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四章 東城編 騒乱

四章 東城編 騒乱 (1)



○ニューセレナ (夜)

T「17日前  2017年12月11日 18:25」


 カウンター席に秋山、ソファー席に東城と伊達が座っている。


 秋山、スマホで通話中。




   秋 山 「うん、ホントにありがとう。それじゃ」



 通話を終了した秋山、ホッと息をついてから振り返り、2人に報告。




   秋 山 「運天くんの仲間が捕まえてくれたそうです」

       「それも、宇佐美くんの病室へ着く寸前で」


   伊 達 「そうか! そりゃよかった」


   秋 山 「いやもうホント、花屋さんとこが見張ってくれてたおかげですよ」


       「もし、白衣姿で裏口から入った二人が怪しいって報告がなかったら……」

       「品田くんだって油断したかもしれませんから」




 東城、安堵した顔つきで言う。



   東 城 「ありがたいな」

   秋 山 「ええ、ホントに」


   東 城 「真島の兄さんもだ」

       「本当ならリクソンは、子供が多いアサガオのほうを狙いたいはずだ」


       「なのに、そうしないってことは……」

       「アサガオが完全に守り固められていて、手が出せないってことだろう」


   秋 山 「そうですね」

       「交代要員としてさらに100人沖縄に送ったそうですから、真島さんも本気ですよ」




 その時、ニューセレナのドアベルが鳴り、入ってきたのは夏目。

 秋山、思わず立ち上がって迎える。




   秋 山 「夏目さん!」

       「その、庄司くんは――」




 夏目、首を横に振る。



   夏 目 「まだ起きません」

   秋 山 「そうですか……」


   夏 目 「それより、集まってもうてすいません」


   秋 山 「いえいえ、実は俺も今、ここに世話になってる身なんです」

       「どうぞお気遣いなく」




 努めて明るい調子で言った秋山に対し、夏目は感謝の笑みを目元に浮かべ、一礼する。

 ここで、いったん暗転。






○ニューセレナ (夜)

 全員で奥のソファー席に着いている状態。




   夏 目 「実は、直接お伝えしときたいことがあったんで来たんです」

   秋 山 「電話で言ってましたね。何です?」


   夏 目 「リクソンから東城会本家にメールが来たんです」


       「明日の午前1時――今夜日付変わってすぐの夜中1時」


       「100億を用意したミレニアムタワーの屋上に……」

       「真島組の若頭を交渉役として上がらせろと」



 

 それで驚いた伊達、オウム返しで叫ぶ。



   伊 達 「交渉役だあ?」

   夏 目 「はい。それ以外の人間は屋上に上がるなと」


   東 城 「何の交渉役なんだ?」


   夏 目 「分かりません」


   秋 山 「いや、それって絶対ダメなやつでしょ」


       「交渉役なんてのは口実で、夏目さんを殺すための呼び出しですよ」


   夏 目 「そうですね」




 事態をきちんと把握している夏目を目の当たりにし、秋山、陰鬱な表情になる。



   秋 山 「分かってて行くってことですか……」

   夏 目 「はい」

       「六代目の命がかかってますから」




 秋山、しばし考えた後、



   秋 山 「くそっ」



 と呻く。

 東城、夏目を見やる。




   東 城 「夏目、これは無駄死にになる可能性が高い」

       「リクソンはおまえも大吾も殺す気でいるんだ」


   夏 目 「それでも、行かんわけにはいかんのです」


       「東城会は覚悟の上で、リクソンの言いなりになってるんです」


       「六代目が殺されることも、100億が無駄になることも……」


       「それでも、ひょっとしたら六代目を奪還するチャンスがあるかもしれん」


       「それに懸けてるんです」


       「せやから俺も、それに懸けます」

       「あかんかったら……元々です」




 夏目の覚悟に対して言える言葉がなく、黙りこくる3人。

 そこで夏目、やや口調を変える。




   夏 目 「四代目、お聞きしときたいことがあるんです」

   東 城 「何だ?」


   夏 目 「六代目を東城会に呼び戻して、会長に指名しはったこと……」

       「あれは、どういうお考えやったんですか?」


       「六代目の器量を見込んだっちゅうだけの話ですか?」


       「二代目がしたことは、六代目には関係ないっちゅうことですか?」




 かなり踏み込んだ質問に、秋山と伊達は黙りこくる。

 が、2人としても聞きたいところではあるらしく、制止はしない。


 その2人の意図も汲んだ上で、東城は答える。




   東 城 「大吾の器量を見込んだというのが唯一無二の理由だ」



 夏目、心からホッとした様子で笑顔になり、息をつく。

 (※序盤からの「気がかり」が、ここにおいて全面解決したため)




