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一章 秋山編 勃発

一章 秋山編 勃発 (1)



○天下一通り・スカイファイナンスが入るビル前 (夜)

 天下一通りの人の流れが映し出された後、通り沿いに立つビルの上階のスカイファイナンスの窓が映し出される。






○スカイファイナンス (夜)

T「23日前  2017年12月5日 19:45」


 応接スペースのソファーにて、秋山駿(39)は居眠り中。


 それを、外から戻ってきた秘書の花が怒鳴りつける。




     花 「もう、社長!! 何やってんですかぁ!!」




 おかげで秋山、やっとゆるゆる目が覚めてくる。



   秋 山 「あれ? 花ちゃん……。外回りの仕事に行くんじゃなかったっけ?」

     花 「なに言ってんですか!? もう行って帰ってきたんですよ!!」


       「て言うか社長!! まさかあのあと二度寝しちゃったんですかぁ!?」


   秋 山 「えっと……どうだったかな……」


     花 「私が出かけるところで記憶がストップしてるってことは、二度寝したってことですよね?」


   秋 山 「……そうね……そうなっちゃう、よね……」


     花 「もぉ~~!! 何やってんですかぁ!!」


       「今日は5軒も集金あるんですよ!? それも社長がためこんじゃってるせいなんですよ!?」


   秋 山 「はいはい……そうだったよね」


     花 「もうホント信じらんない!! 早く起きて集金行ってください!!」




 そこで秋山、花が持っている手提げのビニール袋(韓来の特選カルビ弁当3つ入り)を見、指さす。




   秋 山 「それ、すっごくいい匂いだね。出かけるの、食べてからでもいいよね?」

     花 「これは私のです!!」


   秋 山 「えっ? ……いや、あの、一つぐらいいいじゃない? たくさんあるんだし……」


     花 「私の分しか買ってきてません!! 欲しかったら自分で買ってきてください!!」


       「でもその前に5軒の集金、ちゃんとしてきてくださいよ!! いいですね!!」


   秋 山 「はぁーい……」




 と言いながら秋山、伸びをして大あくび。


 花、ガックリ。


 ここで暗転。






○天下一通り・スカイファイナンスが入るビル前 (夜)


 ビル前まで出てきた秋山、内心考える。




   秋山M (じゃ、集金に行くか)




 ここで表示された「集金に行くべき5軒の店」のうち、ともかく一軒へと向かって歩き出す。


 【その間に、不良(「おっさん、いい時計してんじゃん。金持ってんだろ、出せよ」)との戦闘、ヤクザ(「あんた、神室町で商売するってんなら、ちゃんとうちに払うモン払ってもらわなきゃな」)との戦闘などが入る】


 (※以降、秋山の「金持ちそう」「事実金持ちである」ということが、不良などに絡まれ戦闘に発展する要因となる)






○神室町・大通り (夜)


 引き続き神室町内を歩いている時、秋山のスマホがマナーモードで振動。


 取り出して見たスマホ画面には「宇佐美遥」の表示。


 すぐに出る秋山。




   秋 山 「やあ遥ちゃん、久しぶり。どうしたの?」


   遥の声 「お久しぶりです。あの、ちょっとお話ししたいことがあって……」


       「こんなこと、秋山さんにしか相談できなくて……」


   秋 山 「ああ、そりゃ光栄だね。いいよ、何でも聞いちゃうよ。なに?」


   遥の声 「あの……最近、アサガオの周りをうろついてる人がいるんです」




 秋山、途端に真剣な顔になる。



   秋 山 「それって、元アイドル・澤村遥を追ってる奴ら?」





○遥についてのスライドショー

 ここで、画面は「「龍が如く5」でのアイドル澤村遥の電撃引退」「「龍が如く6」の騒動後に「桐生死亡」を遥も信じたこと(尾道での最後のシーン)」「ネット掲示板にて、隠し撮りの写真(ハルトを抱く遥)が添付された「マジ子供抱いてたwww」の投稿」「琉道一家の若衆がアサガオ周辺を見回りしているところ」を説明する静止画像のスライドショーになる。

 そこに秋山の声が乗る形。




  秋山の声 「何しろアイドルがメジャーデビューと同時に引退。しかも元極道との家族宣言をした――」


       「そんなセンセーショナルな芸能ニュースだったからね」


       「しかも、去年の東城会の事件で桐生さんが亡くなって、
また“アイドル澤村遥”が蒸し返されることになっちゃったじゃない?」

       「清純派アイドルが子持ちの幼な妻に――なんてさ」


       「でも……。堂島さんが確か、琉道一家にアサガオの警備を委託したんだよね?」


       「だから、そこの若衆さんたちが見張ってくれてるんじゃなかったっけ?」


       「それで、アサガオに近付こうとする輩は激減したって聞いてたんだけど」


       「そのことを追い払われた奴らがネットで拡散したせいもあってさ」




 以上でスライドショーは終了。






○沖縄・アサガオ・台所 (夜)

