Home > 「龍が如く七 再生者たち」 後編 > 四章 夏目編 暗雲

四章 夏目編 暗雲

四章 夏目編 暗雲 (1)



○東都大病院 (深夜)

T「18日前  2017年12月10日 01:08」


 ストレッチャーで東都大病院へ運び込まれた槇、すぐに手術室へと送られる。


 病院まで付き添ってきた冴島と真島、手術室のドアのすぐ外に立っている。




   冴 島 「あいつの頑張り次第やな」

   真 島 「せやな」


   冴 島 「それにしても……。結局、槇は犯人の一味やったんか? 仲間割れで撃たれよったんか?」


   真 島 「分からん」


       「何にせよ、六代目のことと関係ない個人的なビジネス――っちゅうのは、どうも眉唾やな」


   冴 島 「せやな……」






○ニューセレナ (深夜)

T「18日前  2017年12月10日 01:10」


 東城、奥のソファー席でひとり、深く考え込んでいる。


 カウンター席の伊達、隣の秋山に言う。




   伊 達 「そうか、まさか錦山がな」

       「12年前、あの遺体の状態じゃ身元確認は困難だったんだが……」


       「現場で回収した左小指、それの指紋が間違いなく錦山のもんだったんでな」


       「それで警察はカタ付けたんだ」




 秋山、顔をしかめ、



   秋 山 「じゃ、実は錦山さんはその現場に小指だけ落として逃げてたってことなんですか?」

   伊 達 「まあ……そうなるのかな」


   秋 山 「もしホントにそうなら……」


       「錦山さんのものとされた遺体が本当は誰だったんだ? ってことにもなってきますよね」


   伊 達 「そうだな。全く……頭が痛えよ」






○賽の河原・モニタールーム (深夜)

T「18日前  2017年12月10日 01:12」


 花屋、モニター画面をチェックしながら、スマホで夏目と話している。




   花 屋 「神室町ヒルズ屋上のカメラからは死角になってる」

       「4人が見たってのが錦山かどうか、これじゃ確認できねえ」


  夏目の声 「そうですか……」


   花 屋 「ところであんた、俺と同じことを考えてんじゃねえのか?」




 夏目、少し考えたのち、答える。



  夏目の声 「俺が考えてんのは、その錦山組長のフリをしてんのが、錦山組長の兄弟ちゃうんか――っちゅうことです」

   花 屋 「ビンゴだ。正直、12年前当時のミレニアムタワー最上階の状況で、錦山が脱出できたとは思えねえ」


  夏目の声 「はい」


   花 屋 「その上で、ニセモノがそうまで錦山に似てたなら……」


       「例の斉木に、錦山以外にもよその女と作った子供がいたとするほうが、まだ自然だろう」


       「もしくは、錦山の母親のほうが、離婚後にまたどこかで子供を産んだか……」


       「あるいは、何かもっと別のわけがあるのか……。そりゃまだ分からねえがな」


  夏目の声 「はい」




 ここから突然、花屋に向けてではない口調になり、




  夏目の声 「え? ――分かった、行くわ」


   花 屋 「ん? どうした?」


  夏目の声 「すいません、東城会本家から連絡メールが来たらしいです」


       「そこに犯人からのメールが添付されてたそうで……ちょっと見てきます」


   花 屋 「おう。じゃあな」


  夏目の声 「はい、また」




 ここで暗転。





○真島ビル・舎弟頭室 (深夜)