   夏 目 「そうですか。よかったです」



 東城、その夏目の反応を見たのち、少し顔を曇らせる。



   東 城 「だから――今となっては、申し訳なかったと思ってる」

   秋 山 「えっ?」




 秋山の聞き返しと夏目&伊達の視線を受けて、東城は説明。



   東 城 「俺の親父は、自分が騒動の元になることを悟って引退し……」

       「二代目に東城会と神室町を託した」


       「そんな重責を、二代目は受け継いで全うしてくれた」


       「だから俺は、二代目を責める気にはなれねえんだ」

       「親父が東城会に戻ろうとした理由を納得できない限りな」




 一息つき、さらに説明。



   東 城 「そして俺は、大吾にも二代目と同じ器量が――」

       「東城会と神室町を守り切るだけの器量があることが分かってた」


       「だから六代目会長が必要となった時……」

       「未熟なことを承知で大吾を引き戻し、真島の兄さんに後見役を押し付けたんだ」


       「身勝手極まりない話だが、その時にはそれが俺にできる最善の方法だった」


       「だから後から、自分の無力さがつくづく嫌になった」


       「俺はただまつり上げられただけの猿山のボス猿に過ぎない」


       「組織をまとめ上げることなんか到底できやしねえ役立たずだ――ってな」




 そこで秋山、憤慨してまくし立てる。



   秋 山 「何を言うんですか」

       「俺たちは――神室町は、その猿山のボス猿を求めてるんです」


       「こう言っちゃ何ですけど、組織をまとめ上げる才能を持つ人間は少なくない」


       「でも、ありとあらゆる種類の人間をまとめる要になれる――」


       「そんなカリスマ性を持つ人間は、そうはいない」


       「そのカリスマ性を持っていたのが、あなたなんだ」


       「それを役立たずだなんて、冗談にも言ってほしくありませんよ」




 大真面目に憤慨している秋山に、東城は少し微笑む。



   東 城 「すまないな」

       「カタギのおまえに、いつも尻ぬぐいを押し付けちまって」




 すると秋山、本気で言う。



   秋 山 「東城さん。東城会に戻る気はないんですか?」



 これには伊達もびっくり。



   伊 達 「何だって!?」

   秋 山 「だって、結局それが一番いいような気がするんです」


       「東城さんが人をまとめる要としてトップに立ち、堂島さんが組織を運営する……」


       「それが今考えられる中で、最高の東城会の形だと思うんですよ」




 東城、無言。



   秋 山 「極道組織の形態としては、東城さんは総裁ってことになるんでしょうかね?」

       「そうすれば、堂島さんだけに何もかもを背負わせる必要もなくなります」





 東城、引き続き無言。




   秋 山 「東城さん、あなたは自分を過小評価しすぎています」


       「さっきも言いましたけど……」

       「あなたという存在は、ニセモノが出るほどに神格化された伝説なんです」


       「そのこと、忘れないでくださいよ」




 そこで夏目、つい発言。



   夏 目 「ニセモノ?」



 それに対し、秋山が説明。



   秋 山 「ええ、さっきこのお二人には話したんですけどね」

       「どうも神室町に堂島の龍・桐生一馬のニセモノがいるらしいんです」


       「真島組さんにも昨日お伝えしましたけど……」

       「夏目さんにはまだ伝わってなかったんですね」


   夏 目 「はい……」

       「ただ、そのニセモンの件は、俺は前に花屋さんから聞いてたんです」


   秋 山 「そうだったんですか!」


   夏 目 「でも……」

       「秋山さんが聞き込みはった話のほうを、まず聞かしてもうてええですか?」


   秋 山 「え?」

       「ええ、まあ……」

       「えっと――じゃ、やっぱ渡瀬さんのとこから話すしかないか……」


   夏 目 「渡瀬さん?」


   秋 山 「ええ」

       「これは昨日、近江連合の会長代行の渡瀬さんが持ってきた情報なんです」




 ここから秋山の説明に入る――という流れで、暗転。





○ニューセレナ (夜)