 カメラは、アサガオの台所の遥に移る。




     遥 「それが、そういう人たちとは違って……」


       「今回の人は、いつも静かにこちらの様子を窺ってるだけみたいなんです」


  秋山の声 「……それって男? 女?」


     遥 「女の人です。それも走り方からすると、結構年配の人なんじゃないかと……」


  秋山の声 「そっか、それで琉道一家さんの警備の目をすり抜けてるんだな……」


       「分かった。じゃ、堂島さんにお願いしとくよ。そのことを琉道一家さんに伝えてもらうようにね」


     遥 「いえ、あの、その……」


  秋山の声 「ん? どうかした?」


     遥 「……私、知りたいんです。どうしてその人がうちの様子を覗きに来てるのか」


  秋山の声 「えっ?」


     遥 「だって、写真撮ってネットに投稿するとか、そういうことなら分かるんですけど……」


       「そうじゃないなら、どうしてうちを覗いてるのか……。気になるんです」


  秋山の声 「そうか、そりゃそうだよね。確かに、それはちょっと気になるな……」


     遥 「でしょ?」


  秋山の声 「分かった。じゃ、しばらく時間をくれないかな」


       「どうするか考えがまとまったら、こっちから連絡するよ」


     遥 「はい。すみません、こんなこと相談しちゃって……」


  秋山の声 「なに言ってんの、水臭いじゃない。それよりどう、みんな元気?」


     遥 「はい、元気にしてます。ハルトは最近じゃテレビ番組のダンス見て踊ってますよ」




 遥、居間のほうを見やる。

 居間では、ハルトが誰かのスマホでダンス動画を見ているらしく、テーブルのそばでスマホを見ながら、何やらダンスらしいステップを踏んでいるところ。




  秋山の声 「へえ! さすが遥ちゃんの息子だなあ」



 その瞬間、ハルトがバランスを崩して転び、その途中、頭をテーブルにぶつける。




   遥の声 「あっ!」




 その一瞬後、ハルトが声を限りに泣き出す。






〇神室町・大通り (夜)


 神室町内を歩いている秋山のスマホの向こうからは、子供の泣き声や大騒ぎが聞こえている。




   秋 山 「えっ、大丈夫? 何かあった?」


   遥の声 「すみません、ハルトが転んで、頭をテーブルにぶつけちゃって……」


   秋 山 「ああ、そりゃ大変だ、すぐ見てあげて。じゃあね」


   遥の声 「はい、すみません。失礼します」




 ここで通話は終了。


 秋山、スマホをいじりながら微笑み、独り言。




   秋 山 「子育てってのは大変だな」




 スマホをしまった秋山、内心考える。




   秋山M (それにしても……年配の女、か)


       (桐生さんじゃなさそうだな)






○(回想)去年のニューセレナでの光景のスライドショー

 ここで、画面は「去年のニューセレナにて、秋山が伊達に桐生の死の真偽を確かめようとしている一連のシーン」を再現・説明する静止画像のスライドショーになる。

 そこへ、当時の秋山の音声のダイジェストが乗る形。




  秋山の声 「桐生さんの死を確認したのはあなただけだ」

       「その後、遺体は不可解にも、すぐ火葬にされちまった」


       「いつか、本当のこと話せる日が来たら、そのときは違う答えを聞かせてもらえますよね?」




 ここでスライドショーは終了。





○神室町・大通り (夜)

 戻って、神室町内を歩く秋山、内心考える。




   秋山M (できれば、その女性を穏便に呼びとめて話を聞きたいんだけどな……)

       (となると、やっぱり俺が直接行くしかないか)


       (直接行くなら、堂島さんから琉道一家に伝えてもらったほうがいい)


       (連絡ナシでアサガオ周辺をうろついたら、きっと余計な揉め事が起きるからな)


       (さて、その堂島さんへのお願いを誰に頼むか……)


       (やっぱ夏目さんかな……。それとも真島さんか冴島さんか……)


       (あっ、そうだ)




 と思い立った秋山、ある人物に電話する。


 ここでいったん暗転。








〇錦栄町 (夜)

 名古屋・錦栄町の夜の通りが映し出される。






〇錦栄町・大通り (夜)

