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四章 秋山編 急転

四章 秋山編 急転 (1)



○東都大病院・集中治療室の隣室 (未明)

T「18日前  2017年12月10日 04:32」


 集中治療室にいる庄司を、ガラス窓越しに隣室から見ている夏目と真島、若林と西田、冴島とヒクソン、秋山と伊達。


 夏目、庄司のほうを見たままで言う。




   夏 目 「俺のせいなんです」




 真島、夏目のほうを見る。




   真 島 「あぁん?」




 夏目、庄司のほうを見たまま言う。




   夏 目 「あいつは俺が拾たんです。あいつは俺とおるために極道の世界に入ったんです」


   真 島 「せやな。そないしたいんやろなっちゅうのが丸分かりやったから、ワシが盃やったんや」


       「けどそれが、何でおまえのせいっちゅう話になるんや?」


   夏 目 「俺は止めるべきやったんです」


       「そんなんせんでも友達付き合いはできる、俺とおるために入るような世界ちゃう……」


       「そう言うたったらよかったんです」


   真 島 「それは庄司が決めることや。おまえに言われた程度でやめる奴は最初から入ってへん」




 ここで夏目、真島に向き直る。



   夏 目 「俺が言うたら庄司は入りませんでした!」



 夏目に見据えられた真島、黙る。

 その真島に向け、なおも言い募る夏目。




   夏 目 「庄司は俺に逆らったことは一回もないんです!」

       「せやからもし俺が入るな言うてたら、庄司はこの世界には入らんかったんです!」


       「でも……俺は言わんかったんです」




 夏目、目を落とす。

 真島、無言で聞いている。




   夏 目 「言うたったらよかったんです。言うべきやったんです」

       「ほんだらこんなことにはならんかった……俺のせいなんです」




 しばしの沈黙ののち、真島が言う。



   真 島 「おまえ、ワシと一緒におりたいからこの世界に入ったんとちゃうんか?」

   夏 目 「……はい……」


   真 島 「それをワシが止めへんかったっちゅうて、おまえはワシを責めるんか?」




 夏目、驚いて顔を上げ、そして視線を落とす。



   夏 目 「いえ……」

   真 島 「庄司もおんなじや。おまえがそばにおらしてくれて嬉しかったんや」




 夏目、視線を落としたまま。



   真 島 「それをあかんことやったみたいに言うたら、庄司がびっくりしよるで」




 ここで真島、いつもの明るい調子になって言う。



   真 島 「せや、びっくりして目ぇ覚ましよるかもしれんから、でっかーい声で耳元で叫んだったらどや?」



 それで夏目、ほんのちょっとだけ笑ってしまい、困り笑顔のようなゆがんだ顔になる。

 真島、それを見て、ニッと笑う。




   真 島 「おまえの言うたとおり、庄司はおまえの言うことに一遍も逆らったことあれへん」

       「ほな、おまえが死ぬな言うてんから、絶対に死によれへんわ」


   夏 目 「……はい」


   真 島 「せやけど、庄司も超人ちゃうねんから、もうちょい時間やれや。しばらくゆっくり寝かしたろ。なぁ?」


   夏 目 「はい……」




 その様子を見ていた秋山、伊達に言う。



   秋 山 「出ましょうか」

   伊 達 「ああ」




 ここで暗転。





○東都大病院の外の公道 (未明)

 秋山と伊達、病院を出、連れ立って歩いているところ。


 伊達、溜息。




   伊 達 「辛いな。――まあ、あいつらの商売柄だから、俺がどうこう言うことじゃねえが……」

       「ただ、もともとあいつら2人は極道にゃ向いてねえ」


   秋 山 「ですね。夏目さんはただ真島さんを慕ってその世界に入り、庄司くんは夏目さんを慕って入っただけなんですから」


   伊 達 「ま、それを自業自得、自己責任と言っちまえばそれまでだがな」




 秋山、沈黙。




   伊 達 「サツカンの俺は、そう言うべきなんだろうけどな」




 秋山、なおも沈黙。




   伊 達 「でもな、何であいつらが……って思っちまうんだよ。――何でかな」


   秋 山 「その気持ち、分かりますよ」




 伊達と秋山、揃って深い溜息をつく。

 そこへ突如、不良たち6人が登場。ニヤニヤ顔で絡んでくる。 (※風間組事務所のビル前で夏目らに絡んだのと同じ集団)




   不良A 「こんばんはー、めんどくさいからズバリ言うけど、お金くださーい」



 仲間たちがゲラゲラ笑い転げる中、不良Aは振出式特殊警棒を伸ばして見せ、チラつかせる。



   不良A 「オッサンら、金だけは持ってんだろ? 出せよ、俺らが代わりに有意義に使ってやるからさ」

       「どうせあんたらが持ってたって、墓石がランクアップするだけじゃん」




 そこまでを黙って聞いていた秋山、隣の伊達に言う。



   秋 山 「どうします?」

   伊 達 「そりゃもちろん、お仕置きだろう」


   秋 山 「そうこなくっちゃ」




 そして2人して構えを取ると、不良たちが面白くてたまらなそうに笑い転げる。



   不良A 「おっ? なになにオッサンら、やる気なの? やめときなってー、無理っしょ、無理無理」



 すると秋山、やや改まって言う。



   秋 山 「せっかくだから、カッコつけさせてもらうとするかな」

   不良A 「ああ? 何だあ?」




 そこで秋山、ニッと笑う。



   秋 山 「運が悪かったんだよ、おまえらは」

   不良A 「――はああああ!? ふざけやがって!! ぶっ殺せ!!」




 ここで、「vs. 神室町の不良集団」の戦闘となる。





○東都大病院の外の公道 (未明)

 戦闘後。死屍累々の路上にて、秋山は苦笑い。




   秋 山 「ほんの少しだけ気が晴れましたよ」

   伊 達 「ああ、俺もだ」


   秋 山 「じゃ……帰りますか」


   伊 達 「そうだな。あいつを待たせてることだしな」




 そして2人、死屍累々を背に、歩み去っていく。


 ここで暗転。








○アメリカ・某所の室内

T「18日前  バージニア時間 2017年12月09日 15:35」


 情報機器がずらりと揃っているどこかの施設。


 正体不明の男が、沖縄県内の監視カメラ・防犯カメラの過去映像の全てから、何かを検索している状態。


 正体不明の男の姿は、情報機器その他によって上手く隠れており、全体像が掴めない。


 そのうち、ついに検索がヒット。


 ホテル裏の特別通用口から中へ入る遥とハルトの映像が、モニター画面に映し出される。


 正体不明の男、ニヤリとしているであろう声色で呟く。




正体不明の男 「Gotcha. (やったぞ)」





○沖縄・隠れ家ホテル・遥の部屋・ベッドルーム (明け方)

T「18日前  2017年12月10日 05:45」


 スペシャルルーム内のベッドルーム。ハルトはベッドでぐっすり眠っている。


 遥はその奥の洗面所にて顔を洗い終え、タオルで拭いたところ。






○沖縄・隠れ家ホテル・遥の部屋・リビングルーム (明け方)

 遥、リビングルームへやってくる。


 その物音と気配により、ソファーで眠っていた品田、飛び起きる。




   品 田 「えっ? なに?」

     遥 「ご、ごめんなさい、起こしちゃって……」


       「喉が渇いたから、こっちの冷蔵庫に入ってるお茶を飲もうと思って……」


   品 田 「あ、そう……。いま何時かな?」


     遥 「もうすぐ6時です」


   品 田 「うわお! 何だ、結構寝ちゃってんじゃん……。こりゃ秋山さんに叱られるな」




 と言うなり品田、両手で自身の両頬をパンパンと叩く。そして遥に向け、



   品 田 「ごめん、起こしてくれてありがとね。どうぞどうぞ、お茶飲んで」



 それで遥、困ったような笑顔になる。



     遥 「はい」



 そして遥、バーカウンターへと向かおうとする。

 その時いきなり、ガンガンガンガンと何かを叩き壊す轟音が鳴り響く。




   品 田 「何だ!?」



 品田がドアのほうを振り返った瞬間、叩き潰されたドアを蹴破り、スーツ&サングラス姿の賊が5人飛び込んでくる。


 (※賊5人は全員アジア人ではない)


 品田、ソファーから飛び起き、遥に指示。




   品 田 「部屋に戻って! パニックルームに入って警備員に連絡して!」

     遥 「はい!」




 遥、ダッシュでベッドルームへ。

 品田は賊を食い止めるため、ベッドルームへ向かう通路の前で立ち塞がる。




   品 田 「あんたら、運が悪かったね」



 すると、賊のボス格(スーツ男Cと表記)、カタコト発音の日本語で聞き返す。



 スーツ男C 「なに?」

   品 田 「今からあんたらはコテンパンにやられて、俺が将来子供に自慢するための武勇伝になるんだよ」




 スーツ男C、英語で号令。



 スーツ男C 「Take’em out ! (やれ!)」


 

 そこでいよいよ戦闘へ――となり、品田は構えを取る。





○沖縄・隠れ家ホテル・遥の部屋・ベッドルーム内のパニックルーム (明け方)

 遥、眠るハルトを抱きかかえてベッドルーム奥のパニックルームに入り込み、専用電話から緊急電話をしているところ。




     遥 「早く来て! 5人の外国人がドアを破って部屋に入ってきたの!」

  フロント 「お待ちください、すぐに警備員を――」


     遥 「警察も呼んで!! すぐに!!」




 その電話を切ったのち、遥は思い詰めた様子で、スマホでどこかへかける。






○スカイファイナンス (明け方)

 ソファーでゴロ寝している秋山。


 テーブルのスマホが振動したため、手だけを伸ばし、手探りし、何とかスマホを掴み取る。


 誰からかも確かめずに通話にし、耳元に近付ける。




   秋 山 「はいもしもし……」

   遥の声 「秋山さん!! 助けて!!」




 秋山、ソファーの上に飛び起きて座り直す。



   秋 山 「どうしたの? 何かあった?」

   遥の声 「今、部屋に5人の外国人が押し込んできたんです」


       「私とハルトはパニックルームに逃げたんですけど、品田さんが外で戦ってて……」


       「もう緊急電話はしたんですけど……」


   秋 山 「そうか、分かった。じゃ、いったん切るから、心配しないで。何とかするから、じっとしててね」


   遥の声 「は、はい」




 そして通話を切った秋山、アドレスを必死に操作。




   秋 山 「くそっ、間に合ってくれよ……」





○沖縄・隠れ家ホテル・遥の部屋・リビングルーム (明け方)

 品田に殴られて吹っ飛んだ賊の1人、床に転がる。


 ここまでの戦闘で品田が圧勝、賊の全員がボロボロ――というのが一目瞭然の状態にある。


 そこでスーツ男C、いきなり銃を抜き、品田に向けて構える。




 スーツ男C 「Damn it ! (くそったれ!)」

       「All right, I’m gonna blow you away ! (もういい、撃ち殺してやる!)」


   品 田 「えっ!? いや、ピストルは卑怯じゃない!?」


       「てか、ここ日本だし、すぐおまわりさん来ちゃうよ!?」




 しかし、ヘロヘロになっていた手下4人も銃を出す。



 スーツ男C 「Shoot’em ! (撃て!)」



 その号令と同時に全員が撃ってきたため、品田は慌ててソファー(部屋の中央辺りにある)の背後に退避。

 品田、ソファーにもたれる格好で、考えを巡らせる。




   品 田 「夏目さんはよけたって言ってたけど……よけた後どうすんだよ……」



 と呟きながら周囲を見回した品田、武器になりそうなものが何もないことを知り、



   品 田 「くそっ!」



 と、両手を床に叩きつける。

 その反動で体がソファーにぶつかったことにより、もたれているソファーが少し揺れる。


 いったん銃撃が静まる。 (※ここからカメラは、スーツ男Cをメインに撮影することになる)


 スーツ男Cに手の振りで指示されたため、手下4人はその場に待機、銃を下ろす。


 スーツ男Cだけが銃を構えたまま、ゆっくりとソファーに向けて歩いてゆく。


 スーツ男C、からかうような口ぶりで言う。




 スーツ男C 「What’s the matter ? How you doin’ ? (どうかしたか? 調子はどうだ?)」




 そうしてギリギリまで近付いたのち、



 スーツ男C 「Drop dead ! (くたばれ!)」



 とソファーの後ろの空間に向けて銃を構えたスーツ男Cの目には、品田がソファーのかなり向こう端にいるのが見える。

 (※この時点で、スーツ男Cのメイン撮影は解除)