 秋山の話がもう済んだ状態。




   夏 目 「そんなことがあったんですか……」



 話を呑み込んだ夏目、自分のほうの情報を開示する。



   夏 目 「四代目に似た奴が神室町をうろついてる――」

       「その情報自体は、花屋さんも掴んではりました」


       「俺が最初に聞いたんは12月1日です」


   秋 山 「うちの花ちゃんが聞いたのも1日だって言ってました」


       「どこかのチンピラが自分とこの組長の目撃談を笑ってたそうで」


   夏 目 「ただ、“堂島の龍を見た奴がおる”っちゅう噂は、徐々に広まってるんですけど……」


       「「見た!」っちゅうてる奴はそれ以降増えてへんそうなんです」


       「噂を突き詰めると、これまでの目撃者10人のうちどれかに行き当たるらしくて」


       「実際、先月30日の夜10時までは、神室町のカメラにそれらしい奴が映ってたのに……」


       「それ以降は全然映ってへんそうです」


   秋 山 「その目撃者10人のうち、一番初めの目撃はいつなんです?」


   夏 目 「一番早いのが、先月26日の午前2時頃やそうです」


       「チンピラが居酒屋でゴネてた時……」

       「客の一人に店から引っ張り出されて、ボコボコにされたんです」


       「それで「てめえ何モンだ?」て聞いたら――」

       「その客はわざわざモンモン見せて、言うたそうです」


       「「堂島の龍を知らないのか?」て」


       「で、呆然としてるチンピラを置いて、去っていったそうで」


   秋 山 「……少なくとも、本物の東城さんらしくはないですね」


   夏 目 「そうですね。せやから花屋さんは言うてはりました」


       「ふざけた野郎が伝説の極道を気取ってやがるのかもしれねえ、と」


       「確かに、渡瀬さんが見つけはったニセモンに通じるもんがありますね……」


   秋 山 「でも、そのニセモノの堂島の龍の動きが、30日の夜で止まってるんですね?」


   夏 目 「花屋さん曰く、今んとこはそうです」


   秋 山 「妙だな」

       「もし伝説を騙って名を売り出したいなら、やめるってことはないですよね?」


   夏 目 「そうですね」

       「まあ普通に考えたら、友達と連絡が取れんようになってもうたわけですから」

       「今は関西に戻って友達捜索中、
っちゅうことなんでしょうけど……」

   秋 山 「……何か、夏目さん自身はそれには賭けないって口ぶりですね?」


   夏 目 「そうですね……」

       「何か、ヘンな感じなんです」


       「何かよう分かりませんけど、……でも何か、ヘンなんです」


   秋 山 「そうですか」

       「じゃ、こりゃ何かあるってことだな……」


   夏 目 「何かって何ですか?」


   秋 山 「そりゃ分かりませんよ」


       「でも、夏目さんが“何かヘン”と感じたら、そこには絶対に何かある……」


       「これはもう経験則で分かってますから」




 それにより夏目、曰く言い難い表情になる。

 (※スターダストへ向かう前の「奇妙な感覚」を思い返している)