 若林が座って見ているパソコン画面を、夏目と庄司が背後から見ている状態。


 パソコン画面には、東城会からのメールに添付されていたとおぼしき、犯人からの要求メールが開かれている。


 その内容は以下の通り。




    12月12日の午前1時までに

    ミレニアムタワーの屋上に100億を積み上げ


    その上から透明ビニールシートをかぶせて四隅に重しを置け


    発信機はつけるな


    100億を回収し 本物と確認でき次第 会長を解放する




 以上のメール文を読んだ夏目、言う。



   夏 目 「その場で100億と六代目を交換っちゅうことではないんですね?」

   若 林 「そりゃそうだろう。要求額がバッグに収まる程度の誘拐でもそうなんだからな」




 しばらく考え込んだ夏目に、若林が問う。



   若 林 「どうした?」

   夏 目 「いえ……」




 夏目、納得いかなげな表情でメール文を見据え、考え込んでいる。

 その時、部屋のドアがノックされる。




   若 林 「何だ?」

   若衆G 「すんません! カシラにお電話です!」




 それで夏目、びっくり。



   若 林 「入れ」



 その合図により入ってきた若衆G、うやうやしく両手で子機を夏目に差し出す。



   夏 目 「電話て……誰からや?」

   若衆G 「それが、スターダストのユウヤと言えば分かるそうで」


       「えれえ剣幕で怒鳴りやがるし……。それを聞いてた本部長が取り次いでやれと言うもんで」


   夏 目 「ユウヤ……何や、わざわざうちの事務所の番号調べてかけてきたんか? どないしたんや……」




 夏目、子機を受け取り、通話状態にして話しかける。



   夏 目 「ユウヤ? どないした?」

 ユウヤの声 「夏目さん! すんません、すぐうちの店に来てください。お願いします」




 その緊迫した様子に気付き、真剣になる夏目。



   夏 目 「どないしてん?」

 ユウヤの声 「それが……。とにかく、来てくだされば分かります」


       「オーナーたっての希望ですんで、どうかお願いします」




 夏目、オーナーの一輝が何等かの窮地にあり、それをユウヤが何とかしようとしているらしい――と悟る。



   夏 目 「分かった、すぐ行く。いらんことせんと、じっとしとけよ」

 ユウヤの声 「ありがとうございます! お願いしま――」




 そこで通話はブツッと切れる。

 夏目、考え込む。




   庄 司 「兄貴? 何かありましたか?」

   夏 目 「スターダストに行かなあかん。何か問題があったらしい」


   庄 司 「あの店のことなら、風間組に連絡すれば済むことじゃないですか?」


   夏 目 「いや、俺が行かなあかんらしい」




 それにより庄司、真剣な態度になる。



   庄 司 「……ひょっとして、今回の犯人が何か仕掛けてきてるってことですか?」

   夏 目 「いや、分からん。――とにかく行ってくる」


   庄 司 「俺を置いていく気じゃないでしょうね?」




 そのとき夏目、一瞬何か奇妙な感覚に捉われたような表情になる。

 庄司、やや訝しげに夏目を見る。




   庄 司 「何です?」

   夏 目 「いや……何もない」




 奇妙な感覚を意識して振り払ったらしい夏目、いつもの軽い調子で庄司に言う。



   夏 目 「ま、淋しいのは分かるけどな、俺もひとりになりたい時はあんねん」



 庄司、さらに怪訝そうな表情になる。



   夏 目 「すぐ帰ってくるから、留守番しといてくれ。――ええな?」

   庄 司 「……分かりました」


   夏 目 「うん。ほなな」


   庄 司 「はい、いってらっしゃいませ」




 それから夏目、若林に向け、



   夏 目 「ほな、ちょっと行ってきます」

   若 林 「おう。気ぃ付けろよ」


   夏 目 「はい」




 そして夏目、舎弟頭室を出てゆく。

 庄司、それを御辞儀で見送る。


 それから体を起こした庄司の表情は、気がかりそう。


 ここで暗転。






○真島ビル・外 (深夜)

 ビルの外に出てきた夏目、内心考える。




   夏目M (ユウヤ、何があったんや……。はよ行ったらなな)



 夏目、スターダストへと向かうことになる。

 【ここからスターダストまでの間に、戦闘や、巻き込まれる系のサブストーリーをこなす】






〇千両通り北 (深夜)

 夏目が七福通り東→千両通り北の順で道に入ったところで、次のシーンのムービーへと移行。








○神室町・冴島道場 (深夜)

 冴島道場までやってきた真島と冴島。


 (※冴島道場は元・真島組事務所が入っていたビルの6階にある設定)


