


       「そのことをおまえのニセモノは身をもって知ることになった」




 ニセ譲二、そこから含み笑いを長く続ける。

 東城、訝しげにニセ譲二を睨み据える。




   東 城 「おまえ……。そこまで全てを話して、どうするつもりだ?」



 するとニセ譲二、これまで下ろしていた銃を東城に向け、構える。



  ニセ譲二 「作戦変更だ。ここでおまえを始末して、ニセモノと入れ替えることにする」

   東 城 「そのニセモノだがな。さっき斉木が言ってたぜ、始末したと」



 するとニセ譲二、声を上げて笑う。



  ニセ譲二 「あれは本当の茶番だったな。あんな見た目だけを装った程度でニセモノを騙られちゃ、ガッカリするよ」

       「私が用意したのは、あんなものとは出来が違う。正真正銘の傑作だよ」

       「さすがは、私の息子だ」



 得意そうなニセ譲二に、東城は内心の憤りを押し隠し、問う。



   東 城 「あんた……。自分の息子をこんなことに巻き込んだのか?」

  ニセ譲二 「何がいけない? おまえとほぼ同格の肉体・身体能力を持つアジア系など、あいつの他にはいなかったんだ」

       「しかも、そこへほんの少し手を加えただけで、顔の相似も難なくクリアした。まさに天の配剤だよ」

       「だから……。どこまでやれるか、あいつに賭けてみよう」

       「どうせこのままじゃ終わりなんだ。やれるだけやってみるさ」


   東 城 「馬鹿げてるぜ。いくら何でも、俺が生きてることを知ってる奴らの目まではごまかせねえ」


  ニセ譲二 「だろうな。だから、そいつらも全て始末することにするよ」


   東 城 「……何だと?」


  ニセ譲二 「まずは、今おまえが行動を共にしている秋山と伊達。協力者の田宮」


       「それから堂島と夏目、真島と冴島。たった7人だ」




 ニセ譲二、ニタリと笑う。

 それにより東城、唸るように言う。




   東 城 「この……外道が」



 するとニセ譲二、さらにニタニタする。



  ニセ譲二 「外道というのは、極道のことを言うんだと思っていたがな」



 それに対し東城、ニセ譲二を睨み据える。

 ニセ譲二、高らかに哄笑。


 その中、静かに目を伏せる東城。そこからカメラは東城の双眸をズームアップ。


 それから正面に向け、カッと見開いた東城の眼光はすさまじい。




   東 城 「感謝するぜ、ニセモノ」



 引きの絵となり、ニセ譲二は東城の発言の意味が分からず、怪訝そうにしている。



  ニセ譲二 「(まだ半分笑い混じりで) 何だと?」

   東 城 「やっと分かった」




 そこから東城、決意の宣言。



   東 城 「俺は守る。遥もハルトも、アサガオの子供たちも。東城会も、神室町もだ」

       「それが宿命だというなら、俺はもう逃げねえ」




 しばしの間ののち、



   東 城 「俺は、今はカタギだ。だが、元極道だ」

       「そして――中身は今もやっぱり、ヤクザ者のままだ」


       「これまではずっと、そのことからも逃げてた」


       「もうカタギだ、極道じゃない。極道でなくなればヤクザ者でもなくなるはずだ」


       「そうすればカタギの幸せが手に入るはずだ……」


       「そう信じたくて、何とかカタギらしい生き方をしようとしてた」


       「だから、自分の中身がヤクザ者だと思い知らされるたび、打ちのめされた」


       「これのせいで、いつも悪い目が出ちまうんだ――ってな」


       「服役すりゃあ禊になる、カタギになれる。そんなふうに思ったこともある」




 そして自嘲的に笑い、



       「桐生一馬って存在そのものが消えちまう――。そうなった時にすら考えた」


       「これで何もかも無かったことになる、ってな」




 東城、ここでニセ譲二を見据える。



   東 城 「だが、もう、俺は逃げねえ」

       「元極道、中身がヤクザ者……。それが、俺なんだ」


       「なら、一生かかえきってやるさ」




 ニセ譲二、無表情で聞いている。

 東城、戦う構えを取る。




   東 城 「さっきおまえが言ったのは、正しいのかもしれねえ」

       「外道だったのをどうにか切り拓いたのが極道……」

       「所詮その程度のことかもしれねえ。だがな」


       「その極道と外道の違い、今ここでおまえにきっちり教えてやるぜ」


       「来い!!」




 ここで、「vs. ブラックマンデー 首領」の戦闘となる。

 (※オーラスのラスボスなので、最強に強い設定)


 (※ニセ譲二は、ローガンを撃った44マグナム(私物)だけでなく、9ミリ(CIA官給品なのでSIGのP229か?)でも撃ってくる)






○東都大病院・屋上 (深夜)