 その瞬間、




   品 田 「おらあああああ!!」



 と気合一発、品田はソファーそのものをぶん回して、スーツ男Cをクリーンヒット。

 スーツ男Cは部屋の端っこまで吹っ飛んでいき、壁にぶつかって落下、そこで気絶。


 しかし、それにより手下4人の銃口が全て品田に向いたため、絶体絶命――


 という一瞬間、銃声がパンパンパンパンと連続して鳴る。


 同時に、次々と手下4人がみな手元を撃たれ、全員手を押さえながらその場にうずくまる。




   品 田 「えっ!?」



 品田が入口のほうを見やると、そこには拳銃を構えている男たちが4人ずらりと並んでいる。

 その全員が日本人であり、正規の訓練を受けた人間特有の姿勢を保っている。




   品 田 「えっ……何これ……」



 と戸惑っているところへ、拳銃を構える4人の後ろから、部屋の中へと入ってきたのは田宮。



   田 宮 「間一髪だったな。――怪我はないか?」

   品 田 「……はい……て言うか……えっ、まさか……」


   田 宮 「宇佐美遥とハルトの親子は?」


   品 田 「あっ……ベッドルームです。――遥ちゃん! ハルト! もう大丈夫だよ!」




 品田が大声で叫ぶ間にも、田宮のSP4人によって、賊はみな後ろ手に簡易手錠(結束バンド的なもの)で拘束されている。

 ベッドルームから出てきた遥とハルト(抱っこされた状態でうとうとしている)の無事な姿を見て、田宮は頷く。




   田 宮 「よし。ここの始末は地元の警察に任せて、我々は屋上へ上がろう。すぐヘリが来る」

   品 田 「えっ? えっ? いや、意味が分かんないんですけど――」


   田 宮 「秋山から頼まれたんだ。おまえさんがた3人を保護してくれってな」




 そこで遥、説明。




     遥 「緊急電話の後、秋山さんにも電話しちゃったんです」

       「そしたら「何とかするからじっとしてて」って言われて……」


   田 宮 「そうだ。あいつは人使いが荒いな。まあいい、乗りかかった船だ。屋上に行くぞ」




 と手招きしたため、遥はハルトを抱いたままドアのほうへ駆け出す。

 そのため品田も、その後を追う。







○沖縄・隠れ家ホテル・廊下 (明け方)

 SPに前後を挟まれる形で廊下を走っている田宮、遥とハルト、品田。


 品田、走りながら、




   品 田 「秋山さんの人脈すっげ~~!!」



 と、ただただ驚嘆。






○沖縄・隠れ家ホテル・屋上の遠景 (明け方)

 ホテルの屋上から、遥とハルト、品田、田宮、SP4人を乗せたヘリが飛び立っていく。


 そこで暗転。








○ニューセレナ (明け方)

T「18日前  2017年12月10日 06:03」


 ニューセレナのソファー席にて、秋山がスマホで通話中。そばには東城と伊達もいる。




   秋 山 「ええ、ホントありがとうございました」

  田宮の声 「じゃ、替わってほしいそうだから替わるぞ」


   秋 山 「はい」


   遥の声 「秋山さん? 私です」


   秋 山 「あっ、遥ちゃん? よかった、無事で」




 ソファー席にいる東城と伊達、顔を見合わせてホッとした様子。



   遥の声 「はい、本当にありがとうございました」

       「でもびっくりしました、秋山さんが田宮総理とお知り合いだったなんて」


   秋 山 「うん、まあ、ちょっと訳アリでね」


       「とにかく今後は、君たち二人を彼に保護してもらおうと思うんだ」


       「それ以上に安全なところはないからね」


   遥の声 「分かりました。私たち、本当にお世話になっちゃって……」


   秋 山 「いいからいいから、もうそういうのは言いっこナシね」


       「そうだ、品田くんに「さすがだね」って言っといてくれるかな? さっき言い忘れちゃったからさ」


   遥の声 「(笑って) はい、分かりました」


   秋 山 「それじゃ、また」


   遥の声 「はい、失礼します」




 そこで通話は終了。



   東 城 「無事なんだな?」

   秋 山 「はい、三人とも」


   伊 達 「そうか! いや、よかった、肝が冷えたぜ」


   秋 山 「実際、間一髪だったらしいです。品田くん、よく頑張ってくれましたよ」


   東 城 「俺からも礼を言いたいところだが……」


   秋 山 「東城さんの分も、俺がたっぷり御馳走を振舞っておきますよ」


       「とにかく、これでハルト君と遥ちゃんは安全です」


   伊 達 「そりゃ、国のトップが保護してくれるほど安全なことはねえだろうな」


   秋 山 「ええ。これからすぐチャーター機で東京に戻って、その後は首相直轄の要人用シェルターに匿ってくれるそうです」


       「敵もさすがにそこまでは追ってこれませんよ。そこにいると分かったところで侵入できないんですから」




 東城、ホッとした様子。




   東 城 「つまり、これで俺たちは大吾のほうに集中できるわけだな」

   秋 山 「はい」




 そこで伊達、大あくび。



   伊 達 「じゃ……悪いが、もう一眠りさせてもらっていいか?」

   秋 山 「ええ、どうぞどうぞ。御老体にムチ打たせちゃってすいません」


   伊 達 「言ってろ、バカ。おまえだっていつかこの年になるんだからな」




 そうして伊達が奥に引っ込むのを見て、秋山も立ち上がる。




   秋 山 「伊達さんにはあんなこと言いましたけど……。俺ももう一度休ませてもらいますよ」

   東 城 「ああ、そうしてくれ。――秋山」


   秋 山 「はい?」


   東 城 「本当にありがとうな」




 秋山、改まって礼を言われたことで、困ったような笑みを浮かべる。



   秋 山 「なに言ってんですか、今さら水臭いですよ。じゃ、何かあったら電話か、直接上に来てください」

   東 城 「ああ、分かってる」




 秋山、非常階段に続く裏口のほうから外に出る。





〇ニューセレナ・非常階段の外

 踊り場に出てきた秋山、ハ~~ッと安堵の深い溜息をつく。


 それから煙草を出し、火をつける。


 それを一口吸い、内心考える。




   秋山M (それにしても……。リクソンはなぜ、またハルト君を狙ったんだ?)

       (100億は既に堂島さんの身代金として要求し直されてる。もうハルト君の身柄は必要ないはずだ)


       (いったい何がどうなってるんだ?)


       (夏目さんが言ってたことからすると、リクソンは例の錦山さんとは手を組んでいない)


       (だから、桐生一馬が生きている事実を、錦山さんから聞くチャンスはない)


       (つまり、突如東城さんへの復讐計画を練った結果、ハルト君を再び拉致しようとした――って可能性もあり得ないわけだ)


       (なら考えられる状況としては……堂島さんがリクソンの許から脱出したから、とか?)


       (でもそれなら、いくら庄司くんがあんな状況とは言え、夏目さんから連絡があるだろう)




 秋山、ふと、残り半分ほどになっているタバコの箱の中を見て、さらに考える。



   秋山M (そうだ、もうあと1箱しかないんだっけ)

       (しょうがない、ヘンに目も冴えちゃったし、買ってくるか……)




 秋山、神室町へと出ることになる。

 【その途中で、不良やチンピラとの戦闘や、サブストーリーに巻き込まれる】






○天下一通り・スカイファイナンスが入るビル前 (夜)

 スカイファイナンスが入るビルまで戻ってきた秋山、中に入る。


 ここで長い暗転。






四章 秋山編 急転 (2)



○スカイファイナンス (朝)

 もやもやしている視界の中、声がだんだん近付いてくる。




     花 「――長! 社長!」



 秋山、無理矢理に目を開ける。

 すぐそばで仁王立ちになっているのは、花。




     花 「もう! そろそろ起きてくださいよぉ! 掃除機かけられないし、お客さんです!」

   秋 山 「……お客さん?」




 秋山、寝返りを打ち、向かいのソファーのほうを向いたことで、そこに座っている品田と目が合う。

 引きの映像になり、ここがスカイファイナンスの応接スペースであることが分かる。


T「18日前  2017年12月10日 09:30」


 しばしの沈黙ののち、秋山から言う。




   秋 山 「……君、何でここにいるの?」

   品 田 「何でじゃないでしょ~~! ハルト君と遥ちゃんはシェルター行きなんですよ!?」


       「なら、そこに俺がいたってしょうがないじゃないですか! あっちには本職のSPさんもいるし!」


   秋 山 「ああ……そっか。そりゃそうだよね」




 と体を起こす秋山に、品田はなおも説明。



   品 田 「だから、こっちに来たんですよ。空港から名古屋か神室町かだったら、そりゃこっちでしょ」

   秋 山 「そうだったのか……。君、なかなかいいとこあるじゃない」


   品 田 「あざっす! 俺、カッコいい親父になろうって決めてるんで!」


   秋 山 「……ちょっと待って、こないだプロポーズ成功したとこだよね? じゃ……おめでた婚?」


   品 田 「そんなわけないでしょ! これから頑張るんです!」


   秋 山 「ああ、そう……。それで親父になる覚悟ってのは、かなり早すぎる気もするけど……」


       「まあ、でも、いいことだよ。うん」


   品 田 「はい! 俺、絶対カッコいい親父になってみせますから!」


   秋 山 「(独り言として呟く) いるんだよね、自分からフラグ立てて回っても絶対死なないタイプ……」


   品 田 「ん? 何か言いました?」


   秋 山 「いや、何でもない」




 そして秋山、内心考える。



   秋山M (こりゃ、ニューセレナには行けないな……)



 そこで暗転。






○神室町・牛丼屋 (※天下一通りから入って突き当たりの牛丼屋)