 道場内には個人スパーリングなどのメニューをこなしている客と冴島組組員たちがいる。


 いかにもなヤクザ風の男のみならず、護身術感覚で通っているらしいホスト、キャバ嬢、風俗嬢の姿もある。


 その光景を見ながら、真島はニヤリ。




   真 島 「イライラしとる時は暴れんのが一番や。これ、ええ商売やのう」

   冴 島 「遊びでやっとるんとちゃうぞ」


   真 島 「俺かて遊びちゃうでぇ? 本気で暴れさしてもらうつもりや」




 そこへ、ヒクソンが笑顔で駆け寄ってくる。



  ヒクソン 「こんばんは、冴島さん」

   冴 島 「おうヒクソン、今日も来とったんか。熱心やな」


  ヒクソン 「11枚チケット買いましたからね。日本にいる間に使い切らなきゃ」


   冴 島 「そら毎度」




 真島、ヒクソンをじっくり見てから冴島に質問。



   真 島 「誰や?」

   冴 島 「ヒクソンっちゅうて、ブラジル人や。こないだ迷子になってうちに入ってきよってな」


       「なかなか強いで」


   真 島 「ほぉ~~、そらオモロいやんけ。どや兄ちゃん、ワシと――」




 と言いかけたところで、真島のスマホが鳴る。



   真 島 「チッ、何やねん。ええ時に邪魔しよって……」

   冴 島 「こんな時や、連絡もひっきりなしやろ」




 真島、スマホに出る。

 (※以降、セリフの間を取る参考として、若林のセリフも括弧つきで表記。音声はナシ)




   真 島 「おう、何や?」


  (若 林 『すいません。さっき、夏目が呼び出されてスターダストに向かったんで、伝えとこうと思いまして』)


   真 島 「あぁん? 夏目が?」




 それを聞いたヒクソン、ギクリとした顔になる。しかし、真島も冴島も気付かない。



   真 島 「そないなもん、勝手に行かしといたらええやないか。いちいちワシに報告することあれへんで」

  (若 林 『しかし、ひょっとすると今回の犯人からの呼び出しって可能性も……』)


   真 島 「もし今回の犯人が相手やったら、夏目はひとりで何とかしよるて証明されとるやろが」


       「だいたい、どうせ庄司もついとるんやろ?」


  (若 林 『いえ、夏目がひとりで行くと言ったもんで』)




 そこで真島、真顔になって一瞬止まる。

 それからイラッとした表情になり、そのイラつきを振り払うようなそっけない調子で言う。




   真 島 「ほな、庄司だけ追わせぇ」

  (若 林 『分かりました』)


   真 島 「大丈夫や、心配せんでええ」


  (若 林 『はい。――それじゃ』)


   真 島 「おう、ほなな」




 通話を切った真島、ハーッと溜息。



   真 島 「どうもうちの舎弟頭は心配性で困るで」

   冴 島 「若林か? どないしてん」


   真 島 「夏目がスターダストに呼び出されて向かいよったんやと」


       「ほんで、それが今回の犯人の呼び出しやったらどないしよ――っちゅうてかけてきよったんや」


   冴 島 「あんな目ぇに遭わされよったばっかりや。若林が心配すんのは当然やろ」


   真 島 「心配が過ぎるっちゅうねん。俺らの商売でそないなことイチイチ心配しとったら身がもたんで」


   冴 島 「……おまえ、ほんまは心配やのに、わざと無視してへんか?」


   真 島 「あぁん?」




 真島、ジロッと睨み返す。

 冴島、平然と構えている。


 そこへヒクソン、おずおずと質問。




  ヒクソン 「あの、冴島さん……。その夏目という人は、冴島さんのお知り合いなんですか?」



 冴島、唐突な質問に少し驚いた様子で答える。




   冴 島 「せや。この真島の一番の子分でな。言うてみたら息子、俺には甥っ子みたいなもんや」

       「それがどないした? おまえ、夏目を知ってんのか?」




 ヒクソン、うつむき、黙りこくってしまう。

 真島、イラッとした様子。




   真 島 「何やっちゃうねん。言いたいことあるんならさっさと言えや」



 ヒクソン、うつむいたまま。



   真 島 「おまえ、ブラジル人なんやろ? ブラジル人はもっと陽気でハツラツとしてるもんちゃうんかい」



 ヒクソン、やはりうつむいたまま。

 そこで冴島、ヒクソンに言う。




   冴 島 「ここで話しにくいんやったら、屋上行こか」



 ヒクソン、顔を上げ、ホッとしたような表情で頷く。



  ヒクソン 「はい」



 それを見た真島、冴島のアマアマさに気抜けしたらしく、せせら笑うように、



   真 島 「ハッ」



 と言う。

 ここで暗転。






○天下一通り・スターダストの外 (深夜)