 その時、秋山がスマホを取り出す。振動する画面を見、




   秋 山 「田宮さんです」



 そしてスピーカー機能にし、話しかける。



   秋 山 「もしもし、秋山です。どうしました?」

  田宮の声 「今、近くに東城はいるか?」


   秋 山 「ええ」

       「これ、スピーカーですから、すぐ話せますよ」


   東 城 「どうした? 何かあったのか?」


  田宮の声 「その前に、おまえは今どこだ?」

       「そこには他に誰がいるんだ?」


   東 城 「今、神室町のニューセレナってバーにいる」

       「俺の他には、秋山、伊達さん、それに夏目だけだ」


  田宮の声 「夏目……例の真島組の若頭か」

       「信用できるんだな?」


   東 城 「ああ」


  田宮の声 「そうか」




 あっさり納得した田宮、すぐ本題に入る。



  田宮の声 「おまえ、譲二と連絡は取れてるか?」

   東 城 「なに?」


  田宮の声 「少なくとも今朝から、どうやっても電話が繋がらないんだ」

       「メールも返信がない」




 そこで東城、自分のスマホを操作。しかし、繋がらない。



   東 城 「おかしい。繋がらない」

       「どの時間にかけても出ないってことはないはずだが……」


  田宮の声 「そうか……」




 東城、次にローガンにもかけてみる。しかし、やはり繋がらない。



   東 城 「おかしい。パットとも繋がらない」

  田宮の声 「何だと?」

       「そいつはどうも……気がかりだな」




 しばしの間の後、田宮が話し始める。



  田宮の声 「これは完全なる極秘事項だ」

       「絶対にここだけの話にしてくれ」

       「いいな?」




 東城、みなを見回し、みなが同意して頷いたのを確認してから、返事。



   東 城 「ああ。大丈夫だ」

  田宮の声 「よし」

       「こないだの俺の沖縄入り、あれは米軍基地絡みだったと言ったろう?」


   東 城 「ああ」


  田宮の声 「あれは実は、防衛大臣時代に親しくなった――」

       「まあ、軍人のAとしておくか」


       「そのAから相談があったせいなんだ」


   東 城 「相談?」


  田宮の声 「どうも基地内で妙な動きがあると言ってな」


       「どう考えても、上に報告されていない作戦か演習が行われているはずだと言うんだ」


       「ところが、表面上の記録には一切出ていないそうでな」




 そこで秋山、割り込む形で質問。



   秋 山 「作戦や演習が記録に残らないことってあるんですか?」

  田宮の声 「普通はありえんよ」

       「実際、あまりに巧妙すぎて、自分の頭のほうを疑うほどらしい」


       「そしてAは、こんな気分になったのは8年ぶりだと言うんだ」




 それにより東城と夏目はやや目を瞠り、伊達は素直にリアクション。



   伊 達 「なっ……8年前って言やあ……」

  田宮の声 「そうだ」

       「またブラックマンデーが軍内部に入り込んでいるんじゃないか――」

       「それをAは不安がっていたんだ」




 そこで秋山、確認。



   秋 山 「8年前もブラックマンデーは、軍の内部に入り込んで……」

       「米軍基地の設備を自由に使ってたんですか?」


  田宮の声 「そうだ」

       「その時の遣り口に近いものを感じると、Aはたいそう気を揉んでな」


       「ぜひ俺にもその目で確認してほしいと懇願されたんだ」

       「それであの日、極秘で沖縄入りしたのさ」


   秋 山 「それで……確認できたんですか?」


  田宮の声 「ああ」

       「12月9日の0時26分に報告のないヘリが離陸」

       「それが戻ったのは1時37分だった」


       「Aと二人で、信じられない思いで眺めたよ」


       「しかし、本当に信じられなかったのはその後――」


       「そんなヘリなど基地からは飛んでいないということになっている記録を見た時だ」


   秋 山 「9日……そうか!」

       「爆破前に船から脱出したリクソン一味を、そのヘリで拾いに行ったんだ!」


  田宮の声 「おそらくな」


   秋 山 「なら、なぜそれをもっと早く言ってくれなかったんです?」


  田宮の声 「こんなこと、迂闊に話せるわけないだろう」

       「アメリカの軍事機密なんだぞ」


   秋 山 「……まあ、そりゃそうです」




 少しの間ののち、田宮が続ける。




  田宮の声 「Aは特に、軍の情報機器の私的使用を警戒していた」


       「現に、ヘリを1台飛ばしたことさえ無かったことにするんだ」


       「もしそいつにハッキング能力があれば……」

       「自分の足跡を消しながら機器を悪用するのは簡単だろう」


   秋 山 「例の、監視カメラを勝手に覗いちゃってるってやつですね?」


  田宮の声 「そうだ」

       「だからAは既に2週間前から――」

       「CIAの知り合いに秘密裏に捜査協力してもらっていた」




 それにより東城、ピンと来た様子。



   東 城 「まさか、その知り合いってのは……」

  田宮の声 「そうだ」

       「さっきやっと明かしてくれたその知り合いというのが……」

       「情報担当次官のパトリック・ローガンだったんだ」


       「そのローガンと今朝から連絡が取れないことを、Aは不安がっていた」


       「そして今、おまえとも連絡が取れないとすると……」




 沈黙ののち、東城が厳しい口調で言う。




   東 城 「まさか、パットがブラックマンデーの手先だと言うつもりじゃないだろうな?」


  田宮の声 「俺はまだ何も判断していない」

       「おまえはどう思うんだ?」


   東 城 「パットに限ってそんなはずはない」


       「パットは根っからの正義漢だ」

       「自分の人生を、悪と戦うことに捧げ尽くしてきた人間なんだ」


       「考えられない。ありえないことだ」


  田宮の声 「しかし、そのローガンと連絡が取れないのは妙だ」

       「むろん、それを言えば譲二も同じだが……」


   東 城 「……あんたまさか、譲二まで疑ってるんじゃないだろうな?」




 すると田宮、憤然たる口調で答える。



  田宮の声 「こんな時に冗談はよせ」

       「俺は風間譲二って男を知ってる」


       「奴はCIAを親としていて、その親の命令ならどんな非情なものでも遂行する」


       「それほどCIAに忠誠を尽くしている男だ」

       「CIA以外の組織に使われるはずがない」


       「まして8年前、CIAに苦汁を舐めさせたブラックマンデーなどにな」




 東城、安心し、目元と口元に笑みを浮かべる。



   東 城 「そうだな。分かってる」

  田宮の声 「あいつのことだ、そのうち向こうから連絡を寄こすだろう」


       「もしそっちに連絡があったら、俺にも連絡しろと言っといてくれ」


   東 城 「分かった」


  田宮の声 「じゃあな。――重々気を付けろよ」


   東 城 「ああ、分かってる」




 そこで通話は終了。

 間があってから伊達、呟く。




   伊 達 「こんなことは考えたくねえんだが……」

       「風間譲二とローガン、二人ともブラックマンデーにどうかされた――」

       「なんてことはねえだろうな?」




 東城、伊達を見たのち、考え込む。



   東 城 「なくはない」

       「だがそれは、どちらかが裏切り者だった場合より、状況的にはマズいな」


   伊 達 「まあな……」