 秋山と品田、牛丼屋で朝食中。




   秋 山 「あれだけ大活躍したんだから、もっと豪華な朝食をリクエストしてくれてもよかったのに」

       「君、欲ないね」


   品 田 「えっ! いま俺、すげえ豪華な朝食いただいてんですけど……」




 テーブルに並ぶ品田の朝食は、その牛丼屋においてのサイドメニューやトッピングをほぼ制覇している状態。


 そんな品田の反応に、秋山は「この人ホント憎めないよね」という笑みを浮かべる。


 その時、店内に入ってきたのは、龍司。




   秋 山 「あれっ、郷田さん。おはようございます」


   龍 司 「ああ、秋山はん、おはようございます」


   秋 山 「朝食ですか?」


   龍 司 「はあ、仕込みが終わったんで」


   秋 山 「そりゃお疲れ様です」


   龍 司 「ほな」




 龍司、券売機へと向かう。

 品田、秋山に尋ねる。




   品 田 「お知り合いですか?」

   秋 山 「うん、神室町で人気のたこ焼き屋の――何だろ、一番弟子さんかな?」


       「今は病気の大将の代わりに店を切り盛りしてるよ」


   品 田 「たこ焼きかぁ、いいっすね」


   秋 山 「まだ店は開いてないけど、そのうちタイミングが合ったら御馳走するよ」


   品 田 「あざっす!」




 そこで暗転。








○神室町・天下一通り

 歩きながら、昨夜のスターダストでの一件を秋山から聞かされた品田、沈痛そう。




   品 田 「そうだったんですか……。庄司くん、心配ですね」


   秋 山 「うん。でも、きっと大丈夫――とは思うんだけどね」


   品 田 「そうなんですか? 医学的に何か勝算でも?」


   秋 山 「俺は医学のことなんか分からないよ」


       「ただ、もし本当にヤバかったらだよ?」


       「夏目さんと真島さんの驚異の勘がモノを言っちゃって、もっと深刻な空気になってるんじゃないかと思うんだよね」


   品 田 「なるほど。そりゃそうですね」




 品田、溜息をつく。



   品 田 「それにしても、世界的に暗躍してる武器密売組織かぁ……」

       「そんなのが相手だなんて想像もしませんでしたよ」


   秋 山 「いや、それがさ。結局そうなのかどうか、ちょっと微妙なんだよね」


   品 田 「えっ? いや、だって……」


       「リクソンって奴の父親がブラックマンデーのボスだったから、その敵討ちをしようとしてるって話なんでしょ?」


       「で、兵隊をいっぱい引き連れてるなら、その全員がブラックマンデーのメンバーってことじゃないんですか?」


   秋 山 「リクソンは、自分がブラックマンデーだなんて一言も言ってないんだよ」


   品 田 「――えっ! そうなんですか?」


   秋 山 「うん。彼は今現在、堂島さんを拉致していて、夏目さんを殺そうと狙っている」


       「で、それは父親の敵討ちのため……。そこまでが彼の口から明かされた事実なんだ」


       「でも、リクソンの動機は理解できるとしてもさ。ブラックマンデーがそれに協力してくれるもんかな?」


   品 田 「……してくれませんかね?」


   秋 山 「ブラックマンデーってのは武器密売組織だ。ヤクザでもマフィアでもない」


       「ボスのために組織あげての敵討ちなんて概念、持ち合わせてるとは思えないんだ」


       「まして、ボスがやられてから8年も経ってるし」


   品 田 「リクソンが復讐のために、8年かけて組織の中でのし上がってボスになったって可能性はないんですか?」


   秋 山 「弟のヒクソン君によると、リクソンは今年で33歳なんだよ」


       「成績優秀で飛び級してたとは言え、8年前はまだ大学院生でね」


       「6年前から外交官になって、2年前から在沖(ざいちゅう)米国領事館の副領事をしてたそうだ」


   品 田 「それで沖縄から動けなかったんですか!」


   秋 山 「そうみたい。もっとも、今はもうキレちゃってるから関係なくなっちゃったみたいだけどね」


       「――それとも、土日だからかな」


   品 田 「あ、そっか……」


   秋 山 「とにかく、いくらリクソンが切れ者でもさ」


       「その若さで、まして外交官なんて激務をこなしながら、ブラックマンデーの中でトップまで上り詰めた――ってのはね」


       「ちょっと現実的じゃないと思うわけ」


   品 田 「ってことは、リクソンはブラックマンデーには関係なく、ただ個人的に敵討ちしようとしてるってことなんですか?」


   秋 山 「多分ね」


       「で、おそらくは沖縄の米軍基地内に手下か仲間がいるはずってことで、いま風間さんと田宮さんが裏から探ってくれてるよ」


   品 田 「そっすか……。どっちにしろ、話が何てえか、非日常すぎて……」




 またも溜息をつく品田の隣で、秋山は内心だけで考える。




   秋山M (それに、例の錦山さん……。彼が今回の事件に絡んでるのは間違いない)

       (彼は100億要求のことを知ってたんだから)




 その時、2人の正面に向かって歩いてくる男が、まだ遠くにいるにもかかわらず視界に入る。

 周囲の人間がその男を見た途端、サッと身を引いて距離を取るため、その男は誰にも阻まれず悠々と道のど真ん中を歩いている。


 彼との距離が近付くにつれ、彼が明らかに極道であることと、途轍もないオーラを放っていることが分かる。


 その顔がちゃんと確認できたところで、秋山はビックリ。




   秋 山 「えっ、何で!?」


   品 田 「どうしました?」


   秋 山 「あの人……渡瀬さんだ」


   品 田 「渡瀬さん? って、確か近江連合の――えっ!?」




 そこで品田、気付く。



   品 田 「あの人! 前に病院で会った人だ!」



 その間にも近付いてきていた渡瀬勝。2人に向けニッと笑うと、その正面で立ち止まる。

 そのため、秋山と品田も立ち止まる。




   渡 瀬 「久しぶりやな、秋山はん」

   秋 山 「あんた……。どうして神室町に?」


   渡 瀬 「心配せんでええ、プライベートで来ただけや」




 ここで渡瀬の顔の大写しになる。

 画面が一時停止し、画面下部に「七代目近江連合 会長代行 渡瀬勝」の表示。一時停止が解除。




   渡 瀬 「ずっと御挨拶したいと思とった人が、たまたま神室町にいてはってな」

       「――そんな顔すなて、大丈夫や」


   秋 山 「……これからどこへ行くんですか?」


   渡 瀬 「あそこの牛丼屋や。そこにおるて店の子ぉに言われてな」




 渡瀬が指差したのは、秋山と品田が出てきた店。



   秋 山 「店の子って……」

   渡 瀬 「たこ三昧ゆうてな、何や神室町ではえらい有名な人気店らしいやないか?」


       「前に来た時は何も考えんと通り過ぎてしもてな」


       「まさかそないなとこにいてはるとは思わんもんやさかい……」


   秋 山 「あんた……。まさか、郷田龍司に会いに来たんですか?」




 すると渡瀬、厳しい顔つきになる。



   渡 瀬 「秋山はん、口の利き方に気ぃ付けや」

       「よそで言う時は勝手にしたらええが、ワシの前でその名前言う時は――」


       「“さん”つけなあかんで」




 そして歩き出した渡瀬は、秋山の真横に来たところでまた立ち止まる。



   渡 瀬 「あんた、桐生はんが生きとるっちゅう噂、知っとるか?」

   秋 山 「えっ?」




 驚いた秋山、それでも必要以上には顔色に出さず、そちらを振り返る。

 渡瀬、秋山の顔色を見ながら続ける。




   渡 瀬 「桐生はんがほんまは生きとって、神室町に帰ってきとる――っちゅう噂や」

   秋 山 「……冗談でしょ?」


   渡 瀬 「ワシが冗談でこないなこと言うと思うんか?」


   秋 山 「いやあ、でもまさかそんなことって……」




 秋山の内心を見透かし切れなかった渡瀬、ニッと笑う。



   渡 瀬 「あんた、さすが神室町で金貸ししとるだけあって正味見せんな?」

       「ええで、そういうプロフェッショナルの精神は好っきや」




 再び歩き出した渡瀬に、秋山は何か言おうとはするものの、何を言っていいか分からず口ごもったまま。

 その間に渡瀬、歩み去る。


 (※渡瀬は元々桐生の死を信じていないため、この機会に本題とは別のカマをかけてみた状態)




   品 田 「はぁ~~。やっぱてっぺんの人ってのは、オーラが違うもんですね」




 自分の友達が東城会会長たることを失念している品田。


 しかし秋山はそれに突っ込むこともなく、まだ深く考え込んでいる。




   品 田 「秋山さん? ――あの人が言ったこと、気にしてんですか?」

   秋 山 「いや……だって、そりゃそうでしょ?」


   品 田 「そんな噂、秋山さんは聞いたことあるんですか?」


   秋 山 「いや……ないね」


   品 田 「なら、からかっただけなんじゃないすか? それとも、これからそんな噂を聞くことになるのかな」


   秋 山 「そっか……そうかもな」




 秋山、話題を変えるために、わざと口調を軽くする。




   秋 山 「ま、気にしたってしょうがないか。それより(と時計を見て)、もう面会できる時間だ」

   品 田 「はい! じゃ、さっそく行きましょう!」


   秋 山 「うん。じゃ、タクシーを拾おう」




 そのとき秋山、ふとスマホを取り出す。振動する画面を確認し、すぐに出る。



   秋 山 「もしもし、花ちゃん? 何かあった?」

   花の声 「(戸惑った様子で) はい、あの、すぐマリンバさんに行ってください」


   秋 山 「マリンバ? ってあの、うちで金貸してる喫茶店の? 何でまた?」


   花の声 「それが……。ついさっきかかってきた電話が、「マリンバの内野です、助けてください」――」


       「そう言ったきり、切れちゃったんです。こっちからかけ直しても繋がらないし、心配で……」


   秋 山 「そっか、分かった。じゃ、すぐに行くよ」


   花の声 「よかった! じゃ、お願いします」


   秋 山 「はいはい、じゃあね」




 そこまでで通話は終了。

 秋山、スマホをしまいながら呟く。




   秋 山 「参ったな。ちょいとヤボ用が入っちゃった」

   品 田 「えっ、そうなんすか? じゃ、俺ひとりで……」


   秋 山 「いや、悪いけど、タクシー乗り場あたりで待っててくれる? すぐ済ませて追いつくからさ」


   品 田 「分かりました。じゃ、お先に」


   秋 山 「うん、また後で」




 そして品田、タクシー乗り場の方角へと立ち去る。

 秋山、溜息をつき、内心考える。




   秋山M (やれやれ。さっさと済ませて追いかけよう)



 そして、「マリンバに向かえ」のミッションに入る。

 (※そのミッションがスタートする前に、以降の渡瀬&龍司の一幕が入る)








○神室町・牛丼屋の前

 牛丼屋から龍司が出てきたところで、待ち受けていたのは渡瀬。


 龍司は渡瀬をチラッと見、脇を通り過ぎようと、向かう方向をやや変える。


 が、その一瞬前に渡瀬が極道式の御辞儀をしたため、足を止める。


 渡瀬、頭を下げたまま挨拶。




   渡 瀬 「お初にお目にかかります。自分は近江連合で会長代行をやらしてもろとる、渡瀬勝いうモンです」

       「以後、どうぞお見知り置きを」


   龍 司 「そうか。そないなもん、もうワシには関係ない話や」




 それっきり脇を通り過ぎてゆく龍司。

 渡瀬、体を起こし、龍司の背に向けて言う。




   渡 瀬 「関西の龍――この二つ名、郷田はんはお嫌いでしたな」



 龍司、少し行った先で立ち止まり、ゆっくり振り返る。



   龍 司 「言うたやろ。もうワシには関係ない話やて」

   渡 瀬 「あんたには気に食わん名ぁかもしれんが、関西の龍っちゅうのは関西においては――」


       「近江連合においては、未だに神聖にして侵すべからざる伝説の存在や」


       「その伝説に、ワシはある御相談をしに来ましてん。どうか、聞いてもらわれへんやろか」




 また極道式に頭を下げた渡瀬に、イヤそうな顔をする龍司。



   龍 司 「もうそれはやめえ。ワシはカタギや。ちゃんと立てや」

   渡 瀬 「はい」




 直立不動の姿勢となった渡瀬に、龍司は改めて話しかける。



   龍 司 「渡瀬ゆうたな」

   渡 瀬 「はい」


   龍 司 「噂は聞いとるで。しっかり近江を治めとるっちゅうてな」


   渡 瀬 「そら光栄です」


   龍 司 「とにかく、場所変えよか。ここは人目に付きすぎる」


   渡 瀬 「はい。どこなりとお供さしてもらいます」




 あくまで慇懃な姿勢を崩さない渡瀬。

 龍司、少しばかり呆れた様子。




   龍 司 「ほな行こか」

   渡 瀬 「おおきに」




 歩き出した龍司の後について、渡瀬も歩き出す。

 そこで暗転。






○神室町・天下一通り

 品田が去り、秋山だけが残された状態。




   秋山M (よし、マリンバに向かおう)