 やっとスターダストまでやってきた夏目、いざ入ろう――とした時、後ろから声がかかる。




   庄 司 「兄貴! よかった、間に合って!」



 夏目、驚いた様子で振り返ると、庄司が駆け付けてくるところ。

 その庄司に、つい咎め口調で言う夏目。




   夏 目 「庄司! おまえ、何してんねん! 留守番しとけ言うたやろ!」

   庄 司 「はい、してました。でも、若林さんが親父に連絡して」


       「そしたら親父が俺を応援にやれって言ったもんですから」




 夏目、軽く息をつく。



   夏 目 「そうか。親父の命令やったらしゃあないな」

   庄 司 「(笑顔で) はい」


   夏 目 「(苦笑し) ほな、行くで」


   庄 司 「はい」




 夏目と庄司、揃ってスターダストの中へと入る。

 ここで暗転。






四章 夏目編 暗雲 (2)



○神室町・冴島道場が入っているビルの屋上 (深夜)

 ヒクソン・冴島・真島の3人が屋上に立っているのが、やや遠景で映し出される。


 (※この屋上は、15年前に夏目が真島に自殺を止められた場所)


 3人の間近にカメラが戻ってから、ヒクソンが話し始める。




  ヒクソン 「まず、冴島さんに謝らせてください。俺が日本に来たのは観光じゃないんです」

       「それに……この道場に来たのも、迷子じゃありません」


       「東城会のナンバー2がやっているジムだと知ってて、来たんです」




 ヒクソン、深々と一礼し、一息ついたのち、説明を始める。



  ヒクソン 「俺の父は東城会に殺されました」

       「そのことを俺は、復讐に凝り固まった兄からずっと言い聞かされてきました」


       「CIAの任務中に殺されたと……」


       「その兄が先日、電話で「いよいよ復讐の時が来た」と言ったんです」


       「その後は連絡が取れなくなってしまって……」


       「俺は悩んだ末、東城会の本拠地と言われる神室町へ行くことにしました」


       「つまり、兄が殺人を実行するとなった時、
東城会という組織にいる人間がクソ野郎であることを確認したくなったんです」

       「そうであってくれれば、兄のやることを自分の中で正当化できると思って……」



 ヒクソン、いろんな思いを振り切ったのち、続ける。



  ヒクソン 「会長には近付きようがありませんでした」


       「けど、ナンバー2が意外なほど簡単に近付けると分かって……。だから俺はここへやってきました」


       「それで……冴島さんと出会ったんです」


       「今日までに冴島さんと何度か会って、話して……」


       「俺が期待したようなクソ野郎なんかじゃないことを思い知らされました」


       「いや、それどころか冴島さんは――ずっとそばにいたいと思うくらいの人だった」


       「あなたがナンバー2だとしたら、会長もクソ野郎じゃないのかもしれない」


       「なら、東城会は復讐されるような相手じゃないのかもしれない」


       「ひょっとしたら、父が何か良からぬことを仕掛けて、反撃されただけじゃないのか……」


       「そう思い始めていたんです」


       「もともと父という人は、兄にとっては神のような存在でしたが、
俺にとっては勝手な人にしか思えませんでしたから」



 そこで冴島、質問。



   冴 島 「おまえの親父は何ちゅう名前や?」