 大通りを歩く人物の足元から、カメラが上に上がってゆく。


 途中、その人物がポケットからスマホを取り出し、画面を確認しているらしい手元が映る。


 さらにカメラは上に上がってゆき、その人物・品田辰雄(42)の顔を映し出す。


 品田、ゴキゲンの笑顔でスマホに出る。




   品 田 「はいはーい! 秋山さん、お久しぶりっす!」




 その品田の大声に、道行く人はジロジロ見ていくが、ゴキゲンな品田は気にもしていない。



  秋山の声 「……君、相変わらず元気だね」


   品 田 「はい! おかげさまで元気にやってます!」


  秋山の声 「いや、それにしたって何か……いつにも増してテンション高くない?」


   品 田 「あっ、やっぱ分かっちゃいます?」


       「いやー、実はついさっき、プロポーズしたらオッケーもらっちゃいまして」


  秋山の声 「プロポーズ!? 君が!? オッケーもらったの!? 何で!?」


   品 田 「あっ、ひどいなー、秋山さん。これでも俺、あれから立ち上げた会社をちゃんと続けてんですよ?」


  秋山の声 「会社って、例の調査会社?」


       「でも、高杉とかいう闇金屋さん? しかお得意さんがいないんじゃなかったっけ?」


   品 田 「それでも充分商売は成り立ってますよ! 高杉さん、人使い荒いんですから!」


  秋山の声 「そっか。ってことは君もこれで、会社と家庭の両方を構えることになったわけだ。おめでとう」


   品 田 「あざっす! ――あれっ、ところで、何の用でしたっけ?」


  秋山の声 「いや実は、君にお願いがあってさ」


   品 田 「俺にですか? 何でしょ?」


  秋山の声 「君、堂島さんとお友達じゃない? “堂島くん”“辰雄”って呼び合う仲じゃない?」


   品 田 「はあ、ただ、その呼び合い方だと、あんま仲良し感ないかもって思ってんですよね……」


  秋山の声 「とにかく、その堂島さんに伝えてもらいたいことがあるんだよ」


   品 田 「伝えてもらいたいこと?」


  秋山の声 「うん、実は訳あって俺、今後アサガオの周辺をうろつくことになるんだよね」


       「だから、そのことを琉道一家さんに話通しておいてもらいたいわけ」


       「でなきゃ、向こうの若衆さんたちと無駄な取っ組み合いする破目になっちゃうから」


   品 田 「なるほどー、わっかりました。すぐ言っときますよ」


  秋山の声 「手間取らせちゃって申し訳ないね」


   品 田 「なーに言ってんですか、俺と秋山さんの仲じゃないですか」




 それから品田、やや怪訝そうな顔になる。




   品 田 「でも……秋山さんが直接行くなんて、アサガオで何かあったんですか?」


  秋山の声 「いや、今はまだ、ちょっと気になることがあるだけなんだけどね」


   品 田 「そっすか。でも、もし何かあるんなら声かけてくださいよ?」




 品田、ここで真面目な表情になる。



   品 田 「俺だって遥ちゃんのこと、桐生さんの分まで守ろうって決めてんですから」

  秋山の声 「もちろん分かってるよ。いざ手を借りたいとなったら、すぐに声かけます」


   品 田 「よろしくっす!」




 品田、桐生の死を全く疑っていない様子。






〇神室町・大通り (夜)

 戻って、神室町内。秋山のスマホの向こうから、品田の声が聞こえてくる。




  品田の声 「で、用ってそれだけですか?」


   秋 山 「うん、それだけ。悪いね、プロポーズ成功で幸せ真っ盛りな時に、こんなお願いしちゃって」


  品田の声 「いいんですよ。ちょうどいいです」


       「こんなキッカケでもなきゃ、こっちから堂島くんに電話するチャンスないんで」


   秋 山 「そっか。それじゃ頼んだよ。よろしく」


  品田の声 「はい! じゃ、また」




 そこで通話は終了。秋山、スマホをしまいながら溜息。




   秋山M (結婚か……)




 それから一瞬の間があったのち、思い切りをつける。




   秋山M (よし、とにかく集金だ)




 ここから、5軒の集金のミッションに入る。


 【この後、集金に行った先々や道中で、戦闘やサブストーリーに巻き込まれる】








○神室町・大通り (夜)


T「23日前  2017年12月5日 22:25」


 集金が終わった秋山。歩きながら内心考える。




   秋山M (さて、集金も全部終わったし、これからどうするかな……)



 その時、とあるビルの1階に入っているたこ焼き屋が目に留まる。看板は「たこ三昧」。

 秋山、その前で立ち止まる。




   秋 山 「買ってくか」



 そう呟いてから、店内に入る。






○神室町・たこ三昧 (夜)

 店内のカウンターの向こうでは、店員数人が作業中。


 その中で、ずばぬけていかつい体格&黄色い髪のせいで目立っている男がいる。店長代理の郷田龍司(41)である。


 秋山の姿を認めた龍司、自分なりの笑顔とぶっきらぼうな口調で、それなりに愛想よく話しかけてくる。




   龍 司 「いらっしゃい、秋山はん。中で食べはりますか? それともお持ち帰りで?」



 ここで龍司の顔の大写しになる。


 画面が一時停止し、画面下部に「元 近江連合直参二代目郷龍会 会長 郷田龍司」の表示。一時停止が解除。




   秋 山 「持ち帰りで四つ欲しいんですよ」

   龍 司 「ほな、そのへん座って待っとってください」




 秋山、入口近くの席に座る。

 その際、そのすぐそばの、ゲームソフトが展示・販売されている区画が目に入る。


 積まれているゲームソフトのタイトルは「YAKUZA DEAD SOULS」と「維新」。


 ゲームソフトの左上隅には制作会社名として「MAzMA®」と印されている。


 (※今作においての設定として、「「龍が如くOF THE END」「龍が如く 維新!」「龍が如く 見参!」は真島組が制作したゲームであり、出演者は全員、真島がスカウトしてきた神室町の人間である」ということになっている。つまり秋山と龍司とたこ三昧のおやっさんは「YAKUZA DEAD SOULS」での共演仲間であり、秋山と龍司は「維新」でも共演している)