 ここから、マリンバに向かうことになる。

 【マリンバまでの間に、戦闘やサブストーリーに巻き込まれる】






○チャンピオン街・マリンバの外

 マリンバまでやってた秋山、中に入る。






○チャンピオン街・マリンバ

 マリンバに入ると、東城会系の若いヤクザ3人と、その3人に詰め寄られている店長・内野が、一斉にこちらを振り返る。




   内 野 「あっ! 秋山さん、ホントすいません。いつも面倒ばっかりかけて……」

   秋 山 「いや、それはいいんだけど。で、今って、どういう状況?」




 すると、正面に立っているヤクザB、ホッとして気が抜けたように、粋がった調子で秋山のほうに進み出る。



  ヤクザB 「こっちは滞納されちまってる防犯代を徴収に来てるだけだ。にしても……」



 と秋山の風体を見回し、馬鹿にしたように笑うと、



  ヤクザB 「こいつが(と内野のほうを顎でしゃくり)、神室町でも有名な強い人を呼んだ――」

       「なんて言いやがるから、てっきり例の亡霊でも来るかと思ったんだが……」


       「何のこたあねえ、ただのオッサンじゃねえか」


   秋 山 「亡霊?」


  ヤクザB 「ま、今さら堂島の龍が化けて出たところで、俺らの敵じゃねえけどな」


   秋 山 「何だって?」




 「堂島の龍」というワードに驚く秋山。


 ヤクザ3人、秋山のリアクションなど無視で、構える。




  ヤクザB 「こんな店にノコノコ現れたのが運のツキだ」

       「あんたにゃ気の毒だが、こっちは誰が来やがるかと気合が入ってた分、
誰かをボコボコにしなきゃ収まらなくてな」

   秋 山 「へえ。でも、ひょっとすると気の毒なのは、こっちじゃないかもね」


  ヤクザB 「てめえ、余裕ぶっこいてんじゃねえぞ! (背後の手下に) やっちまえ!」




 ここで、「vs. ヤクザ」の戦闘となる。





○チャンピオン街・マリンバ

 戦闘後。ヤクザ3人はボロボロ。




  ヤクザB 「くそっ……どういうオッサンだよ……」

   秋 山 「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」


  ヤクザB 「ああ?」


   秋 山 「さっき言ってた、亡霊って何? 堂島の龍とか言ってたけど」


  ヤクザB 「てめえ、神室町にいて、堂島の龍を知らねえのか?」


   秋 山 「いや、知ってるけど。でも、もう桐生さんは亡くなったでしょ?」




 ヤクザB、鼻で笑う。



  ヤクザB 「だよな。でも、その桐生一馬を見た――って言ってる奴がいるんだよ」

   秋 山 「(冷静を装い) 見た? 誰が?」


  ヤクザB 「うちの叔父貴だよ」




 するとヤクザBの後ろから、ヤクザCが押し殺した声で言う。



  ヤクザC 「兄貴、もうその話は」

  ヤクザB 「ん? ――ああ、そうだな。まあ、どうせ酔っ払いの言うことだ」




 ヤクザB、内野を振り返ると、



  ヤクザB 「あんた、このオッサン(と秋山のほうを顎でしゃくり)と仲いいのか?」

   内 野 「は、はい、まあ……」


  ヤクザB 「そうか、そりゃ運がよかったな。――じゃあな」




 とヤクザB、さっさと店を出ていってしまう。それを残り2人も追って出てゆく。

 秋山、深く考え込んでしまう。そこへ内野が詰め寄り、平身低頭。




   内 野 「秋山さん! ホントにありがとうございました!」

   秋 山 「ん? ――ああ、いやいや、いいのいいの」


   内 野 「あの、今月で最後になるお金も、ちゃんとお返しできますから!」


   秋 山 「ああ、そうか! 今月で最後だったか、そりゃよかった。長かったけど、頑張ったね」


   内 野 「はい! これも全て、秋山さんのおかげです!」


   秋 山 「何言ってんの、君の頑張りのおかげだよ」


   内 野 「いえ、本当にありがとうございました! これからも俺、頑張っていきますから!」


   秋 山 「分かってる分かってる、君の頑張りはちゃんと見てきてるんだから」




 秋山、感動しきりの内野を、宥めるようにして落ち着かせようとする。

 そうしながらも、さっきのことを思い返しての不審そうな表情が、一瞬覗く。






○神室町・タクシー乗り場

 秋山、タクシー乗り場にやってくる。


 品田、笑顔で迎える。




   品 田 「あっ、秋山さん! もう用は済んだんですか?」

   秋 山 「うん、まあ……」




 と言葉を濁したのち、気持ちを切り替えて言う。



   秋 山  「待たせて悪かったね。じゃ、行こうか」

   品 田  「はい!」




 そして2人、タクシーへと乗り込む。

 そこで暗転。








○東都大病院・庄司の病室の外廊下

 病院内のかなり広々とした廊下の、ドア近く。 (※庄司は現在、真島が使っていたゴージャスな病室に入っている)


 廊下にいる秋山、スマホで通話中。




   秋 山 「ええ。とにかくICUは出たそうです」

  伊達の声 「そうか! そりゃよかった」


   秋 山 「でも、まだ予断は許さない状態らしくて。夏目さんがずっとついてますよ」


  伊達の声 「そうか……」


   秋 山 「ところで、ちょっとだけ東城さんに代わってもらえますか?」


  伊達の声 「うん? 分かった、いま代わる」




 しばらくして、向こうに東城が出る。



  東城の声 「秋山。どうした?」

   秋 山 「あの、唐突にこんなこと聞いて何なんですけど」


       「こっち来てから外で覆面取ったのって、ヒルズの屋上でだけですよね?」


  東城の声 「……もちろんだ。それがどうした?」


   秋 山 「いや、いいんです。一応確認したかっただけですから」


  東城の声 「そうか」


   秋 山 「じゃ、伊達さんにケータイ返しといてください」


  東城の声 「分かった」




 そこで通話は終了。

 それからしばらく考えた秋山。




   秋 山 「聞いてみるか」



 と独り言を言ってから、誰かに電話する。


 出たのは花。




   花の声 「社長! どうしたんですか?」


   秋 山 「うん、実はちょっと聞きたいことがあってさ。君、神室町のことなら何でも知ってるでしょ?」


   花の声 「当然です! そうでなきゃ社長の秘書は務まりませんから!」


   秋 山 「あ~~、花ちゃんのそういうとこ、ホント好きだなぁ~~」


   花の声 「――えっ!?」




 その花の動揺には気付かず、秋山、さっそく本題に入る。




   秋 山 「最近、桐生さんのことでヘンな噂、聞いてない?」


   花の声 「えっ。――社長も聞いたんですか?」




 それで秋山、驚く。



   秋 山 「じゃ、花ちゃんも聞いてるの?」


   花の声 「はい……。東城会の四代目会長だった桐生さんが、生きて神室町に戻ってきてるって噂ですよね?」


   秋 山 「そんな噂、ホントに流れてんだ!」


   花の声 「はい……。でも、あまりにも馬鹿々々しいし……」


       「だから、新手の都市伝説なのかなって思ってたんです」


       「堂島の龍のカリスマを忘れられない人たちが広めてるのかなって……」


       「社長、何か心当たりあるんですか?」


   秋 山 「心当たり? いや、全然ないけど?」


   花の声 「……社長がそういう言い方した時って、絶対ウソですよね?」


   秋 山 「花ちゃん。俺ってそんなに信用ない?」


   花の声 「あるわけないじゃないですかぁ! 胸に手を当てて日頃の行いをよく考えてみてくださいよ!」


   秋 山 「うん、まあ、信用はないか……。ところで花ちゃん、君がその噂を最初に聞いたのはいつ?」


   花の声 「えっと……12月1日です」



 

 そのため秋山、ヘンな顔になる。



   秋 山 「えっ。ちょっと待って、それって……もう1週間以上も前じゃない?」

   花の声 「はい。9日前です」


   秋 山 「……それでよくそんなにハッキリ日付覚えてるね?」


   花の声 「えっ。……もしかして疑ってます?」


   秋 山 「いや、そういうわけじゃないけど……」




 すると花、恨みがましい口調で叫ぶ。



   花の声 「社長はとっっっくに忘れてるかもしれませんけど!」

       「その日は社長の代わりに私が集金に行かなきゃいけなかったんです!」


       「その帰り道で聞いたんですよ! 絶対間違いないです!」


   秋 山 「そ、そっか、ごめんね、そりゃ悪かったね。で――それって、どんな感じで聞いたの?」


   花の声 「別に、普通ですよ。どこかのチンピラ同士で――」


       「「うちの親父が生きてる堂島の龍を見たって言い出してさ」」


       「「マジかよ、ボケてんじゃね?」」


       「とか、そんな感じで話してるのをたまたま聞いたんです」


   秋 山 「それが9日前か……」


   花の声 「絶対に間違えてませんから!」


   秋 山 「もちろんもちろん、信用してますよ。じゃ、ありがとね、花ちゃん」


   花の声 「社長! 情報料として――」




 秋山が通話を切るまでの間にそこまでが聞こえ、そこで通話は終了。

 秋山、内心考える。




   秋山M (9日前……。東城さんが神室町入りしたのは昨日――と言うより、日付で言えば今日だ)

       (つまり、噂は東城さんが実際に神室町入りする前からあったってことになる)


       (どういうことだ?)


       (花ちゃんの言ったとおり、東城さんのファンが都市伝説を拡散してる――それだけのことか?)


       (渡瀬さんが言ってたのは、この噂のことなのか?)




 その時、病室から、気落ちした様子の品田が出てくる。




   品 田 「秋山さん。もう済みました」

   秋 山 「そっか。じゃ……帰る?」


   品 田 「ええ」




 品田、廊下を歩き出してからもしょんぼりしていたが、そのうちにポツリと呟く。



   品 田 「……何でこんなことになっちゃうんでしょうね」

   秋 山 「そりゃまあ、それがあの人たちの職業の宿命だから……避けられない時もあるってことなんだろね」




 品田、黙りこくっている。



   秋 山 「でも、君の気持ちは分かるよ」

       「あの二人は極道だ、もちろんそうだけど、でも極道がやる悪さってのを一切したことがない」


       「なのに、極道の宿命を避けられないのは何だかフェアじゃない――そう考えてるんじゃない?」


   品 田 「そうです! そうなんです、さすが秋山さん、よく分かってくれますねぇ」


   秋 山 「そりゃ、俺も同じ気持ちだからね」




 そのとき秋山、スマホを取り出す。振動する画面を確認し、




   秋 山 「あれ? 花ちゃんだ」




 と、すぐに出る。




   秋 山 「もしもし、どうしたの? さっきのことで何か――」




 まで言った途端、花の金切り声が響き渡る。



   花の声 「社長ぉぉぉ!! 早く帰ってきてくださいぃぃぃ!!」

   秋 山 「な、なになに、ホントにどうしたの?」


   花の声 「いま会社に! ヤクザの人たちが来てます!」


   秋 山 「何だ。そんなの、君ならチョチョイのチョイで追い払えるじゃない?」


   花の声 「因縁つけに来てるんじゃないんです! 社長にぜひ相談があるって言って、待ってるんです!」


   秋 山 「そっか。分かった、じゃ、すぐ帰るよ」


       「それにしても、何でそんな怯えてるの? 花ちゃん、ヤクザなんか全然平気じゃない?」


   花の声 「ただのヤクザなら怖くないです!! でも今待ってる人たち、超怖いんです!! 顔が!!」


   秋 山 「顔? えっ、顔だけの話?」




 ここでいったん暗転。







四章 秋山編 急転 (3)



○スカイファイナンス

 ドーンという効果音付きで、最初に渡瀬がどアップになり、次に龍司がどアップになる。


 引きの絵となって初めて、そこがスカイファイナンスの応接スペースだと分かる。


 ソファーに品田と並んで座っている秋山、向かいの渡瀬&龍司を見て、引きつり笑いを浮かべている。




   秋 山 「はは……そうね、確かに怖いかもね……」

   品 田 「ですね……並ばれると余計に……」




 品田も若干引き気味。




   秋 山 「えっと、それで……どういった御用件でしょう?」




 それにより渡瀬、改まって話し始める。




   渡 瀬 「ワシ、さっき会うた時に桐生はんの噂のこと、言うたな?」


   秋 山 「はい」


   渡 瀬 「それに関わる話や」


   秋 山 「はあ」


   渡 瀬 「そのことをさっき、こちらの郷田はんにも御説明した」


       「ほな、ぜひ秋山はんに相談すべきや言わはってな」


   秋 山 「俺にですか?」




 秋山、龍司を見る。

 龍司、傲然と見返す。




   龍 司 「あんたはこの神室町の事情によう通じとるし、東城会にも顔が利く」

       「せやったらこの渡瀬の話――どこへ持っていったらええもんか、教えてくれんのとちゃうか思てな」


   秋 山 「分かりました。じゃ、そのお話ってのを伺いましょう」


   渡 瀬 「その前に、あの秘書の子ぉはしばらく……」




 渡瀬、チラッと視線を花に向ける。

 それをデスクで聞いていた花、ムッとした様子。


 秋山、すかさずサッと花の許へ駆け寄り、さりげなく万札を数枚手に握らせる。




   秋 山 「悪いけど、お使い頼まれてくれるかな? もうすぐタバコ切れちゃいそうなんだ」

     花 「そんなの自分で――」


   秋 山 「お釣りで何でも好きなことしてきていいからさ」


       「ほら、最近働かせすぎちゃってるし、申し訳ないと思ってるんだよ」


       「この際、エステか何かでリフレッシュ! ってのもいいんじゃない?」




 食べ物ではなく美容関係を勧められたことで、花は女性扱いを受けたと認識したらしく、驚いた様子。



     花 「は、はい……」

   秋 山 「戻ってきた時、一段と綺麗になった花ちゃんの笑顔見せてね?」


     花 「は、はい!」


   秋 山 「よかった。じゃ、いってらっしゃい。ゆっくりしてきていいからね」


     花 「はい! じゃ、いってきます!」



 