  ヒクソン 「リクソン。ジェラルド・アンドルーズ・リクソンです」


       「俺も本当は、リクソンでアメリカ人なんです」


       「ただ、生まれも育ちもブラジルなので、ブラジル国籍も持っています」


       「まして母がブラジル人なものですから、ずっと現地の発音でヒクソンと呼ばれているんです」


   冴 島 「そのリクソンっちゅうのは、いつ東城会に殺されたんや?」


  ヒクソン 「8年前です」


   冴 島 「8年前か……。実は俺、そん時はまだムショに入っとってな」


       「東城会からは破門――クビにされとる時期やったから、ちょっと分からんな」


  ヒクソン 「そうですか……」


   冴 島 「兄弟、おまえは何か知らんか?」




 と話を振られた真島、考え込む。



   真 島 「8年前か……8年前いうたら……ちょっと待てよ……」



 ひとしきり頭をひねった後で、やっと思い出す。



   真 島 「せや! ブラックマンデーや!」

   冴 島 「ブラックマンデー? 何やそれ?」


   真 島 「そういうわっるい集団がおってな。東城会をコマに使った大悪事を企みよったんや」


       「せやけど結局、その一味は全部始末されて、ボスも退治されよった」


       「ボスの名前は確か……リチャードソンゆうたな」




 それでヒクソン、飛び上がる。



  ヒクソン 「多分それです!」

       「何代か前の先祖が、リチャードソンからリクソンに改名してしまったことを、父はとても嫌がっていました」


       「それで俺が「また改名すればいいのに」と言うと、いつも妙な笑みを浮かべて――」


       「「仕事では本来の名を使ってる」と言ってましたから」


   真 島 「おまえ、それやったら東城会には何の非もあれへんで」


       「いま言うたとおり、リチャードソンは悪モンやったせいで退治されただけや」


       「しかも、うちの稼ぎ頭を巻き込んで死なせよって……。むしろこっちがカエシしたいぐらいやで」


  ヒクソン 「やっぱり……」




 ヒクソン、ガックリする。



   冴 島 「ヒクソン、おまえ、何で今その話をする気になったんや?」

  ヒクソン 「兄は、父が死んだのは東城会のせい――特に以前会長だった桐生という男と、現在会長である堂島」


       「そして、その手下の夏目のせいだと言っていたんです」


   真 島 「何やと? 桐生ちゃんと六代目はともかく、何で夏目が?」


  ヒクソン 「堂島を殺すために父が部下を向かわせた際、夏目が盾になったことで堂島は助かりました」


       「そのせいで彼は、父の部下を皆殺しにできたそうです」


       「そこから父の計画はどんどん狂ってしまって……」


       「最終的には父自身も殺されることになってしまった――と」


   真 島 「そんなもん完全な逆恨みやないか!」


  ヒクソン 「はい……」




 ヒクソン、辛そうに顔を伏せる。

 真島、スマホを取り出し、操作しようとする。が、なぜか指が動かない。


 それを見た冴島、真島に言う。




   冴 島 「スターダストに行ったほうがええんとちゃうか?」

   真 島 「せやな。――ヒクソン、教えてくれてありがとうやで」




 真島が階段に向けて走り出し、冴島もそれを追う。ヒクソンも、



  ヒクソン 「俺も行きます!」



 と言って、2人を追う。

 ここで暗転。








○スターダスト・店内 (深夜)