 すると、秋山がハッと思い当たる。




   秋 山 「そうか!」

   伊 達 「何だ? どうした?」


   秋 山 「いえ、その……それこそ“こんなことは考えたくない”ことなんですけど」


       「もし二人のうちどちらかが裏切り者だった場合……」

       「どちらかの情報がリクソンに流れてるってことでしょ?」


       「ならリクソンは当然、東城さんが――桐生一馬が生きてることを知ってるわけです」


       「それも、今回の事件の最初からですよ」




 東城と伊達、驚いた様子。



   秋 山 「これまで、ずっと不思議だったんです」

       「堂島さんが拉致され、100億が要求し直されたとなった後」

       「なぜまだハルト君が狙われるのか?」


       「でも、裏切り者から東城さんの生存を聞かされてた――」

       「それなら話は分かりますよ」


       「リクソンにとってハルト君は、東城会へ100億を要求するためだけの道具じゃなかった」


       「最初から、東城さんへの復讐の一環として狙われたんです」


       「ところが、一度は拉致に成功したものの逃がしてしまった……」


       「再び拉致しようにも、どうやっても手出しできない」


       「それで、計画の本道を整えて再び100億を要求するために――」

       「リクソンとしては次善策で、堂島さんを拉致したんでしょう」


       「とは言えリクソンは、復讐計画の一環としてハルト君を諦めることはできない」


       「だからこそ、ずっと狙い続けてるんじゃないでしょうか」


       「100億要求のためという名目がなくなってしまった後も……」


   伊 達 「なら……」

       「やっぱり風間譲二かローガンのどちらかが、裏切り者ってことか……」




 4人、顔を見合わせてから、沈黙。

 しばらくのち、夏目、ソファーから立ち上がる。




   夏 目 「ほな、すいませんけど、俺、そろそろ失礼します」

   秋 山 「病院に戻るんですか?」


   夏 目 「はい」




 秋山、立ち上がると夏目を見つめ、言う。



   秋 山 「ここには、最後の別れのつもりで来たんですよね?」



 それにより、東城と伊達も深刻な顔になる。


 夏目、困ったような笑みを浮かべる。




   夏 目 「そこまで深刻に思い詰めてるわけちゃいますよ」

       「ただ、いちおう御挨拶しとこうと思ただけで」


   秋 山 「夏目さん……」


   夏 目 「みなさん、今日までありがとうございました」

       「できれば、明日以降もよろしくお願いします」




 ぺこりと頭を下げた夏目。

 その後、さっぱりした顔で秋山に言う。




   夏 目 「ほな、失礼します」

   秋 山 「……じゃ、また」




 その秋山の何気ない「また」に、笑みを浮かべる夏目。



   夏 目 「はい。また」



 夏目、はっきり「また」を答えてから、ニューセレナを出てゆく。

 沈黙ののち、秋山が苛立たしげに言う。




   秋 山 「くそっ……どうにかならないんですかね」




 答える者はなく、店内は沈黙となる。


 その時、東城のスマホが振動。画面を見た東城、




   東 城 「非通知だ」



 そしてスピーカー機能にし、英語で話しかける。



   東 城 「Hello ?」



 すると、向こうからは含み笑いが聞こえる。

 その含み笑い混じりで、流暢な日本語が話される。




リクソンの声 「まずは「初めまして」と言うべきかな? 桐生」

   東 城 「誰だ?」


リクソンの声 「おや、もうとっくに知ってるものと思っていたがな」

       「私だよ、リクソンだ」




 それにより、秋山と伊達もギョッとする。


 (※登場そのものへの驚きと、「やはり情報が流れている」と確信した驚き)




   東 城 「何の用だ?」

リクソンの声 「もちろん知ってるだろうが、今夜東城会は100億を用意する」


       「それをこちらが回収できれば、堂島を解放する予定なんだが……」


       「それまで、まだずいぶんと時間がある」


       「だから、ちょっとゲームでもしようかと思ってね」


   東 城 「ゲームだと?」


リクソンの声 「そうだ」

       「むろん、やるのはおまえで、私はそれを見て楽しませてもらうだけだがな」


   東 城 「……おまえ、ふざけてるのか?」


リクソンの声 「そのとおり、ふざけてるんだよ」


       「私がふざけてることを神に感謝するんだな」

       「私にその余裕がなければ、今ごろ堂島はとっくに死んでる」




 それから少しの間ののち、向こうからは大吾の声。



  大吾の声 「桐生さんですか?」

   東 城 「大吾!」

       「おまえ、無事なんだな?」


  大吾の声 「はい、何とか」


       「と言うより、こんな状況でなかったら、そのセリフを言いたいのはこっちですよ」




 少し笑い混じりでそう言われたため、東城、目元と口元だけで微笑む。



   東 城 「そうだったな」

       「――いろいろすまなかった」


  大吾の声 「いえ、そんな」

       「俺のほうこそ、こんなことで手を煩わせてしまってすみません」


   東 城 「何を言ってる、おまえは何も――」




 そこで話し手はリクソンに戻る。




リクソンの声 「旧交は温まったな?」

       「では、ゲーム開始だ」


       「言っておくが、これをやるのはおまえひとりだ」

       「そこにいる刑事と友達の手は借りるな」


   東 城 「ああ、分かった」


リクソンの声 「では、まずは神室町の入口に立ってもらうとしよう」


   東 城 「……入口だと?」


リクソンの声 「そうだ」

       「とっととそのバーを出て、天下一通りのゲート前に立て」

       「もちろん愛用の覆面をつけてだ」


       「それ以降の指示は追ってする」


       「その私の指示全てをクリアできなければ――」

       「気の毒に堂島はいたぶられることになる」


   東 城 「何だと?」

       「おまえ、大吾に何する気だ?」


リクソンの声 「指を切り落とすことをエンコヅメと言うんだったかな?」


       「実に野蛮な風習だ、未開の部族そのものだ」


       「とは言え、それがおまえたちのお気に入りだというなら仕方がない」


       「郷に入らば郷に従えと言うからな」




 含み笑いののち、通話は切れる。



   伊 達 「何てこった」

       「どうする東城?」


   東 城 「もちろん、従うしかない」


       「ここまで大吾を無事に生かしておいたんだ」

       「少なくとも100億回収までは生かしておくつもりだろう」


       「奴が神気取りで俺を踊らせたいと言うなら、せいぜいそれに付き合ってやるさ」




 東城、立ち上がって覆面を装着。

 秋山、その東城に申し出る。




   秋 山 「今後、ここからできる限りアシストします」

       「連絡は随時お願いしますよ」


   東 城 「分かってる。じゃあな」




 そして東城、ニューセレナを出る。

 いったん暗転。





〇天下一通り・ニューセレナが入るビル前 (深夜)

 ニューセレナのビル前に立つ東城、内心考える。



   東城M (よし、ゲートに向かおう)



 ここから、「ゲートに向かう」のミッションに入る。

 【この後、覆面が災いし、ゲートまでの間に戦闘をいくつかこなす破目になる】





四章 東城編 騒乱 (2)



○神室町・天下一通りのゲート前 (夜)


 覆面姿の東城、道行く人々全員の視線を引き寄せまくっている状態。 (※本日は月曜)