 秋山、ゲームソフトを見て一瞬苦笑し、それから龍司のほうに向き直り、話しかける。



   秋 山 「大将の調子はどうですか?」


   龍 司 「おかげさんで、ぼちぼち店にも出るようになりました」


       「後ろからガミガミ言われたら、やっぱり安心しますわ」


   秋 山 「そうですか。そりゃよかった」




 その時、店の扉が開く。

 店内に入ってきたのは冴島大河(53)。


 その後ろには、どことなく白人っぽいが間違いなくアジア系であるジウベルト・ヒクソン(30)を連れている。


 冴島、秋山の姿を認めて、声をかける。




   冴 島 「おう、秋山。おまえも来とったんか」




 ここで冴島の顔の大写しになる。


 画面が一時停止し、画面下部に「東城会 若頭 直系冴島組 組長 冴島大河」の表示。一時停止が解除。




   秋 山 「ここ、美味しいですからね。 (ヒクソンを一瞬見てから) こちらは?」

   冴 島 「ヒクソンいうて、ブラジル人や。さっきうちの道場に迷い込んできよってな」


       「ここは格闘技ジムやて教えたら、自分も柔道やっとるからやってみたい言いよるから、
試しにうちのモンとやらしてみたら、なかなかのもんでな」

       「それで気に入って、タダで練習さしたったんや」


   秋 山 「ははあ、ブラジル人でヒクソンさんですか。そりゃ明らかに強いですよね」


   冴 島 「こいつのヒクソン、苗字やで。名前はジウベルトや」


   秋 山 「いやあ、でも柔道やっててそのガタイでヒクソンだったら、間違いなく強いでしょ」


   冴 島 「しかも、強いだけちゃうで。大学院で工学修めたっちゅうてな、日本語も俺より上手いぐらいや」


   秋 山 「へえ! そりゃすごいですね、文武両道なんだ」




 秋山に視線を向けられ、屈託なく微笑むヒクソン。




  ヒクソン 「母が日系ブラジル人ですから、そのおかげですよ」


   秋 山 「そりゃ、日系ブラジル人の一族の絆は強いってよく聞きますけどね」


       「でも、もう四世五世の時代になってるのに、そこまでネイティブに話せるのは……」


       「やっぱり、相当教育レベルの高いおうちってことですよね」




 秋山、感心しきり。ヒクソン、にっこり。

 そのとき龍司、冴島に声をかける。




   龍 司 「いらっしゃい。中で食べはりますか?」

   冴 島 「おう、中で食うわ」


   龍 司 「ほな、お好きな席にどうぞ」


   冴 島 「おう。――ほなな」




 冴島、秋山に軽く頷きかける。


 秋山、会釈を返す。




   冴 島 「おいヒクソン、こっちや」



 と、二人は連れ立って奥へと入っていく。


 そのタイミングで龍司、4つのパックが入った紙袋を秋山のほうに差し出す。




   龍 司 「秋山はん、どうぞ」

   秋 山 「おっと、早いですね」




 席から立った秋山、それを受け取ってから、釣りが出ないようきっちり払う。



   龍 司 「毎度」

   秋 山 「ども」




 そこで暗転。





○神室町・大通り (夜)


 秋山、スカイファイナンスに向けて歩いている。

 そこを、街の不良4人に囲まれる。


 秋山、やむなく立ち止まると、先頭の不良Dに絡まれる。




   不良D 「いいもん持ってんじゃん、俺らにくれよ。それともちろん、金もな」


   秋 山 「えっと……。これはとっても大切なおみやげだから、あげちゃうわけにはいかないんだよね」


       「それともちろん、お金もね」


   不良D 「ふざけてんじゃねえぞオッサン! とっとと寄こせってんだよ!」




 その瞬間、道の向こうから花の大音声。




     花 「社長~~!! も~~、何やってるんですかぁ!!」




 叫びながら駆けつけてきた花の登場に、不良たちポカン。




     花 「こんなところで遊んでる場合じゃないですよね!? 集金はどうしたんですか!?」

   秋 山 「集金ならもう済ませてきたよ。はい、これ」




 と封筒を5つ渡すと、花、びっくり顔。




     花 「えっ」



 そして手早く5つの中身を確認し、




     花 「えっ、ホントに集金してる。ウソ、ありえない」


   秋 山 「ありえないってことはないでしょ……」


     花 「だって社長、3軒の集金頼んだら1軒しかしてこないし、
1軒の集金頼んだらその日は集金してこないじゃないですか」

       「なのに5軒頼んで5軒の集金してる。どうしよう。こわい」


   秋 山 「あのねぇ、花ちゃん……」




 そこで不良D、イラッとして怒鳴る。



   不良D 「おいおめえら、何こっちほっぽってくっちゃべってんだ!?」



 しかし花、不良Dなど完スルー。




     花 「あと、さっきから気になってたんですけど、それ、何ですか?」




 と指さしたのは、秋山の持つ紙袋。




   秋 山 「あっ、これ? うん、おみやげ。たこ三昧のたこ焼き」


     花 「ええええ!? 私にですか!?」


   秋 山 「一個は俺のね」


     花 「どうしちゃったんですか社長!? いただきます!!」




 紙袋を引ったくった花、信じられないという面持ち。




     花 「何かびっくりしてフラフラしてきちゃったから、私、事務所に戻りますね」


   秋 山 「あっそう、お大事にね。――あの、一個は俺のだからね?」




 それに答えず去ろうとする花の肩に、不良Dが掴みかかろうとする。




   不良D 「このアマ――」

   秋 山 「おい、やめろ!」




 しかしやめようとはしない不良D、そのまま花に向けて手を伸ばしていく。


 次の瞬間、花は紙袋を持っていない側の手で、その不良Dの手首を掴み、引く。


 そして足払いだけで不良Dを一瞬空中に浮かせ、手首を放し、そのまま下に落ちるに任せる。


 不良Dが地面でもだえ苦しむ中、花はスタスタと歩み去ってゆき、秋山は溜息。




   秋 山 「だから言ったのに……」


   不良D 「この野郎!! ただじゃ済まさねえからな!!」




 ここで、「vs. 神室町の不良集団」の戦闘となる。


 戦闘終了後、長い暗転。






一章 秋山編 勃発 (2)