 花、ポーチだけ持ち、いそいそと出かけてゆく。

 応接スペースへと戻ってきた秋山に、渡瀬がキョトンとして言う。




   渡 瀬 「何やあんた。あの秘書の子ぉとデキとんのかいな」

   品 田 「えっ!? そうなんすか!?」


   秋 山 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。人払いしろって空気出したのは渡瀬さんでしょ?」


   渡 瀬 「そらそやけど、何もあないに仲良うイチャつく必要はあれへんやろ」


   秋 山 「イチャついてるように見えました?」




 すると3人同時に、真面目な顔で返事。



   渡 瀬 「おお」

   龍 司 「おお」


   品 田 「はい」




 それで秋山、溜息をついて投げやりに言う。



   秋 山 「もういいですよ。それより、渡瀬さんのお話ってのを早く聞かせてください」

   渡 瀬 「おう、そうか。ほな……どっから話そかいな」




 と、しばし考え込んだ渡瀬、話し始める。



   渡 瀬 「もう……10日前になるか。勝っちゃん――うちの本部長から報告入ってな」

       「「関西の龍が関西に戻ってきたらしい」っちゅうんや」


   秋 山 「関西の龍って……郷田さんのことですよね?」


   渡 瀬 「せや。近江連合にとっては伝説の男や。11年前に破門になった後、消息不明になった」


       「けど、未だに忘れられんでおるモンはぎょうさんおる」


       「関西の龍さえおってくれとったら、
郷田会長死後の血で血を洗う跡目争いもなかったのにっちゅうてな」

       「ワシ個人は、跡目争いに関しては何も言うことはない」


       「けど、関西の龍を忘れられへんっちゅうことやったら、ワシもその一人や」


       「年こそワシのほうが食うとるが、若い時はずっとこの人の背中を追っとった」


       「何せ、いきなり直系組織に入っただけやない」


       「そこから山のように伝説作り上げて、5年後にはもう会長就任……」


       「そんなもん、近江の規模の組織では通常ありえへんことやからな」




 龍司、自嘲気味にハッと笑う。



   龍 司 「ワシは親父の組に入れられたんや」

       「近江の別の組に入ろうとしたけど、あかんかった」


       「「若をお引き受けするわけにはいきません」――どこもそう言いよってな」


       「しゃあなしで郷龍会に入るしかなかった。親父が総裁で会長不在っちゅうアホみたいな組にな」


       「出世が早いんはそのせいや」




 渡瀬、ムッとした様子。



   渡 瀬 「それだけのことやったら近江の誰も納得せえへんし、認めもしまへん」

       「あんたは、全近江が納得するだけの器量を持っとったんです」


       「何ぼ伝説本人やから言うて、伝説をこきおろしてええわけちゃいまっせ」




 龍司に心酔するが故の渡瀬の憤慨に、龍司は「降参や」といったふうな苦笑いを浮かべる。

 そこで渡瀬、一息ついてから、




   渡 瀬 「とにかく……。そないな伝説の御帰還となると、これはただでは済まんかもしれん」

       「向こうの出方、こっちの出方次第では――10年前以上のえげつない跡目争いに発展するかもしれん」


       「勝っちゃんはそう言うて、えらい心配しよってな」


       「せやからワシは、ともかく一斉命令出したんや」


       「その関西の龍らしい男を探し出して、丁重に本部までお連れせぇてな」


       「ほな、その翌日、すぐに関西の龍が本部に引っ張られてきよってな」


   品 田 「えっ!?」


   秋 山 「こちらの郷田さんが、って話じゃないんですよね?」


   渡 瀬 「せや。郷田はんそっくりそのままの奴が、そこそこしばかれた状態で連れてこられよったんや」


       「要するにそいつは、真っ赤なニセモンやったわけや」


   秋 山 「ニセモノ!」


   渡 瀬 「何を血迷うたか知らんが、伝説の関西の龍そのまんまに整形して、背中には黄龍のモンモンまで背負てなあ」


       「まあ、顔はともかく、モンモンの出来はそない良うなかったけどな」


       「とにかく、そのナリで肩で風切ってのし歩いてなあ」


       「二言目には「関西の龍・郷田龍司をナメとんか!」言うて背中を見せつけよるんや」


       「それでうちのモンが、何やおかしい思てな。試しに、弱めの奴を突き出して様子見よったんや」


       「ほんなら、ニセモンはコロッと負けよったんやと」


       「それで、弱っとるとこを本部までお連れしたっちゅうわけや」


   秋 山 「それ、見ようによっては拉致ですけどね……」


   渡 瀬 「ああ、そら大丈夫や」


       「ちゃんと「関西の龍でっか? おかえりなさい!」っちゅう小芝居かましてから連れてきよったからな」


   秋 山 「……傍目はごまかせましたけど、完全に拉致ですね……」


   渡 瀬 「細かいこと言うなや」


       「こっちはニセモンを確保できた、カタギは困った兄ちゃんを駆除できた。ウィンウィンや」


   秋 山 「ま、そりゃそうです」


   渡 瀬 「ほんでまあ、何ちゅうか……茶ぁ出して話聞かしてもろてんけどな」


   秋 山 「お茶、ですか……」


   渡 瀬 「人がボカしたとこ突っ込むなや」


       「で、とにかくそのニセモンは、こない言いよるんや」


       「「自分は友達に誘われて話に乗っただけや」」


       「「友達は神室町の伝説・堂島の龍になって東城会のてっぺんを獲る」」


       「「自分は近江の伝説・関西の龍になって近江連合のてっぺんを獲る」」


       「「そうやって二人で伝説になってから、まずはそれぞれ東と西を制覇する」」


       「「で、そのあと仲良う手ぇ組んで、二人で新たな伝説を作っていこやないか!」」


       「――っちゅう話になっただけや、とな」




 秋山、呆れ顔になる。



   秋 山 「何かそれ、ずいぶん考えナシじゃないですか?」

       「だって、近江連合の弱めの人に負けちゃうレベルなんでしょ?」


       「それじゃいくら借り物の見た目と伝説背負ってたって、すぐにボロが出ちゃいますよ」


       「第一、バレずに何とか乗り切ったとしても、見た目と過去の伝説だけじゃあね」


       「東城会、近江連合なんて巨大組織、まとめられるわけないですよ」


   渡 瀬 「そのとおりやな。ところがこのニセモンは、本気でそれで行けると思とったらしい」


       「ほんま、行動力あるアホほどタチ悪いもんはあれへんで」


   秋 山 「ですね……」


   渡 瀬 「で、しゃあないから、そのニセモンはまだうちの本部の――客室に入ってもろとるんやけどな」


   秋 山 「客室ね。ええ、もちろん、そりゃそうですよ」


   渡 瀬 「で、これ、何ぼ近江に関係あれへんちゅうてもや」


       「ここはやっぱり、桐生はんのニセモンも気になるわな?」


   秋 山 「はい。それはもちろんです」


   渡 瀬 「それで、神室町に詳しい情報屋に確かめてみたんや」


       「ほな案の定、10日ぐらい前から、堂島の龍が生きて戻ってきたっちゅう噂が出だしとるらしい」


   秋 山 「ええ。さっき俺の情報屋に確かめたら、9日前に最初に聞いたと言ってました」


   渡 瀬 「そうか」


       「ま、そういうわけでワシは、郷田はんに御挨拶と、けしからんニセモンがおったっちゅう御報告」


       「ほんで堂島の龍のニセモンもおるらしいっちゅう御忠告をするために、神室町まで来させてもろたわけや」


   秋 山 「なるほど、そういうことだったんですか」




 そこで、龍司が発言。



   龍 司 「ワシはまだ、桐生が生きとるっちゅう噂は聞いてへん」

       「けど、この渡瀬の話を聞いてしもたからには、ほっとくわけにはいかん」


       「それで、あんたに相談に来たんや。――これ、どないしたもんやろな」


   秋 山 「そうですね……」


       「やっぱり、神室町を仕切ってる真島組さんに報告しとくべきでしょうね」


   渡 瀬 「つまり真島はんにっちゅうことか? ――それ、あんたに頼めるか?」


   秋 山 「ええ、もちろん」




 それで渡瀬、ニカッと笑う。




   渡 瀬 「そうか! ほな頼むわ」

       「これ、ワシから直接にとなると……。お互いの立場もあって、なかなかスッとはいけへんねや」


   秋 山 「でしょうね。お任せください、この後すぐに電話しときますよ」


       「それとも、直接行って話してきましょうか?」


   渡 瀬 「いやいや、もうそないに大袈裟にすることあれへん」


       「所詮ショボいニセモンがおったっちゅうだけの話や。電話でチョチョッと済ましたらええ」


       「ほんまおおきになぁ、助かったわ」




 渡瀬、ゴキゲンな笑顔で向かいから立ち上がると、秋山の両肩をパンパンと叩く。

 その勢いとオーラについ飲まれた秋山、




   秋 山 「は、はあ……」



 と苦笑い。品田と目が合ったのち、再び苦笑い。

 ここで暗転。








○天下一通り・スカイファイナンスが入っているビル前

 外へ出てきた渡瀬と龍司。




   龍 司 「ほな」



 それっきり去ろうとする龍司を、呼び止める渡瀬。



   渡 瀬 「郷田はん」



 龍司、ただ立ち止まっただけで、こちらは振り返らない。



   龍 司 「何や」

   渡 瀬 「関西に戻らはる気はありまへんのか?」


   龍 司 「ないな」


   渡 瀬 「ほんのちょっともでっか?」


   龍 司 「くどいで」


   渡 瀬 「せやったら、せめてそのお名前だけでも、近江に預けてもらえまへんやろか?」




 それにより龍司、やっと振り返る。



   龍 司 「何やと? どういうこっちゃ?」

   渡 瀬 「郷田龍司は近江連合の人間――そういうことにしといてもらいたいんや」


       「もちろん破門は即取り消した上で、すぐ直系の組を作らさしてもらいます」


       「肩書きは、今はうちもややこしい状態やから、さすがに三役っちゅうわけにはいかんが……」


       「それでも若頭補佐なり相談役なりやったらどないとでもなる」


       「何やったら総裁の肩書きを差し上げてもええ」


   龍 司 「……そないなことして、おまえに何の得があるんや?」


   渡 瀬 「近江連合の安寧のためや」


       「関西の龍っちゅう名ぁと存在は、未だに今回みたいな騒ぎを引き起こすだけの力を持っとる」


       「それが野放しになっとるっちゅうことが、うちの下のモンには不安の種なんや」




 龍司、傲然と聞き返す。



   龍 司 「ワシはおまえが、何よりもケンカが好きな人種やと聞いとったんやけどな」

       「そないにワシが目障りやったら、力で組み伏せんかい」


       「ほんで、関西の龍が何ぼのもんじゃっちゅうとこを、下のモンに見せたったらええやろが」


   渡 瀬 「ワシはカタギは殴りまへんねや。よっぽど悪さしとらん限りはな」




 龍司、無言で渡瀬を見据える。


 しばしの沈黙ののち、渡瀬が思い切った様子で言う。




   渡 瀬 「実は、ここだけの話ですけど、ワシはいま東城会にある提案をしてます」

       「近江に神室町入りさしてくれ、ドブ底のシノギを仕切らしてくれ――てな」




 龍司、やや目を瞠る。



   渡 瀬 「で、もしその提案が通った暁には、郷田はんにも是非お力添え願いたい……。そう思とりますんや」

       「何も、ドブ底のシノギに手ぇ染めぇ言うてんのとちゃいまっせ?」


       「その前の段階、今ドブ底でのたくっとるゴミ虫どもを叩き潰す……」


       「言わば清掃活動に協力してもらえたら、それこそ鬼に金棒やと思いましてな」




 龍司、ギロリと渡瀬を睨み据える。



   龍 司 「さっさと帰れや」

   渡 瀬 「郷田はん――」


   龍 司 「ワシは近江に戻る気はない。極道の世界に戻る気はない」


       「もちろんおまえらの仕事に手ぇ貸す気もない。――胸糞悪いこと抜かしよって」