 スマホが鳴り、東城は出る。




   東 城 「さあ、どうする?」

       「往来でストリップでもさせるか?」




 するとリクソン、たいそう高慢ちきに答える。



リクソンの声 「そんなことを思い付けるほど、私は低俗じゃなくてね」

       「まずはキャバクラに向かえ」


   東 城 「……キャバクラだと?」


リクソンの声 「そうだ。エリーゼという店に行け」


       「そしてナンバー1ガールの美涼を口説き落とし、デートに連れ出せ」


   東 城 「おまえ、本気か?」


リクソンの声 「もちろんだ」


   東 城 「キャバクラってのはデートクラブじゃないんだぞ」


リクソンの声 「ほう?」

       「何しろ、その手の店のシステムの違いには疎くてね」


       「とは言え……」

       「達成がさらに困難ということなら、却ってゲームとしては好都合だな」


       「いずれにせよ、この任務をやり遂げられなければ――」


       「このさき堂島は、右手で銃を構えられなくなる」


   東 城 「……エンコ詰めってのは小指から落とすもんなんだぞ」


リクソンの声 「そうなのか?」

       「ま、そんなことは私の知ったことじゃない」




 通話が切れる。困惑した東城、内心考える。



   東城M (エリーゼのオーナーは秋山だ)

       (とにかく相談しよう)




 東城、スマホを操作しながら路地裏に入る。





○ニューセレナ (夜)

 秋山のスマホがスピーカー状態でカウンターに置かれている。

 伊達、困惑するばかりの状態。

 秋山、怪訝そうに考え込んでいたが、不意に言う。



   秋 山 「それ、俺の店だと知ってて言ってる感じでしたか?」

  東城の声 「分からねえ。ただ、それらしい物言いじゃなかったな」


   秋 山 「ならきっと、美涼ちゃんが全日本夜蝶コンテストでグランプリ獲ったせいですね……」


       「わかりました。じゃ、今すぐ店に連絡して、店長と美涼ちゃんに協力願います」


       「奴がどこから見てるか分かりません」


       「東城さんは普通に入店して、普通に口説いて美涼ちゃんを連れ出してください」


       「そうできるよう取り計らいます」


  東城の声 「わかった。すまない」


   秋 山 「いえ、これくらい」

       「じゃ、切りますよ」


  東城の声 「ああ、頼む」






○神室町・天下一通り (夜)

 路地裏から出た東城、内心考える。




   東城M (よし。エリーゼに行こう)



 ここから、「エリーゼに向かう」のミッションに入る。

 【これ以降、エリーゼまでの間に、例によって覆面が災いしての戦闘を繰り返す破目になる】






○神室町・エリーゼ前 (夜)

 とうとうやってきたエリーゼ前。東城、内心考える。




   東城M (よし、入るぞ)



 そして東城、エリーゼに入る。





〇ミレニアムタワー前 (夜)

 ミレニアムタワーは今夜から明日にかけ、真島組により封鎖中という状態。

 なのでミレニアムタワー正面には、明らかにヤクザな風体の者たちが多く溜まっている。

 中には、武器に転用できそうな何かを持って、わざとらしく武装している者もいる。

 (※威圧感だけで追い払える大多数の一般人を、最初から穏便に追い払っておくため)

 真島組若衆の南もやはり、金属バットを持っている。

 その南がふと目をやったのは、エリーゼ。

 そこでは今まさに、東城が入ってゆくところ。

 南、顔をしかめる。




     南 「何やあいつ。けったいなナリでキャバクラ行きよんのぉ」



 ここで暗転。






○エリーゼ (夜)

 東城が入店してすぐ、店長に声をかけられる。

 美涼を指名すると、すぐに席へ案内される。


 ここからキャバゲームになる。


 【※「この後すぐデートしよう」を選択できるところまで会話を持ってこないと終わらない】


 キャバゲーム終了後、次のシーンへ移行する。






○ニューセレナ (夜)

 秋山のスマホが振動。秋山、スマホの画面を見、




   秋 山 「ん? 夏目さんです」



 と言い、スピーカー機能にしてから出る。



   秋 山 「夏目さん? どうしました?」

  夏目の声 「いえ、あのですね……」

       「四代目、今そこにいてはりますか?」


   秋 山 「えっ!」

       「……どうしてですか?」


  夏目の声 「いや、実は今、うちの若いのがミレニアムタワーを封鎖してるんですけど」


   秋 山 「あ、そっか」

       「うちの店、ミレニアムタワーの真向かいだ……」


  夏目の声 「つい今、うちの親父が、そこの仕切り役に電話したんです」

       「ほんで、変わった様子はあれへんかって聞いたら――」

       「「覆面かぶった奴がエリーゼに入っていった」て答えよって」


       「それで親父が「まさか桐生ちゃんやないやろうけど、一応確認せえ」て言うもんで」


   秋 山 「いや、実はそのとおりなんです」

       「いま東城さん、エリーゼに行ってます」


  夏目の声 「えっ!?」


   秋 山 「ついさっき、リクソンから電話があったんです」


       「で、堂島さんを無傷でいさせたいなら指示どおりに動けと言われまして」

       「それで今、言いなりに動いてる最中です」


  夏目の声 「そうやったんですか!」


   秋 山 「あっそうだ、その時に電話口に出された堂島さん、御無事でしたよ」


       「御本人もおっしゃってましたが、声を聞く限りでもお元気そうでした」


  真島の声 「ホンマか!!」




 と叫んだのは真島。

 (※さっきの夏目の「えっ!?」以降、夏目がスピーカー機能にしていたため)