○沖縄・アサガオ

 翌日の午後の明るい日差しの下のアサガオと、その庭が映し出される。






○沖縄・アサガオの庭

T「22日前  2017年12月6日 15:15」


 ハルトと遥、庭で遊んでいる。


 (※平日なので、他の子どもたちや宇佐美は学校なり仕事なりで不在)




     遥 「ハルト、そろそろ中入ろっか。おやつにしよ」




 と言いながら体を起こした時、ふと、普通に歩いてアサガオに近付いてきた老女が目に入る。


 まだ覗き行為はしていないものの、いつもの人物ではないかと思い付く遥。




     遥 「あの!」



 老女、声をかけられたことで驚き、立ちすくむ。

 遥、老女に駆け寄りながら話しかける。




     遥 「あの、ひょっとして、いつも覗いてる方じゃありませんか?」



 老女、驚いた顔ののち、悄然として、無言でこっくり頷く。



     遥 「どうしていつも覗いてるんですか?」




 老女、うつむく。




     遥 「でも、私たちに何かひどいことをしようとしてるわけじゃないんですよね?」




 それにより老女、驚いたように顔を上げる。

 少し見つめ合った後、笑顔を浮かべる遥。




     遥 「一緒にお茶、飲みませんか?」



 しばしの間の後、老女は頷き、遥に誘われるままアサガオの中へと入る。


 いったん暗転。






○沖縄・アサガオの居間

 遥がお茶を出した途端、老女は少し後ろに下がり、その場に手を付いて頭を深々と下げる。


 遥、びっくり。




     遥 「えっ。……どうしたんですか?」


   老 女 「ごめんなさい。私はあなたに謝りに来たのよ」


     遥 「謝りに? どうして?」


   老 女 「……あなた、私のことを知らないのね?」


     遥 「はい」


   老 女 「そうね。そうでしょうね。きっと施設の人も話す必要はないと思ったんでしょう」




 老女、しばらく呼吸を整えてから、やっと話し出す。



   老 女 「私は支倉静子と言うの。旧姓は澤村でね」 (※これ以降、老女を「静子」と表記)

     遥 「えっ!」


   静 子 「あなたのお祖父さんの妹よ。つまり……」


       「あなたのお母さんにとっては叔母で、あなたにとっては大叔母ってことになるわ」


     遥 「大叔母さん……本当に? 私、親戚がいたんですか?」




 静子、無言で頷く。




     遥 「なら、どうして今まで会いに来てくれなかったんですか?」

   静 子 「……夫がいたから……」


     遥 「旦那さん?」


   静 子 「私……今はDVっていうのかしらね? 結婚したその日から、ずっと夫に虐げられてきたの」


       「兄が死んだ時も、夫は由美が相続した兄の土地をどうにかして巻き上げてきて……」


       「勝手に売り飛ばし、そのお金のほとんどを自分の懐に入れてしまったわ」


       「むろん由美を引き取ることも許されないまま、私はただ日々虐待されてきたの」


       「ある日、あなたがアイドルになってテレビに出ているのを見たわ」


       「一目で分かったわ……。兄に似ていたし、名字も澤村って……」


       「でも、そのことは、夫が芸能界に疎いのをいいことに黙っていたの」


       「言えば、またろくでもないことを企むのは分かり切っていたから……」


       「あなたを育ててくれた桐生さんには、とても感謝しているわ」


       「去年亡くなったことを知った時には、こっそり手を合わせたくらい」




 遥、無言で静子を見つめている。




   静 子 「先月、夫が他界したの」


       「それで、もう矢も楯もたまらず沖縄へ飛んできてね」


       「時々ここまでやってきては、つい中を覗いていたの」


       「それで……とうとう、こんなことになって」




 静子、涙を拭いたのち、また深々と頭を下げる。




   静 子 「遥ちゃん、ごめんなさい。私、何もできなくて……」

       「あなたとあなたのお母さんには、とても辛い思いをさせてしまったわ」


       「許してなんて身勝手を言うつもりはないの。ただ……本当にごめんなさい」




 静子、ただジッと突っ伏している。

 遥、しばらくして静子の許に近付き、すぐそばで優しく呼びかけるように声をかける。




     遥 「いえ、いいんです。それに、私もお母さんも、辛い思いなんかしませんでしたから」



 驚いて顔を上げる静子に、遥は笑顔を向ける。



     遥 「だって、ヒマワリはみんな優しくていいところだったし……。もちろん、ここもそうなんです」

       「それに、私にはおじさんが――桐生さんがいてくれたから」


   静 子 「遥ちゃん……」


     遥 「それより、大叔母さんこそ大変でしたね」


       「そんなひどい旦那さんにいじめられて、かわいそうに……」




 心から気遣う遥に、静子は胸を打たれた様子。それからまた涙々となる。


 そこで暗転。








○沖縄・アサガオの居間 (夜)