 本気で不快そうな顔をしている龍司に、渡瀬は恐縮して頭を下げる。



   渡 瀬 「すんまへん」



 しばし沈黙が続く。

 龍司、少し気持ちを落ち着けてから言う。




   龍 司 「ワシはもう自分の城を持っとる」

       「それをどない永らえさしていくか、どない大きしていくか、
それ以外には何も興味あれへん」

       「おまえかて自分の城を持った身ぃや。その気持ちは分かるんとちゃうんか」




 それにより渡瀬、胸を衝かれた様子で、龍司を見つめる。



   龍 司 「わざわざ来てもろて済まんかったな」

       「それに、今後も今回みたいなことがちょいちょい起こりよるかもしれん。それも堪忍やで」


       「ただ、もう今後、関西の龍のことは綺麗さっぱり忘れえ。そいつはもうこの世にはおらん」


       「それでも、野放しになっとるのがどうしても不安やっちゅうなら……」




 龍司、傲岸な顔つきでニヤリとする。



   龍 司 「近江を獲りに来よった時には返り討ちにできるように、いつでも気合い入れとけや」



 それにより渡瀬、溜息をつく。ややしょんぼりした様子。



   渡 瀬 「ワシも夢見とったっちゅうことですわな」

       「憧れやった関西の龍が手ぇ繋いで近江を盛り立ててくれたら、こないに嬉しいことはない――てな」


       「総裁の椅子チラつかしたら、いけるかもしれん……」


       「そないなこと考えた自分がみっとものうて、恥ずかしいですわ」




 そして渡瀬、龍司に向け、改めて威儀を正す。




   渡 瀬 「やっぱり、伝説の背中は大きかった。ええ勉強さしてもらいました」


       「ワシもそないな背中を下のモンに見せれるように、頑張らしてもらいます」


       「今日はほんま、おおきに」




 渡瀬、龍司に最敬礼。

 その渡瀬をしばし見つめていた龍司、言う。




   龍 司 「向こうに戻ったら、親父の墓に線香でもやっといてくれや」



 渡瀬、最敬礼したままハッとする。



   龍 司 「いま近江を治めとるんがおまえやと知ったら、安心しよるやろう」



 そこで渡瀬、表情を引き締め、改めて最敬礼の姿勢を整える。

 龍司、踵を返して立ち去る。


 そのしばし後、渡瀬は体を起こし、感無量と言っていい表情を湛えたまま、立ち去る。






○天下一通り・スカイファイナンスが入っているビル前

 そのすぐ直後、そこへ駆けつけてきたのは、スーツ&サングラス姿の2人組。


 その一方が、ホサカ。 (もう一方もアジア系)


 ホサカ、ビルの4階の窓の「スカイファイナンス」の文字を見上げ、手下に英語で言う。




   ホサカ 「There. Let’s do it. (あそこだ。行くぞ)」



 そして2人、ビルの中へと入ってゆく。





○スカイファイナンス

 バンとドアを引き開けるなり、スカイファイナンス内へと乗り込んできたホサカと手下。


 ソファーにいた品田、驚いた様子。


 部屋の中央に立っていた秋山、怪訝そうに2人を見てから、応対。




   秋 山 「いらっしゃいませ……ですかね?」

   ホサカ 「(鼻で笑い) 俺たちは客じゃない」




 秋山、ホサカのほんの少しカタコトな日本語によって思い当たったらしく、そのような表情を一瞬する。

 ここで画面は一瞬、「沖縄にて、田宮にタブレットで見せられたジョン・ホサカの画像」に切り替わる。


 画面戻って、スカイファイナンス内。秋山、改めて営業スマイルを浮かべる。




   秋 山 「では、どういった御用件で?」

   ホサカ 「おまえが宇佐美ハルトと遥をシェルターに匿ったんだろう?」




 営業スマイルの必要が完全になくなった秋山、素の顔に戻り品田へ目くばせ。

 品田も戦闘態勢でソファーから立ち上がり、部屋の中央へとやってくる。




   秋 山 「だったらどうなんだ?」

   ホサカ 「すぐ二人をこちらに引き渡してもらおう」


   秋 山 「いちおう聞くけど、俺がそんなことするって本気で思ってる?」


   ホサカ 「(ニヤリとし) 人間、死にたくなければ何でもするものだ」


   秋 山 「そのためにはまず“死にたくない”って思わせなきゃね」



 

 ホサカ、秋山を睨み据えながら、構えを取る。



   ホサカ 「大口を叩いていられるのも今のうちだぞ」

   秋 山 「それ、こっちのセリフでしょ」




 ここで、「vs. ホサカとその手下」の戦闘になる。

 (※ホサカはヒューズレベルにものすごく強い設定)


 (※秋山と品田とは共闘ではないが、手下も入れ乱れての混戦となる)






○スカイファイナンス

 戦闘後。ゼイゼイ言っているホサカ、憎々しげに秋山を睨みつける。




   ホサカ 「Damn... (くそっ……)」



 そしてホサカ、身を翻してスカイファイナンスを飛び出していく。

 その後を、やはりヨロヨロの手下が追って飛び出していく。


 結構疲れている品田、やはり結構疲れている秋山に問う。




   品 田 「あいつら……。いったい何者なんでしょう?」

   秋 山 「間違いなく、今回の犯人の一味だよ」


       「ゴツいほうはジョン・ホサカっていって、元アメリカ陸軍工兵隊の伍長だってさ」


   品 田 「えっ? 秋山さん、あいつのこと知ってたんですか?」


   秋 山 「画像で見せられただけだけどね」


       「ハルト君をさらった女と会ってるとこが、防犯カメラに映ってたってさ」


   品 田 「そうだったんですか!」


   秋 山 「ま、何にせよ、俺をこうして脅しにかかったってことは……」


       「奴ら、シェルターを強行突破はできないと断念したってことだ」


   品 田 「あっ、そっか! それはよかったです」


   秋 山 「とは言え……。仕方ないな、しばらくここは閉めるよ」


       「悪いけど君も、ホテルかどっかで待機しててくれないかな」


   品 田 「わっかりました! じゃ、神室町近くのカプセルホテルをっと……」




 と、検索のためにスマホを操作しようとしかけた品田を、秋山が止める。



   秋 山 「いや……ちょっと待って」

   品 田 「ん? 何です?」


   秋 山 「……悪いんだけどさ、また沖縄に行ってもらえないかな?」


   品 田 「えっ!?」


   秋 山 「いや、考えすぎかもしれないけどね」


       「でも奴ら、シェルターの強行突破が無理となって、俺んとこに来たわけじゃない?」


       「それで俺のほうもダメとなったら、最悪、ハルト君との交換要員として……」


       「アサガオの子供たちに目をつける可能性もなくはないなと……」




 品田、息を呑んだのち、我知らず声をひそめる。



   品 田 「……そこまでやりますかね?」

   秋 山 「分からない」


       「でも、リクソンは堂島さんを手中に収めてるにもかかわらず、まだハルト君を狙ってる……」


       「そのことがずっと引っかかってるんだ」


       「もし、身代金目的じゃない何等かの理由で、ハルト君本人を狙ってるんだとしたら……」


       「手出しできないシェルターに入ってしまった今、それこそ思い付く限りの手を打ってくるかも……」




 品田、表情が引き締まる。



   品 田 「分かりました。すぐ行きます」

   秋 山 「うん。もちろん、ちゃんと仕事として依頼するよ」


   品 田 「いえ、俺の意思で行きます。言ったでしょ、桐生さんの分まで遥ちゃんを守るって」




 そのため秋山、困ったような笑顔になる。




   秋 山 「ホント、カッコいい親父だよ」

   品 田 「あざっす!」


   秋 山 「たださ、ホントに俺の考えすぎかもしれないのよ。だから、まだそんなに気合い入れ過ぎないでね?」


       「だから……。そうだな、君が着くまでは運天くんじゃなく、琉道一家さんに警備をお願いするか」


       「こないだ、会ったこともない名嘉原さんから直接連絡が来たし」


   品 田 「そうなんですか?」


   秋 山 「そうなんだよ。水臭いって恨み言を言われちゃってさ。こないだ運天くんを頼ったから……」




 とスマホを取り出した秋山。それを見た品田も、



   品 田 「じゃ、那覇行きの飛行機をっと……」

   秋 山 「あっそうだ、まず店閉めることを花ちゃんに言っとかなきゃ……」




 秋山と品田、揃ってスマホを操作し始める。

 ここで長い暗転。








○沖縄・アサガオ近くの路上 (夜)

T「18日前  2017年12月10日 18:11」


 アサガオから少し離れた道の脇に、軽トラが停車中。


 その助手席には琉道一家の若衆の兄貴分、運転席には琉球街で東城と戦闘した弟分のうち1人の姿。




   弟 分 「この見張りって、ホントに意味あるんすかね?」

   兄貴分 「知らねえよ。親父も親父だよ」


       「いくら遥ちゃんの知り合いだからってさ。東京の金貸しの心配なんかに付き合ってやる必要ねえっての」


   弟 分 「その東京の金貸しっての、いったい何モンなんすかね?」


   兄貴分 「だから金貸しだよ。あと何か、アメリカのプロレスラーの知り合いだよ」


   弟 分 「(困惑顔) 何すかそれ?」




 その時、猛スピードで軽トラの脇を抜けていった黒い車。


 若衆2人、崩した姿勢のままで、その車を目で追う。


 黒い車、アサガオの前で急停車。


 中から出てきたのはスーツ&サングラス姿の4人の男たち、そのままアサガオへと突入。 (※運転席に1人残っているのがシルエットで分かる)


 若衆2人、顔を見合わせた一瞬後、慌ててそれぞれに軽トラから飛び出す。






○沖縄・アサガオ・居間 (夜)

 居間には宇佐美、太一、宏次、理緒奈、志郎、泉が揃っている。台所では綾子と三雄とエリが夕食の準備中。


 そこへ突然、土足で踏み込んできたスーツ&サングラス姿の4人組。子供たちはびっくり。




   太 一 「何だ!? おまえら何モンだ!?」



 すると、4人組のうちのボス格(スーツ男Dと表記)が答える。



 スーツ男D 「そんなことはどうでもいい。それより、おまえたちのうち誰でもいいから二人、こっちに来い」

   志 郎 「何でそんなことしなきゃいけないんだよ!? おまえら、その二人をどうするつもりだよ!?」


 スーツ男D 「宇佐美ハルトと遥の二人と引き換えるんだよ」


       「だから、素直に二人だけ差し出せば、他の奴は見逃してやる」


       「これでもずいぶん譲歩してるんだが?」


   宏 次 「はあ? あんたらバカなの?」


   宇佐美 「宏次、やめろ」




 と宇佐美、アサガオの子供たち一団の正面に出る。そして敵4人を睨み据えたまま、



   宇佐美 「綾子、みんな連れて宮良さんとこ逃げろ。そんで警察呼べ」

   綾 子 「でも……でも、勇太お兄ちゃんは? どうするの?」


   宇佐美 「こいつらをここで食い止める」


   太 一 「俺も手伝うよ!」


   宏 次 「俺も!」


   三 雄 「俺も!」


   宇佐美 「いや、三雄はダメだ。もう契約を済ませたプロの選手なんだ、こんなことで怪我はさせられねえ」


   三 雄 「そんな――」


   宇佐美 「そんなことになったら俺は、桐生の兄貴に顔向けできねえんだよ。――三雄、みんなを頼むぞ」




 三雄、悔しそうな顔と泣き出しそうな顔をごちゃ混ぜにして見せた後、頷く。



   三 雄 「……分かった」


   宇佐美 「よし!! 行け!!」




 その声を合図に、太一と宏次以外の子供たちが三雄をしんがりとして、敵4人とは反対の方向へ逃げ出す。

 それを追おうとした敵4人の前に、宇佐美・太一・宏次が立ちふさがる。


 足止めを食らった敵4人の後ろに、琉道一家の若衆2人が駆け込んでくる。




   兄貴分 「てめえら、よくもナメた真似してくれたな。ただじゃおかねえぞ」



 するとスーツ男D、ニヤリとする。



 スーツ男D 「もちろん、ただでおくつもりはない」

       「おまえたちを叩きのめして、そこの二人(と太一&宏次を見やり)をもらっていく」


   宇佐美 「そうはさせるかよ!!」




 双方とも、戦闘に入る構えになる。


 ここで暗転。






○沖縄・アサガオ前の道路 (夜)