   秋 山 「はい、ホントです」

  真島の声 「そうか……そらよかった」


       「ほんで……」

       「その桐生ちゃんが言いなりになってるっちゅうのは、どないな指示なんや?」


   秋 山 「エリーゼでナンバー1を口説いてデートに連れ出せと」


  真島の声 「何やリクソン、ふざけとんのか!?」


   秋 山 「本人曰く、ふざけてるそうです」


       「ふざける余裕がなきゃ、今ごろ堂島さんは生きていないと言ってました」


  真島の声 「チッ、クソが」

       「ほな、そのキャバ嬢の連れ出しに、おまえは裏から協力したんやな?」


   秋 山 「はい、もちろん」


  真島の声 「よっしゃ」

       「ほな今後、リクソンから指示出たらワシにも言うてこい」

       「何でも協力したる」


   秋 山 「ホントですか! そりゃ助かります」


  真島の声 「おう」

       「おまえのスマホは桐生ちゃんのために空けとけやけ」

       「ワシには伊達さんから電話したらええ」


   秋 山 「はい。じゃ、いったん切ります」


  真島の声 「おう」




 そこで通話は終了。



   伊 達 「何だよ、伝言係に使いやがって」

       「――しかしまあ、俺たちが動けない今、ありがたいっちゃありがたいな」


   秋 山 「ええ」




 そこで暗転。






○エリーゼの前 (夜)

 東城、ミッション達成で、無事エリーゼを出たところ。傍らには美涼が立っている。


 その時、スマホが振動。画面を見、すぐ出る東城。




   東 城 「おい。連れ出したぞ」

リクソンの声 「……その女、頭がおかしいのか?」


   東 城 「失礼だぞ」

       「それより、次はどうする?」




 リクソン、フンと鼻を鳴らし、



リクソンの声 「なら、その女と腕を組んでピンク通りを歩け」

   東 城 「……なに?」


リクソンの声 「そのふざけた格好で美人を連れていれば、さぞかし馬鹿どもに絡まれることだろう」


       「堂島もだが、その女もせいぜい守ってやるがいい」




 通話は切れる。

 東城、すぐ秋山にかける。




  秋山の声 「もしもし? どうなりました?」

   東 城 「店を出てすぐ電話があった」

       「美涼と腕を組んでピンク通りを歩けと」


       「そうしていれば馬鹿どもに絡まれるだろうから、美涼を守ってやれ――と」


  秋山の声 「くそっ、やり方がいちいち子供っぽいな」

       「分かりました、応援を呼びます」


   東 城 「なに?」


  秋山の声 「俺が行けない代わりに、もっと力になってくれる人を今から呼びます」


       「東城さんはリクソンの指示に従ってください」

       「すぐ応援が駆けつけますから」


   東 城 「そうか。分かった」




 そこで通話は終了。


 その途端、まだピンク通りに入っていないのに、リクソンの言う「馬鹿ども」がぞろぞろ出現。




   不良F 「お姉さーん」

       「そんな馬鹿みたいな客より、俺らと遊ぼうよ」




 ここから「vs. 神室町の不良たち」の戦闘となる。

 東城は美涼を守りつつ、倒すたびに人数補強される不良たちと戦闘。

 そうしながら、ピンク通りへとなだれ込んでいくことになる。


 (※美涼はちょいちょいナイスアシスト(スタミナンを投げたり)してくれる)






○ピンク通り (夜)

 戦闘の真っ最中、ピンク通りの真ん中あたりへ来た時、叫び声。




   真 島 「ワシも混ぜたらんかい!!」



 その声のほうを見ると、タキシード&眼帯付き般若の面という、ハンニャマン姿の真島が乱入。

 真島、東城と背中合わせの立ち位置にするりと入り込み、東城の耳元で、




   真 島 「どやぁ? これ、なつかしいやろぉ?」



 と超得意げに言ってきたため、つい目元と口元だけでニッとする東城。

 ここからはハンニャマンも加わった共闘となる。


 (※東城が美涼を上手く守りつつ戦っていると、美涼は東城だけでなくハンニャマンをもアシストしてくれる)






○ピンク通り (夜)

 戦闘後。ピンク通りにおける神室町の不良たちを殲滅したところで、スマホが振動。


 出るなり、リクソンに言われる。




リクソンの声 「おい。その奇妙な仮面をかぶった男は誰だ?」

   東 城 「知らねえ」

       「覆面レスラー仲間とでも思われたかな」


リクソンの声 「何てクレイジーな街なんだ」

       「まあいい、なら今からそいつを倒せ」


   東 城 「……何だと?」


リクソンの声 「どうやらそいつはおまえと同じくらい腕が立つようだ」


       「せっかく助太刀してくれたのに、友達になれなくて残念だったな」




 そこで通話は終了。

 東城、しばらく考えたのち、真島に話しかける。




   東 城 「真島の兄さん」

   真 島 「ん? 何や?」


   東 城 「悪いが、あんたを叩きのめさなきゃならなくなった」




 すると真島、しばしの沈黙ののち、超ワクワク口調で答える。



   真 島 「さては、リクソンからの指示やな?」

   東 城 「そうだ」


   真 島 「そうか」

       「リクソンのボケ、なかなか気の利いた注文しよるやないか」




 と構えを取った真島。東城も構えを取る。



   真 島 「どこで見とるか分からんから、手ぇは抜かれへんなぁ?」

   東 城 「ああ、そう来るだろうと思ったぜ……」




 東城、背後の美涼を振り返らずに言う。



   東 城 「美涼、悪いが、もうしばらく待っててくれ」

   美 涼 「(楽しげに) ええ、お気遣いなく」




 ここで、「vs. ハンニャマン」の戦闘となる。





○ピンク通り (夜)