T「22日前  2017年12月6日 19:06」


 居間にて、静子も含めて子供たち全員が夕食をとっている。宇佐美は不在。


 テーブルの上の料理が何となくオシャレで豪華っぽい。




   太 一 「これうんめー!」


     遥 「ぜーんぶ大叔母さんが作ってくれたんだよ。材料も大叔母さんのおごりなの」


     泉 「すごいね、レストランのお料理みたい」




 と、子供たちも大喜び。


 静子は皆とにこやかに話しており、とても楽しげ。


 子供達には「感じのいいおばあさんで、遥お姉ちゃんの大叔母さん」ということで、すっかり受け入れられたのが見て取れる。


 遥、満足そうな笑顔。

 いったん暗転。






○沖縄・アサガオの台所 (夜)

 静子と子供たち、居間で楽しげに話している。


 遥、その様子をシンクを拭き終えながら見ていたが、ふと思い付いた表情になり、スマホを取り出すと、どこから電話をかける。


 秋山、すぐに出る。




  秋山の声 「やあ、遥ちゃん。どうしたの? 例の人、また来た?」


     遥 「はい、あの、そのことで、お伝えしなきゃと思って」


       「実は、アサガオを覗いてた人、私の大叔母さんだったんです」


  秋山の声 「大叔母さん!? そうなの!? えっ、遥ちゃん、大叔母さんがいたの?」


     遥 「そうみたいなんです」


       「言われてみれば、確かに昔、
ホントに小さい時に、お母さんから聞いたような気はするんです。おばさんがいるのよって……」

       「でも、施設長もおじさんもそんなことは何も言わなかったから、
記憶も曖昧だし、ずっと忘れてたんです」

  秋山の声 「そうなんだ。じゃ、その大叔母さんが会いに来てくれたってことだったわけ?」


     遥 「はい、そうなんです。それで今日も来てくれたところを、こっちから声かけて……」


       「それから話してみて、やっと事情が分かって……」


       「実は今、うちのみんなと一緒にごはん食べ終わったところなんです」


  秋山の声 「そうなんだ!」


     遥 「はい。――御心配おかけしてすみませんでした」


  秋山の声 「いやいや、いいのいいの。でもそうか、大叔母さんだったのか。会えてよかったねぇ」


     遥 「(笑顔で) はい」


  秋山の声 「ただ、いちおう確認のために調べたいからさ」


       「その人の名前と、できれば住所、教えてくれないかな?」


     遥 「はい、支倉静子さんです。住所はまだ詳しくは……」


       「今は沖縄のホテルにいるけど、名古屋の錦栄町におうちがあるそうです」


  秋山の声 「そっか、分かった」






○神室町・大通り (夜)

T「22日前  2017年12月6日 20:04」


 神室町内を歩く秋山、遥とスマホで通話中。




   秋 山 「じゃ、何か分かったら連絡するから。――うん、またね」



 と通話を終えたのち、内心考える。



   秋山M (大叔母さんか……。ホントかな?)

       (名古屋の錦栄町ってことは……)


       (やっぱり、彼に頼むか)




 秋山、スマホで電話をかける。出たのは品田。



  品田の声 「はいはーい! 堂島くんにはちゃんと言っときましたよ」

       「堂島くんもすぐに名嘉原さんに言っとくって言ってました」


       「だから多分、もう沖縄行っちゃって大丈夫ですよ」


   秋 山 「そっか! ホントありがとね」


       「ところで、それとはまた別に、ちょっと相談があるのよ」


  品田の声 「はい! 何でしょ?」




 ここで暗転。





○神室町・大通り (夜)


 引き続き、神室町内を歩いている秋山。


 すでに品田に事情を説明し終わった状態。




  品田の声 「そうだったんですか。じゃ、その支倉静子って人の身元を確認したいんですね?」


   秋 山 「そうなんだ。どう、できる?」


  品田の声 「と言うかですね。支倉って、錦栄町で超有名な資産家の名前ですよ」


   秋 山 「そうなの!? じゃ……」


  品田の声 「はい、何ならこれからすぐ、支倉家とその奥さんのこと聞いてきますよ」


       「錦栄町にめちゃくちゃ詳しい人がいますんで」


   秋 山 「そりゃ助かるなあ! じゃ、正式に仕事として依頼するんで、一つよろしく」


  品田の声 「わっかりました! じゃ、待っててください!」




 そこで通話は終了。秋山、内心考える。




   秋山M (さて、じゃ……どうするかな)



 するとそこへ、昨日の不良4人にさらに2人プラスされた、不良集団6人が登場。

 その先頭には不良Dがいる。




   不良D 「てめえ!! 昨日はよくもやりやがったな!!」

   秋 山 「やりやがったも何も……勝手にケンカ売っといて、へたばったんじゃない」


   不良D 「うるせえ!! (背後に向け) おい、やっちまえ!!」




 ここで、「vs. 神室町の不良集団」の戦闘となる。






○神室町・大通り (夜)