 品田の乗るタクシー、アサガオ近くまでやってきたところ。






○沖縄・アサガオ前の道路・品田のタクシーの車中 (夜)

 タクシーの中の品田、遠目で、路上にある無人の軽トラと、アサガオ前の黒い車を確認。

 (※今は黒い車も無人であることを、はっきりと示す)


 二台の車を見たことで、品田の顔が不安でゆがむ。




   品 田 「これマズいよ!」






○沖縄・アサガオ・居間 (夜)

 敵4人、ヨロヨロの状態。

 そのため、宇佐美たちはまだまだ意気揚々たるもの。

 そこへ、突然ぬっと登場したのは、新たなスーツ&サングラス姿の男。ホサカである。

 ホサカ、手下たちを見、呆れ果てたような様子を見せたのち、おもむろに銃を抜き、宇佐美たちのほうに向ける。



   ホサカ 「面倒なことばかりで、本当にウンザリだ」

       「分かった、一人は今後の脅しとして撃ち殺し、もう一人を連れていく」

       「それでいいな?」


   兄貴分 「ふざけてんじゃねえ!」


   ホサカ 「本気だ」




 ホサカ、兄貴分→弟分の順で膝下を撃つ。2人、うずくまる格好で倒れ込む。

 次にホサカの視界に入ったのは、呆然とする宏次。その宏次の心臓部に狙いを定め、ホサカは撃つ。


 それとほぼ同時に宏次を体当たりの要領で突き飛ばした宇佐美、左胸(と左肩の間くらい)に被弾し、倒れ込む。


 突き飛ばされて尻餅をついた宏次と、宇佐美に駆け寄りながらの太一が、同時に叫ぶ。




 宏次&太一 「勇太兄ちゃん!!」




 ホサカ、舌打ちしたのち、今度は自分の位置により近くなった太一の頭部に狙いを定める。


 その瞬間、室内に駆け込んできたのは、品田。

 品田、問答無用で思いっきりホサカをぶん殴る。

 ホサカ、文字どおり吹っ飛ぶが、何とか両足で着地。

 しかし殴られた時の勢いで、銃は部屋の真逆の位置まで飛んでいってしまっている。

 そちらを一瞥したホサカ、舌打ちし、品田を睨みつけたのち、品田と逆方向へ駆け出す。

 品田、それを追いかける。





○沖縄・アサガオの外 (夜)

 ホサカ、黒い車に乗り込むと急発進させ、そのまま逃げてゆく。

 品田、それをなす術もなく見送ったのち、踵を返して母屋へと駆け戻ってゆく。





○沖縄・アサガオ・居間 (夜)

 居間では、宏次がスマホで119番通報している。

 太一、宇佐美の上半身を抱え起こし、必死に呼びかけている。



   太 一 「勇太兄ちゃん!! 嘘だろ、しっかりしてよ!!」

   宏 次 「勇太兄ちゃん!! すぐ病院連れてくから!! 頑張ってよ!!」



  宇佐美、何とか焦点を太一に合わせる。



   宇佐美 「太一……宏次……大丈夫か?」

   太 一 「大丈夫だよ! それにあいつ、品田さんにぶっ飛ばされて逃げてったから! 安心して!」


   宇佐美 「そ、か……」


   宏 次 「しっかりしてよ! すぐ救急車来るから!」




 そしてスマホに向かい、



   宏 次 「早く来て!! ピストルで撃たれたんだよ!!」

   宇佐美 「遥に……言っといてくれ……ありがとう……ハルトを頼むって……」


   太 一 「分かったよ! でも自分で言えるって!」


       「そんな死んじゃう時みたいなこと言わないでよ! 頼むよ!」


   宇佐美 「ハルトに……言ってくれ……自分の道を……行けって……」


   太 一 「勇太兄ちゃん!! 勇太兄ちゃん!!」




 しかし宇佐美、意識を失う。



   太 一 「嘘だ!! 嘘だよ!! 死なないでよ!!」



 宏次、通報を終えて宇佐美の許へ駆け寄り、身体を揺する。



   宏 次 「すぐ来るから!! もうちょっと待って!! 頼むからさ!!」




 悲痛な声で叫ぶ2人を見た品田、頭を掻き回しながら、




   品 田 「くそっ!」



 と呻き、間に合わなかったことを悔やむ。


 ここで長い暗転。






四章 秋山編 急転 (4)



○ニューセレナ (深夜)


T「17日前  2017年12月11日 00:13」


 ニューセレナのカウンターには東城、秋山がおり、伊達はカウンター内で立っている状態。


 秋山、スマホで品田と会話中。




   秋 山 「そうか、分かった」

  品田の声 「あの、ホントにすいませんでした。俺、何の役にも立てなくて――」


   秋 山 「いや、君は宏次くんと太一くんを守ってくれたじゃない」


       「宇佐美くんのことは君のせいじゃないし、誰のせいでもないんだ」


  品田の声 「……俺、ここは絶対に手出しさせませんから」


   秋 山 「うん、頼むよ。――それじゃ」


  品田の声 「はい、じゃ」




 通話を終了した秋山、東城と伊達に報告。



   秋 山 「さっき手術が終わったそうです」

       「手術そのものは何とかなったらしいんですが……。宇佐美くんはかなり危ない状態だそうです」


   伊 達 「そうか……」




 東城、無言。




   秋 山 「それと、さっきアサガオに真島組の人たちが300人くらい着いたそうです」

       「文字どおり取り囲んで警備してくれてるそうで」


   伊 達 「そうか」


       「皮肉なもんだよな、警察が三人ぽっちしか動かせねえ時に、ヤクザが300人動かせるってのは」




 2人とも何も答えず、しばしの間が空く。

 それから秋山、思い切ったように喋り出す。




   秋 山 「東城さん、すみません。俺の判断ミスです。運天くんを頼ってれば、ひょっとしたら――」

   東 城 「誰のせいでもない。それは、さっきおまえが言ったとおりだ」


       「第一、おまえの手回しのおかげで子供たちがさらわれないで済んだ。おまえはよくやってくれた」


   秋 山 「……はい……」




 それでも自責の念が消えない秋山。沈黙ののち、思い切って東城に申し出る。



   秋 山 「東城さん。このこと……遥ちゃんに黙ってていいんでしょうか?」



 東城、ギロリと秋山を見据える。

 秋山、顔を逸らし、目を伏せてその視線をかわし、




   秋 山 「すいません」



 と言ったのち、さらに言う。



   秋 山 「俺も迷ってるんです」

       「このことを遥ちゃんに打ち明けたら、彼女は間違いなく宇佐美くんの許へ駆けつけるでしょう」


       「そうなったら遥ちゃんとハルト君の安全が確保できない。そんなこと宇佐美くんも望まない……」


       「それは分かってるんですけど……。でも、もしこのまま宇佐美くんに何かあったら……」




 そこで伊達、割り込んで答える。



   伊 達 「大丈夫だ、おまえに恨まれ役をしょわせやしない。それは警察の役目だ」

       「警察が安全確保のために報告させなかった。そういうことだ」


   秋 山 「違います、恨まれ役なんかどうだっていいんです」


       「遥ちゃんが俺を恨むというなら、俺はそれを引き受けますよ」


       「そうじゃなくて、俺はただ……」


       「最後に会わせてあげたほうが遥ちゃんのためなんじゃないか……」


       「その思いが、どうしても消えないんです」




 沈黙が広がる。



   秋 山 「桐生さんという大きな存在を亡くし、このうえ宇佐美くんまでとなると……」

       「まして、死に目にも会えないなんて……」


       「いくら遥ちゃんが強い子でも、あまりにも辛すぎると思うんです」


   東 城 「大丈夫だ」


   秋 山 「東城さん!」


   東 城 「勇太は、大丈夫だ」




 その言葉の意味を理解した秋山、しかし動揺は消えない。



   秋 山 「どうして……どうしてそんなこと言い切れるんですか」

   東 城 「あいつは俺から、遥を引き受けたんだ。だから、こんなことで絶対にくたばったりしない」


   秋 山 「でも実際、危険な状態なんです!」


   伊 達 「よせ、秋山」




 それで秋山、席にきちんと座り直す。しかし表情を見る限り、納得はしていない。

 沈黙ののち、東城が言う。




   東 城 「秋山」

   秋 山 「……はい」


   東 城 「いつもすまない」


   秋 山 「……俺が勝手に首突っ込んでるんですよ」


   東 城 「遥に電話してくれ」


   秋 山 「……えっ?」


   東 城 「遥に選ばせよう」




 そのため伊達、仰天。



   伊 達 「おい! そんなことしたら――」

   東 城 「伊達さん。秋山の言うとおり、これは遥の問題だ。なら、俺たちが決めていいことじゃない」


   伊 達 「いや、でもよ――」


   東 城 「秋山。かけてくれ」


   秋 山 「……ホントにいいんですね?」


   東 城 「ああ」




 秋山、東城とがっしり見合ったのち、少し息をつく。



   秋 山 「じゃ、かけます」

   東 城 「頼む」




 秋山、スマホを操作し始める。

 伊達、もどかしげに後頭部をガリガリと掻く。


 いったん暗転。






○シェルター・遥とハルトの一室 (深夜)

 シェルターの一室。高級ホテルのスイートルームさながら。


 奧のベッドルームで、ハルトがぐっすり眠っているのが映る


 その手前のリビングルームの応接スペースにて、ソファーにぽつんと座る遥、スマホを構えて目を瞠っている。

 その表情から、深刻な報告を受けた後だというのが分かる。




  秋山の声 「遥ちゃん、どうする?」


       「もし君が宇佐美くんの許へ行くというなら、できる限りの安全策を講じるつもりだ」


       「もちろん俺が一緒についていくし、チャーター機で移動するつもりだし、警備には真島組が――」


     遥 「いいえ」


  秋山の声 「……えっ?」


     遥 「私、行きません」


  秋山の声 「遥ちゃん! ――ホントにいいの?」


     遥 「はい」


  秋山の声 「そっか……」


     遥 「勇太は、私とハルトのために頑張ってくれたんです」


       「それなのに、私がそれを無にするようなことはできません。そんなの……勇太がかわいそうです」


  秋山の声 「うん……そうだよね」


     遥 「秋山さん。アサガオのみんなは大丈夫なんですよね?」


  秋山の声 「それは大丈夫」






○アサガオおよび琉球病院 (深夜)

 ここで、画面はアサガオと琉球病院の光景の動画映像となる。立て続けに、


 「アサガオを取り巻く真島組の300人」


 「その手前に琉道一家の若衆や、若頭の新垣幹夫が構えている様子」


 (※その際、門の脇に立っている制服警官も映る)


 「すぐ近くの車の中にいる刑事2人」


 「琉球病院の病室のドア横にて、パイプ椅子に座って油断なく構えている品田」


 「病院の正面玄関および裏口にずらりと並んでいる見た目バイカーの青年たち」


 「病院正面すぐそばに停まっている車の後部座席にいる運天要」


 それらの動画映像が次々に切り替わって映し出される。

 そこに秋山の声が乗る形。




  秋山の声 「アサガオは真島組の人たちが300人体制で守ってる」

       「琉道一家も総出で力貸してくれてるし、警察もいる」


       「綾子ちゃんのそばには品田くんがいる」


       「それに、病院の外では運天くんたちが睨みを利かせてくれてるんだ。心配ないよ」




 ここで動画映像は終了。





○シェルター・遥とハルトの一室 (深夜)