 戦闘後。


 真島、わざとらしく腹部を押さえてゼイゼイしたのち、




   真 島 「ほなまたな」



 と言うと、元気いっぱいですたこら去っていく。

 そこでスマホが鳴ったため、出る東城。




   東 城 「おい。次はどうする?」



 リクソン、苛立ちを押さえ込んだ声色で言う。



リクソンの声 「ビクトリーロードに参戦して、トーナメントに参加し、優勝しろ」



 それっきり、通話は向こうから切れる。

 東城、すぐに秋山に電話する。




  秋山の声 「はい、もしもし? どんな調子ですか?」

   東 城 「次は、賽の河原のトーナメントで優勝しろと言われた」

       「美涼を店に送ってから、すぐに行く」


  秋山の声 「分かりました、美涼ちゃんをお願いします」

       「あと――頑張ってください」


   東 城 「ああ。じゃあな」




 東城、電話を切る。


 それから改めて、美涼のほうに向き直る。




   東 城 「迷惑かけてすまなかったな」

   美 涼 「(にっこりし) お気になさらないでくださいな」


   東 城 「そうは言ってもな」


   美 涼 「お金で買えない体験はいつも大切にしてるんです」

       「お金で大抵のものが買えちゃう街ですから」




 そのため東城、口元だけでやや微笑む。



   東 城 「さすが、全日本夜蝶コンテストのグランプリだけはあるな」

   美 涼 「(何の邪気もなく) はい、ありがとうございます」




 東城、無言で、腕を組むために右腕を向ける。

 美涼、にっこりしてから軽く手をかけ、歩き出す。


 そして、楽しげに言う。




   美 涼 「さっきまでの大暴れを見ていて、7年前を思い出しちゃいました」

   東 城 「7年前?」


   美 涼 「ええ」

       「さっき、あの仮面の方を“真島の兄さん”って呼んでらっしゃいましたけど……」

       「あの方、真島組の組長さんなんじゃありません?」

   東 城 「……知り合いなのか?」

   美 涼 「私、7年前に、あの方が監督されたゲームに出演させていただいたんです」


       「神室町を舞台にしたゾンビゲームなんですけど、御存知ありません?」


   東 城 「ああ……聞いたことがあるような気はするな」


   美 涼 「嬉しい!」

       「あれに参加できたことも、本当にお金では買えない経験だったんです」


       「神室町をあげての大掛かりな撮影で……」

       「いろんな方と関われて、本当に楽しかったわ」


       「特に、この街で“伝説の極道”って言われてた人とも御一緒できて……」


   東 城 「(少しぎこちなく) そうか」




 美涼、その口調の変化にピンと来て、ハッとした顔になり、歩を止める。

 東城、やむなく立ち止まる。


 美涼、東城を見上げ、まさかという表情をしている。

 しばし東城をジッと見つめながら、本気で戸惑った様子。




   美 涼 「変ね……」

       「何だか、その……初めてお会いした気がしないわ」


   東 城 「気のせいだろう」




 東城にバッサリ切られたことで、美涼は少しの間ののち、諦める。



   美 涼 「そうですね」



 そして、自己嫌悪のような表情になり、独り言っぽく言う。



   美 涼 「嫌だわ、すごくベタなこと言っちゃって」

   東 城 「そういうのもいいさ」




 そうして2人、再び歩き出す。

 2人が向こうへと去ってゆきながら、暗転。






○エリーゼ前 (夜)

 美涼を送り届けた直後のエリーゼの前。ひとりで立つ東城、内心考える。




   東城M (よし。じゃ、賽の河原に行こう)



 ここから、「賽の河原に向かう」のミッションに入る。

 【そこへ着くまでに、不良やチンピラとの戦闘や、サブストーリーをこなす】






○賽の河原 (夜)

 賽の河原までやってきた東城、内心考える。




   東城M (よし、入るぞ)



 そして、中へ。

 ここから、「賽の河原の闘技場におけるトーナメントでの優勝」というミッションに入る。


 (※要は、リクソンは直接対決前に東城の体力を削るつもりで、いろいろ画策している)





○賽の河原・闘技場 (夜)

 (※トーナメントの最終戦の最中、相手の攻撃により、覆面の下半分が破れちぎれる)

 (※それが原因となり、次章以降ずっと、サングラスのみでの変装となる)

 トーナメントの優勝が確定したところで、次のシーンのムービーへと移行。








○東京空港・国際線の到着ロビー (夜)

 (※「東京空港」は羽田空港とほぼほぼ同じ空港の設定)


T「17日前  2017年12月11日 21:22」


 到着ロビーから出てきた人の群れの中に、コート&サングラス姿のローガンがいる。

 ローガン、かなり緊迫した面持ち。


 外へ向かっているところでスマホを取り出すと、すぐに出る。




  ローガン 「――見失っただと!?」

       「駄目だ、何とか見つけてくれ」

       「私もすぐに向かう」




 通話を切り、駆け出すローガン。






○東京空港・国際線の到着ロビー前の通路 (夜)

T「17日前  2017年12月11日 21:32」


 到着ロビー前の通路を歩く大勢の人々。

 その中に、サングラスをかけ、コートで深く身を包んだ風間譲二の姿がある。


 歩きながらスマホのメールチェックをした風間譲二、顔をしかめて呟く。




  風間譲二 「まずいな……」



 そして、暗転。







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