 戦闘後。道に転がる不良集団を見ながら、秋山は内心考える。




   秋山M (とりあえず、会社に戻るか)



 ここから、「スカイファイナンスに戻る」のミッションに入る。

 【その道中、神室町内で絡まれて起こる戦闘や、サブストーリーなどが入る】






○神室町・スカイファイナンス前 (夜)

 スカイファイナンス前まで戻ってきた――という時、立ち止まった秋山、スマホを取り出す。


 振動する画面を見、すぐに出る。




   秋 山 「もしもし? どうだった?」

  品田の声 「はい! 話全部聞いてきました!」


   秋 山 「めちゃくちゃ早いね! じゃ、さっそく報告願えるかな」


  品田の声 「はい! えっとですね……」


       「支倉って人は、もともとバブル期に土地転がしで当てたんだそうです」


       「しかもその絶頂で全部売り払ったおかげで、勝ち逃げの形で財を成したそうで」


   秋 山 「へえ! そりゃラッキーな人もいたもんだ」


  品田の声 「で、奥さんの名前は静子だし、旧姓もちゃんと澤村だそうです」


   秋 山 「そっか、よかった!」


  品田の声 「ただ、その支倉って人、先月に亡くなってます」

   秋 山 「(怪訝そうに) 亡くなってる?」


  品田の声 「はい。で、奥さんはその静養ってことで、二週間くらい前から沖縄に行ってて、しばらくこっちに戻らないそうで」


       「だから、そこも遥ちゃんの話と合ってました」


   秋 山 「ああ、そういうことね。そっか、それなら大丈夫そうだな……」


  品田の声 「あと、「大きな声では言えないんだけど」って教えてもらったんですけど……」


       「死んだ旦那がずっと奥さんを苛め抜いてたらしいです。いわゆるDVってやつですね」


   秋 山 「そうなんだ……。そりゃ気の毒な話だね」


  品田の声 「はい。で、そんな奥さんなんで近所付き合いもないらしくて……」


       「ご近所さんと一緒に写ってる写真とかってのは、手に入りそうになかったんです。すいません」


   秋 山 「そっか、それは残念だな……」


  品田の声 「以上が仕入れてきた情報です。――役立ちました?」


   秋 山 「ああ、もちろん。いやあ、さすがだね。後で調査費用と口座番号をメールしてね」


  品田の声 「あざっす! 今後もどうぞごひいきに!」


   秋 山 「たださ、その奥さんの写真を手に入れるまで、もうちょい粘ってくれないかな?」


       「もちろん追加料金は弾むからさ」


  品田の声 「わっかりました! じゃ、本腰入れてやってみます!」


   秋 山 「うん。じゃ、よろしく」




 そこで通話は終了。秋山、内心考える。




   秋山M (これが神室町のことなら、花ちゃんに聞けば一発なんだけどな……)

       (ともかく、遥ちゃんに報告しとこう)




 と、スマホを操作。

 ここで暗転。






○沖縄・アサガオ (夜)