 戻って、シェルターの応接スペース。




     遥 「ありがとうございます。みんなのこと、よろしくお願いします」

  秋山の声 「もちろんだよ。――じゃ、ただでさえ大変な時なのに、こんな辛い電話でごめんね」


     遥 「いえ、そんな。いつもありがとうございます」


  秋山の声 「じゃ……また」


     遥 「はい。おやすみなさい」


  秋山の声 「うん。おやすみ」




 そこで通話は終了。

 その途端、遥の目には涙がみるみる溢れてくる。




     遥 「勇太……」



 スマホをテーブルに置くと、両手で顔を覆った遥、丸まるような格好になって前方に突っ伏す。



     遥 「頑張って……勇太……頑張って……」



 遥、泣きながら嗚咽のような声で呟く。

 ここで暗転。








○ニューセレナ (深夜)

 秋山がカウンターのスマホの通話を切ったところ。


 スピーカー機能だったため、伊達も東城も電話の内容全てを把握している状態。


 伊達、驚きのあまり、感嘆の口調で言う。




   伊 達 「驚いたな……」

       「昔の遥なら、それこそ田宮のSPをなぎ倒してでも、宇佐美んとこに行っただろうが……」




 そして東城を見、



   伊 達 「おまえ、こうなるって予想してたのか?」



 東城、口元だけ少し微笑み、



   東 城 「いや。賭けだった」

   伊 達 「ったく、おまえって奴は……」




 またも後頭部をガリガリかいた伊達。

 すると秋山、改まった口調で言う。




   秋 山 「東城さん、ありがとうございました」



 東城、無言で秋山を見る。

 秋山、少し笑ってからカウンターに両肘をついて指を組み合わせ、正面を向いたまま、照れ隠しにとぼけたような調子で言う。




   秋 山 「俺のために賭けてくれて、ってことです」



 東城、フッと微笑む。

 その成り行きを見ていた伊達、やれやれという顔になる。


 その時、東城がスマホを取り出す。画面には「Withheld」とある。


 東城、念のためスピーカー機能にし、カウンターに置く。




   東 城 「Hello?」

  花屋の声 「よう桐生。いや、東城か」


   東 城 「おまえ……花屋か?」


  花屋の声 「そうだ。実は夏目が、直接おまえに伝えてくれと言うんでな」


   東 城 「夏目はこの番号を知らないはず――なんて、おまえには今更か」


  花屋の声 「全くだ」




 フッと笑う東城。

 味方からの電話――となったことで少し空気が和らいだところへ、さらに花屋が言う。




  花屋の声 「実はついさっき、錦山に似た奴が神室町のカメラに映ったんだ」

   東 城 「なに?」


  花屋の声 「サングラスをかけちゃいるが……。他のパーツや輪郭で解析照合しても、よく似てる」


   東 城 「今、どこにいる?」


  花屋の声 「分からねえ。5分前、天下一通りに入ってすぐのカメラに映っただけだ」


       「そのまま引き返したって可能性もある」


   東 城 「分かった、行ってみる」


  花屋の声 「おっと、その前にちょいと聞いといてもらいたい話があるんだよ。それこそが本題だ」


   東 城 「……何だ?」


  花屋の声 「これは今んとこ、俺と夏目だけが知ってることだ」


       「以前、夏目の依頼で動いてるうちに分かったことでな」


       「初代東城会会長が引退後に生死不明になったこと――」


       「それに少なからず関わってたはずの、斉木って奴のことだ」


   伊 達 「斉木? 誰だそりゃ?」




 ここで、いったん暗転。





○ニューセレナ (深夜)

 花屋の話がもう済んだ状態。




   伊 達 「そうか、錦山も風間のターゲットが遺した子供だったとはな……」

       「東城、おまえ、知ってたのか?」


   東 城 「いや。俺が知ってたのは自分のことだけだ」


       「風間のおやっさんが俺の親を殺したことと、その親ってのが初代だったこと」


       「その初代が、東城会や神室町の騒動の元になるまいとして引退し……」


       「のちのち東城会へ復帰しようとしたせいで、二代目に消される破目になったこと……。それだけだ」


   伊 達 「いや、それだけっておまえ……」




 伊達の同情溢るる表情を見た東城、ほんの少し微笑み、首を横に振って見せる。




   東 城 「俺は風間のおやっさんって人間を知ってる。そのおやっさんが俺の親を殺し、だが俺を助けてくれた」

       「なら結局はなるようになった結果なのかもしれない――と思った時には、確かに妙な気分だったよ」


       「どちらの味方にもつけねえ……」


       「その突き放した感覚で、自分の根源に関わることを判断しなきゃならねえってのはな」


       「だが、それだけのことだ」


   伊 達 「そうか……」




 しばしの沈黙。



   東 城 「ただ、その斉木って名前は、おやっさんの手紙にもあった」

       「斉木って兄弟分に初代が東城会復帰の意思を伝えたことで、二代目が動くことになったんだ」


       「だが、その兄弟分ってのがまさか、錦の父親だったなんてな……」




 東城、溜息。


 秋山、話を本題に戻すべく、花屋に問いただす。




   秋 山 「で、つまり神室町ヒルズの屋上にいたあいつが、その斉木って人かその恋人だった女性の息子……」

       「要は、錦山組長の片親違いの兄弟ってことなんですね?」


  花屋の声 「その可能性が高いんじゃねえかって話だ。少なくとも、錦山が生きてたって可能性よりはな」


   秋 山 「確かに、東城さんと同い年ってことなら若すぎる気はしますね……」


  花屋の声 「そうなのか?」


   秋 山 「ええ。屋上で見た時、遠目ではありましたけど、俺とタメぐらいかなと思いましたから」




 秋山が考え込む間に、花屋が言う。



  花屋の声 「とにかく、今からそいつを追うにしてもだ」

       「向こうが錦山を気取ってるのを鵜呑みにはしねえほうがいいってこった」


   東 城 「そうか……。分かった、ありがとう」


   花 屋 「(少し笑い) 礼なら真島組に言いな。今回の件に関しての情報料は、全て真島組持ちだからな」




 向こうから通話は切れる。

 東城、心の引っ掛かりが取れ、やや落ち着いた様子。


 それを見た秋山と伊達も、ホッとした様子。


 東城、小さく一息ついてから、立ち上がる。




   東 城 「よし。じゃ、行ってくる」

   秋 山 「俺も行きますよ」


   伊 達 「俺も行くぜ。人探しにかけちゃプロだからな」


   東 城 「そうか。じゃ、三手に分かれて探そう」




 ここで暗転。





〇天下一通り・セレナが入るビル前 (夜)

 ビル前でひとりで立つ秋山、内心考える。




   秋山M (じゃ、俺も探そう)



 ここから秋山、錦山に似た男を探すため、街に出ることに。

 【その神室町内にて、不良やチンピラとの戦闘や、サブストーリーに巻き込まれる】








〇神室町・天下一通り (夜)

T「17日前  2017年12月11日 02:03」


 天下一通りを歩いている秋山。すると不意に、




   女性A 「ね、ね、あの人、ちょっとイケてない?」

   女性B 「えー、夜なのにグラサンだよ?」




 というヒソヒソ声が聞こえたため、ついそちらを振り返る。

 そこでは仕事上がりのキャバ嬢らしき女性2人が、ある方向を見ながらおしゃべり中。


 その「ある方向」へと秋山が目をやると、何とそこには錦山に激似の男がサングラス着用で平然と歩いている。


 秋山、すぐさまそちらに駆け寄ろうとすると、それより早く伊達が別方向から、錦山似の男に近付いていくのが見える。


 伊達、秋山に目の動きと頷きかけだけで「任せろ」と合図してから、錦山似の男に近付き、話しかける。


 なので秋山はそちらへ近付いていき、伊達の背後辺りで立ち止まると、さりげなく2人のやりとりを見物することに。




   伊 達 「あー、ちょっとすいませんがね」

 錦山似の男 「ん? 何だ?」


   伊 達 「実は、こういうもんなんですが」




 と伊達は警察バッジを取り出し、見せる。



   伊 達 「昨日すぐそこの店で無銭飲食があったんです」

       「で、その犯人の人相風体とあなたがよく似てるんですよ」


 錦山似の男 「(不満げ) ええ? マジかよ……。つうか俺、そんなんしてねえよ。昨日は来てねえし……」


   伊 達 「分かります分かります」


       「そこでなんですが、ここは一つ、あなたの目を見せてもらえませんかね?」


 錦山似の男 「(ギョッとして) え?」


   伊 達 「いや、ほら、目ってのは一番印象が強いパーツですから」


       「その目さえ違ってれば、全くの別人だってことが一目瞭然なわけですよ。ですから、ね?」


 錦山似の男 「……どうしても見せなきゃいけねえのか?」


   伊 達 「どうか御協力願います」


 錦山似の男 「……しょうがねえな」




 カメラは錦山似の男の背後から撮る格好となる。サングラスを取った錦山似の男の素顔を見て、伊達と秋山は唖然。

 カメラが錦山似の男の顔を撮る。その双眸は他の部分と釣り合いが取れない極小サイズで、ゆるキャラ感があるレベル。




   女性A 「えっ、何か違う……」

   女性B 「だから夜のグラサンは地雷だって言ってんじゃん」




 無責任なヒソヒソ声と笑い声が聞こえてき、錦山似の男は悲しげに言う。



 錦山似の男 「もういいか?」



 伊達、申し訳なさそうな顔になる。



   伊 達 「ええ、もう、全然違いました。どうもすいません、御協力ありがとうございました」



 錦山似の男、サングラスをかけ直すと、足早に立ち去る。

 後頭部をガリガリ掻く伊達のすぐ横に、呆れ笑顔の秋山が立つ。


 ふと秋山、スマホを取り出す。振動する画面は「非通知」となっている。


 一瞬考えたのち、それに出ると、向こうからは花屋の声。




  花屋の声 「すまねえ。別人だったな」

   秋 山 「ええもう、とんだ骨折り損ですよ」




 秋山、すぐ近くの監視カメラに向けて、大きく手を振る。





〇賽の河原・モニタールーム (夜)

 モニター画面の向こうで、秋山が手を振っている。


 それを見ている花屋、苦笑い。




   花 屋 「目以外はよく似てたんだがな」

  秋山の声 「いやホント、ビックリしましたよ」






〇神室町・天下一通り (夜)

 天下一通りに立つ秋山のスマホから、花屋の声。




  花屋の声 「しょうがねえ。――宇佐美がいるのは琉球病院だったな?」


   秋 山 「ええ。それがどうしました?」


  花屋の声 「その病院の全ての防犯カメラ、うちで見張ってやるよ」


       「もし何かあったら、すぐ連絡してやる」


   秋 山 「ホントですか! そりゃ頼もしいなあ」


  花屋の声 「皮肉じゃねえだろうな?」


   秋 山 「いやまさか、本気で言ってるんですよ。だって、さっきのあれはしょうがないでしょ」


  花屋の声 「(少し笑ったのち) 東城にも言っといてくれ。病院のほうは任せろってな」


   秋 山 「はい。じゃ、よろしくお願いします」


  花屋の声 「ああ。じゃあな」




 通話終了。秋山、スマホをしまいながら、伊達に報告。




   秋 山 「お詫びとして、宇佐美くんの病院の防犯カメラを全部、花屋さんとこで見張ってくれるそうです」

   伊 達 「そうか! そりゃありがてえな」


   秋 山 「ええ。――そうだ、そのこととさっきのそっくりさんの件、東城さんに言っとかなきゃ」




 秋山、ホッとした顔で、スマホを操作し始める。


 そこで暗転。








○アメリカ・バージニア州マクレーン・CIA本部

T「17日前  バージニア時間 2017年12月10日 16:01」 (※日本時間は12月11日06:01)


 情報機器がずらりと揃っている施設。そこで、何やらひそかに作業している者がいる。


 モニター画面に写っているのは、遥がホテルの特別通用口から入る瞬間の防犯カメラの映像。


 作業している人物の背中側からカメラが正面へと回ると、真剣にキーボードを叩いているのはローガン。


 その時、不意に後方遠くから声がかかる。




   譲 二 「何をしている?」




 ローガン、ギクリとして振り返る。


 部屋に入ってきたのは譲二。


 譲二、その位置からモニター画面を見、眉をひそめる。




   譲 二 「パット、おまえまさか――」



 その瞬間、ローガンが銃を抜く。そのため譲二も銃を抜き――

 銃声がし、画面暗転。その暗闇の中、さらに銃声が数発響く。







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