 夏目と庄司、スターダストの中に入ってくる。店内には客が全くいない。


 ホストたちが部屋の隅の1ヶ所に固まって、座り込んでいる。


 VIP席(フロア正面の中2階席)のソファー中央には一輝が座らされ、その頭には銃が突き付けられている。


 VIP席には銃を突き付けているボス格の他に、丸腰の手下10人(全員スーツ&サングラス姿)が直立不動で待機。


 VIP席へと向かう左階段の下では、ユウヤが何もできずに歯噛みしている状態。


 そのユウヤが夏目たちを見、大声で呼びかける。




   ユウヤ 「夏目さん! すんません!」

   夏 目 「ユウヤ! 何があった?」


   ユウヤ 「分からねえんです。あいつら、閉店後の店に押し込んできやがって……」


       「奥の部屋にいた一輝さんを引きずってきてああして……俺に夏目さんへ電話させて……」


   夏 目 「そうか……。巻き込んでもうたんやな、すまん」




 夏目、VIP席を見上げ、フロアに響き渡る声で問う。




   夏 目 「おまえら、カタギさんを巻き込んでどういうつもりや?」




 するとボス格、低く笑ったのち、流暢な日本語で答える。




  リクソン 「もう手段を選んでいられなくてな」


       「わざわざおまえのために、こんなショーを仕立ててやったんだ。誇りに思っていいぞ」




 ボス格、銃を持たないほうの手でサングラスを外す。

 その正体は、沖縄海上にて船の監禁部屋で夏目を撃ってきた、どこか白人っぽさのあるアジア人。


 つまり夏目は知る由もないが、ヒクソンの兄たるレイモンド・リクソン(33)である。




   夏 目 「おまえ……」



 夏目、一瞬言葉を失ったのち、声を荒げる。




   夏 目 「何でそこまでして俺を殺そうとすんねん!! 俺がおまえに何したっちゅうねや!?」


  リクソン 「そもそもおまえが邪魔立てしたことが、私の父のつまずきの元になったんだよ」


   夏 目 「……父やと?」


  リクソン 「そうだ。覚えていないか? リチャードソンを」




 夏目、驚いて目を瞠る。

 リクソン、少しニヤリとする。




  リクソン 「そう、8年前だ」

       「おまえがヒーロー気取りで東城会のボスの盾になったせいで……」


       「結果、父は大切にしていた部下を失い、そこから父の計画は狂いに狂っていった」


       「結局、父自身は東城会の元会長にいたぶられ、現会長に撃たれ……」


       「挙句、その第一の手下に殺された」


       「おまえは、父が全てを――命さえも――失う破目に追いやった、最初のドミノだったんだ」




 夏目、黙って聞いている。



  リクソン 「ドミノの連鎖反応というのを知ってるか?」

       「ドミノは、自分の1.5倍の大きさのドミノを倒すことができる」


       「そのドミノがさらに1.5倍のドミノを倒し、そのドミノがさらに1.5倍のドミノを――」


       「という具合に、どんどんひどい害をもたらしていく」


       「そして、いつかは超高層ビルでも、もっと巨大な何かでも倒してしまうんだよ」


       「最初のドミノはちっぽけなゴミのくせにな……。それがおまえだ」




 リクソン、怒りの感情が高ぶってきた様子。




  リクソン 「私はヒーロー気取りが大嫌いなんだ」


       「まして、そいつが最初のドミノとなり、いつか大きな実害をもたらすとなると、怖気立って胸が悪くなる」


       「徹底的に叩き潰しておかないと落ち着けないんだよ。父の復讐以前の問題だ」


   夏 目 「ほんで、自分は超高層ビル気取りかい。超高層ビルが泣くで」


  リクソン 「黙れ! ゴミが!」


   夏 目 「大体なぁ、まだ俺は、8年前の事件に関わってるで?」


       「けど、槇会長は本気で関係ないやんけ。何で殺そうとしてん?」


       「そら峯会長の子分やったかもしれんけど――」


  リクソン 「槇とは誰だ?」




 夏目、怪訝そうにリクソンをマジマジと見る。

 リクソン、とぼけているようでもなく、ただ事態が理解できないことにやや苛立っている様子。




  リクソン 「殺そうとしたとは、“私が”ということか?」

   夏 目 「……おまえが槇会長を殺すように、錦山組長に命令したんちゃうんか?」


  リクソン 「だから、槇とは誰なんだ? それに、錦山組長だと? おまえは一体何を言ってるんだ?」




 リクソン、夏目を蔑むような表情で見下ろしている。

 その瞬間に夏目、「こいつ、槇会長が撃たれた件とは関係ないんや」と勘で悟り、目を瞠る。


 その一瞬、リクソンが夏目との会話に夢中なのを見澄まして、一輝が立ち上がるなり、リクソンの頬をぶん殴る。


 その勢いでリクソンは銃を落としてしまい、それを一輝は右階段(出入口に近いほうの階段)へと蹴り飛ばす。


 それにより銃は、1階へと転がり落ちてゆく途中で段を外れ、どこかへ飛んでゆく。


 一輝はVIP席の正面から下へと飛び下り、真下にあるバーカウンターに着地したのち、叫ぶ。




   一 輝 「夏目さん! 俺はもう平気です、どうぞお好きに!」



 それで夏目、にやり。



   夏 目 「さすが天下のスターダストのオーナーや。やることがカッコええで」



 VIP席のリクソン、手下に向けて怒鳴る。



  リクソン 「何をしている! 早く夏目を取り押さえろ!」



 そして自分も拳銃を探すため、階段を駆け下り始める。

 一輝、ホストたちに向けて叫ぶ。




   一 輝 「おまえたち! 早く逃げろ!」

  ホスト達 「は、はい!」




 そしてホスト達、一斉に店外へと出てゆく。

 ユウヤ、リクソンの手下たちが階段を駆け下りてくるのを見て、決意の表情となる。




   ユウヤ 「ボッコボコにしてやるからな!」



 そのユウヤの宣言により、ここから「vs. リクソンの私兵」の戦闘となる。

 その戦闘に入る寸前、夏目は内心考える。




   夏目M (リクソンの身柄を押さえなあかん)

       (六代目を人質に取られてる以上、どんだけ他の奴を倒しても形勢は逆転されてまう)