 戦闘後。


 ボロボロの状態のニセ譲二、銃弾も尽き、なす術なし。


 その時、ニセ譲二、すばやくスマホを操作。


 東城、それを見とがめる。




   東 城 「何をした?」

  ニセ譲二 「応援を呼んだんだよ。このままじゃ埒が明かないからな」




 しばらくするとヘリが近付いてくる音がしたため、高らかに笑ったニセ譲二、ビルの端に立つ。

 やってきたヘリは、ニセ譲二の背後やや上空でホバリングし、開かれた乗降口から縄梯子が下ろされる。


 ヘリの中からガトリングガンがこちらを向いているのが見える。


 ニセ譲二、ビルの端で、指揮者のように両腕を広げる。




  ニセ譲二 「風間譲二って立場は実に便利だ。何でもできる」

       「上の命令だと言いさえすれば、命令遵守の馬鹿どもは何にでも従う」


       「全く便利で、クソみたいな組織だよ。CIAってやつは――」




 その瞬間、ニセ譲二は額を撃ち抜かれる。

 倒れゆく真後ろに床はなく、ニセ譲二は真っ逆さまにビルを落ちていく。


 東城、驚いて後ろを振り返る。


 すると屋上ドアの手前には、銃を構えている風間譲二の姿。


 ここで風間譲二の顔の大写しになる。


 画面が一時停止し、画面下部に「CIA 元 副統括官 風間譲二」の表示。一時停止が解除。


 (※この脚本内において、「風間譲二」というフルネーム表記のみが本物の風間譲二。「譲二」「ニセ譲二」および、遥&ハルトを情報機器で見つけた「正体不明の男」は全てニセ譲二)
 (※対外的業務を司るCIA長官ではないほうの、「通常業務を統括する長」たる「CIAのEXDIR」の訳語を「統括官」とし、風間譲二をその副官であったとした)

 風間譲二、無線らしきものを取り出し、操作し、通話する。

 (※ヘリの操縦士のセリフは無線らしきものを介して聞こえる)




  風間譲二 「何をしてる?」 【※「龍が如く3」の沖縄空港特別滑走路でのセリフの音声を使用】


 操縦士の声 「風間さん! 何てこった、ではさっきのは――ニセモノですか?」


  風間譲二 「ああ、そうだ」 【※「3」の沖縄空港特別滑走路でのセリフの音声を使用】


 操縦士の声 「道理で無茶な命令ばかりすると……」


       「申し訳ありません、我々はどうしますか? ヘリポートに着けますか?」


  風間譲二 「ああ。では行け」 【※「3」の沖縄空港特別滑走路でのセリフの音声を使用】


 操縦士の声 「了解」




 それによりヘリは旋回し、ヘリポートへと向かう。


 風間譲二、無線らしきものをしまうと東城の許へ歩いてやってき、その前に立つ。




  風間譲二 「すまなかった。苦労をかけたな」 【※「極」の寺田の船でのセリフの音声を使用】



 東城、少し微笑み、答える。



   東 城 「いや。助かった」



 そして顔を曇らせ、



   東 城 「ただ、パットが……」



 と言いながらローガンのほうを見やる。

 それにより風間譲二もそちらを見、初めてローガンであることに気付いたらしく、やや目を瞠る。


 ところがその瞬間、ローガンが呻く。


 東城と風間譲二、ローガンの許へと駆け寄る。




  風間譲二 「おい!」 【※「極」の寺田の船にて、回想シーン内の世良へのセリフの音声を使用】


   東 城 「パット! 無事なのか?」


  ローガン 「ああ……どうだろうな。たぶん肋骨はやられてる」




 東城が服を脱がせると、そこには防弾チョッキがある。

 (※NIJ規格レベルⅢA。秘匿着用向きのコンシーラブルタイプ)


 胴体中央部に銃弾が埋まり、かろうじて止まっている状態。


 ローガン、顔をしかめ、吐き捨てるように言う。




  ローガン 「野郎、44マグナムをぶっ放しやがった」



 ローガン、東城に支えられ、座る体勢となる。

 風間譲二を見上げ、まじまじと見たのち、ホッとした笑みを浮かべる。




  ローガン 「よかった……御無事で何よりです」



 風間譲二、少し微笑む。



  風間譲二 「ああ」 【※「3」の沖縄のクラブで目覚めて以降にあるセリフの音声を使用】

  ローガン 「その様子じゃ、自力で監禁先から脱出……」


       「そして、我々がまさに必要としているタイミングで駆けつけてくれた――ってとこですか?」


  風間譲二 「ああ、そうだ」 【※「3」の沖縄空港特別滑走路でのセリフの音声を使用】


  ローガン 「(苦笑) さすがだな」




 風間譲二とローガン、しばし向かい合い、目だけでいろんな思いを交わす。


 そののち、風間譲二から差し出された手を、ローガンはしっかり取る。


 東城、それを見てホッとした様子。


 そんな中、ヘリポートにはヘリが着陸。


 風間譲二、そちらを見上げ、感慨深げに言う。




  風間譲二 「終わったな」 【※「極」の寺田の船にて、回想シーン内の世良へのセリフの音声を使用】



 それにより東城もヘリポートのほうを見やり、少し笑みを浮かべ、呟く。



   東 城 「ああ」



 そこからカメラは引いていき、遠景で屋上を映す。

 ヘリポートにて、ヘリから降りた職員がヘリのそばで直立待機している様子が見える。


 【※なお、前章の最後の風間譲二のセリフ「まずいな……」は、「極」の由美拉致を知らされた時のセリフの音声を使用】







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