 そのため、戦闘中はとにかくリクソンを狙おうとするが、手下が邪魔で全く近付けない。 (※そういうシステムになっている)


 他に戦闘に参加するのは庄司・一輝・ユウヤのみ。 (共闘ではなく背景)






○スターダスト・店内 (深夜)

 戦闘後。切り替わったムービーでは戦闘の終盤となっており、夏目たちが明らかに優勢。


 しかしリクソン、そこでやっと銃を物陰に発見。それを取り、その場から夏目を狙って構える。




  リクソン 「動くな!! 堂島がどうなってもいいのか!?」



 それにより夏目、その場に立ち尽くす破目になる。



   夏 目 「くそっ」



 夏目にならい、庄司・一輝・ユウヤも立ち尽くしたため、リクソンの手下も動かなくなる。

 しんとするフロアにて、夏目のリアクションを目の当たりにしたリクソン、心底驚き、嘲っている様子。




  リクソン 「まさか本気で、堂島の安全のためなら反撃さえしないというのか?」

       「呆れたな、何という大馬鹿なんだ」


       「うちの者に無駄な労力を使わせてしまったよ」


       「おまえがそこまで馬鹿だと知っていたら、最初から堂島の名を出していたのにな」




 リクソン、フロアまで出てくる。

 が、夏目からはかなりの距離を置いたところで立ち止まり、そこから続きを話す。




  リクソン 「あんな無能に殉じて、一体どうなるというんだ?」


       「いったん君主とした者には何があっても絶対服従――それが日本の奴隷の美学ってやつか?」


       「私には分からないね。全くもってナンセンスだ」




 夏目、リクソンを睨みつけているが、それでも微動だにしない。


 リクソン、心地よさげに滔々と続ける。




  リクソン 「おまえたちはそれを忠誠心と呼ぶのかもしれないが、結局それは怠け者の盲信に過ぎないんだよ」

       「自分で物事を考えようともせず……実際、虫ケラ以下だ」


       「それが分からないほどの馬鹿なのか? 何とか言ったらどうだ?」




 夏目、何も言わず、リクソンを睨みつけている。

 庄司、たまりかねて叫ぶ。




   庄 司 「兄貴、ダメです!! そいつ、ホントに撃ちます!!」



 するとリクソン、庄司のほうを見やり、ニタリと笑う。



  リクソン 「もちろんだ。それがどうした?」



 そして夏目に向き直ったリクソン、銃の狙いを定め、撃つ。

 しかし、咄嗟に飛び出して盾となった庄司が被弾、夏目の前で倒れ込む。




   夏 目 「庄司!!」



 と庄司を後ろから抱き起こす形で抱えた夏目。

 その夏目の頭部に狙いを定め直したリクソン、さらに撃とうと引き金を引く。


 が、ジャムって弾が出ないことが分かり、舌打ち。


 リクソン、手下に向け、号令。




  リクソン 「おい! 退け!」



 そしてリクソン一味、瞬く間に店を引き上げてゆく。

 一方、庄司は体の中心部に被弾しており、流血が止まらない。それを手で直接押さえる夏目。




   夏 目 「庄司!! 庄司!! あかんぞ、死ぬな!!」



 すると庄司、うっすらと目を開け、夏目を見上げる。



   庄 司 「兄貴……無事ですか?」


   夏 目 「俺は大丈夫や!!」


       「俺のことなんか心配してる場合ちゃう!! えらいことになってんのはおまえや!!」


   庄 司 「よかった……」


   夏 目 「よくない!! 死ぬなよ!! 絶対にあかんぞ!! 死なせへんからな!!」




 そこへ、真島と冴島とヒクソンが駆け込んでくる。

 真島、一瞬で状況把握。




   真 島 「おい! 救急車や!」

   ユウヤ 「呼びました! すぐ来ます!」




 庄司、夏目の腕に抱えられた状態で呟く。



   庄 司 「この先……守れなくてすいません」


   夏 目 「あかんっちゅうてるやろが!! 死ぬな!! 絶対に!! 許さんぞ!!」




 しかし庄司、意識を失う。

 救急車のサイレンが近付いてくる中、夏目は庄司を抱えたまま、震える歯を食いしばり、宙を睨み据える。

 そして暗転。







     >> 次ページ 「四章 秋山編 急転」
ブログ更新情報
ブログ一覧