 玄関先にひとり立っている遥、スマホで秋山から報告を全て受けたところ。満足げな笑顔。




     遥 「はい、本当にありがとうございました。――はい、また」



 すっかり安心した遥、笑顔で通話を切る。

 そこへ、外から綾子が駆け込んでくる。




   綾 子 「遥お姉ちゃん! おばさんが帰っちゃうよ!」

     遥 「ごめんごめん!」




 遥、慌ててサンダルを履き、綾子と共に外へ駆け出す。

 アサガオの前で停まっているタクシーの中には、静子の姿。


 タクシーの窓のすぐ外には、子供たちが集まっている。




   三 雄 「また来てよね!」

   太 一 「絶対だよ!」




  太一、ハルトをだっこし、車内を覗かせている状態。

  静子、そのハルトと一瞬目が合い、それからにっこり。


  ハルト、それに対し、にっこりを返す。




   静 子 「ええ、もちろん。まあみんな、危ないわよ……」



 とにぎやかなお見送りの中、静子、やってくる遥の姿に気付き、にっこりと微笑みかける。


 遥、にっこり微笑み返す。


 そして、タクシーは走り去る。


 遥、気持ちを切り替えるような調子で皆に言う。




     遥 「よし、じゃあみんな、順番にお風呂だよ。今日は遅くなっちゃったから、ちょっとずつ急いでね」




 それから皆わらわらとアサガオの中へ戻る。

 遥、ほぼ最後にハルトと共に家の中に入ろうとした時、後ろからおずおずと声をかけられる。




     泉 「遥お姉ちゃん」



 遥が振り返ると、突っ立っているのは泉。何やら深く思い悩んでいる様子。


 遥、笑顔を向ける。




     遥 「ん? どうしたの?」

     泉 「あのね……さっきの人」


     遥 「うん」


     泉 「遥お姉ちゃんたちの部屋に入ってたよ」


     遥 「えっ?」


     泉 「あの人がお手洗い行くって居間から出た後、あたしも行きたくなっちゃって……」


       「だから、しばらく待って行ったの」


       「そしたらあの人、遥お姉ちゃんたちの部屋から出てきて……」




 それにより遥、一瞬考えたのち、努めて明るい表情で言う。



     遥 「じゃ、トイレのほうに行こうとして、間違えたのかもね?」

     泉 「……何回目かのトイレなのに、間違えないでしょ」





 納得していない泉の肩を、優しくとんとんと叩く遥。




     遥 「よそのおうちだと間違えちゃうこともあるよ。それにほら、ここ、けっこう広いし」

       「初めて来た人には分かりにくいかも」


     泉 「……そうかな……」


     遥 「でも、心配してくれたんだね。ありがとね」


     泉 「――うん!」




 ホッとした笑顔になった泉に、笑顔を向ける遥。



     遥 「じゃ、お風呂の支度しといで?」

       「今日はもう前の子が出てくるのを扉の前で待ち構えてるくらいでなきゃ」


     泉 「(あははっと笑い) そうだね。うん、支度してくる」




 元気に家の中へと駆け込んでいった泉を見送った後、少し怪訝そうな顔をする遥。


 そんな遥を見上げ、不安げなハルト。




   ハルト 「おかあさん?」




 そのハルトの表情に気付いた遥、ひとまず気持ちを切り替え、笑顔を見せる。




     遥 「さ、じゃ、もう寝よっか?」

   ハルト 「……ん」


     遥 「今日は楽しかったねぇ。続き、夢で見れるといいね」


   ハルト 「みれるかなぁ」


     遥 「見れるよー」




 そうして遥とハルト、アサガオへと入っていく。

 そこで長い暗転。






一章 秋山編 勃発 (3)



○沖縄・アサガオ内の廊下

T「21日前  2017年12月7日 14:05」


T「翌日」 (※画面左上部のテロップとは別に、画面右端に縦書きの筆書きで出す)


 遥、アサガオ中の掃除機がけを終えたところ。


 そこへ、玄関を開ける音。




  静子の声 「こんにちは」




 遥、驚いたような表情になった後、すぐに返事。




     遥 「はーい」






○沖縄・アサガオの玄関

 遥、急いで玄関までやってきて、そこに静子が立っているのを見る。


 静子、にこにこ微笑んでおり、手にはケーキらしき箱を持っている。




   静 子 「こんにちは。昨日とっても楽しかったから、つい今日も来ちゃったの。――みんなは?」

     遥 「まだみんな、学校と仕事です」


   静 子 「まあ、そうよね! 平日なんだものね……」


       「ごめんなさい、私ったら、曜日を考えないで生活してるものだから……」


     遥 「(笑顔で) いえ、いいんです。ちょうどお茶にしようと思ってたから。どうぞ上がって」




 遥に招き入れられ、静子は家に上がる。

 ここでいったん暗転。






○沖縄・アサガオ・居間

 机の上に食べ終わった皿などがあり、お茶を飲んでしばらく経ったものと見受けられる頃。




   静 子 「ごめんなさい、お手洗いお借りするわね」




 と静子、席を外す。

 居間にハルトと2人きりになった遥、静子の動向が気がかりで気がかりでたまらないが、まさかすぐに追うわけにもいかず……と葛藤。


 しかし、ようやく決心。




     遥 「やっぱりちゃんとしなきゃ!」




 と立ち上がると、ハルトも立ち上がる。


 そのため遥、少し困った顔になる。




     遥 「ハルトはここで待ってて?」

   ハルト 「やだ」


     遥 「ちょっとだから。ね?」


   ハルト 「やだ」




 ハルト、頑として譲らない表情で遥を見上げている。幼少期の遥そのまんま。


 遥、諦めの溜息をつき、ハルトに手を差し出す。




     遥 「わかった、行こ」

   ハルト 「うん!」




 そして2人は手をつなぎ、自室のあるほうへと向かう。





○沖縄・アサガオ・宇佐美夫婦の部屋

 遥、開いたままになっている引き戸から、そっと中を覗く。


 すると、静子が押し入れの奥を探っている最中。




     遥 「何してるんですか?」



 遥、室内に入りながら、強めに声をかける。

 すると静子、振り返るなり、キッとした顔で遥を睨みつける。




   静 子 「見りゃ分かんだろ、白々しい言い方していやらしい子だね。そうさ、金を探してたんだよ」

       「ここ、相当の援助をしてもらってんだろ?」


       「あんたのバックには、大きな暴力団のお偉いさんがついてるそうじゃないか」




 静子、押し入れの中から掴み出していたハルトの乳児期のぬいぐるみを、憎々しげに床に叩きつける。



   ハルト 「だめー!」



 ハルトは叫び、そちらに駆け寄っていく。

 遥、驚くが、止めるのが間に合わない。


 そばに来たハルトを抱きすくめた静子、ハルトの首にナイフを突きつけ、遥を下から見据える。




   静 子 「さあ、とっとと出しなよ。あるだけカバンに詰めて持ってくるんだ」

       「現金商売しかできないヤクザは、ほどこしも現ナマで寄こすんだろ?」


     遥 「お金なんかありません! 本当です!」


   静 子 「(チッと舌打ちし) どこまで馬鹿な小娘なんだ。そんなウソをあたしが信じるとでも思うのかい?」




 さらにナイフをハルトに近付けたため、切っ先が少しハルトの皮膚をかする。



     遥 「やめて!」



 その叫び声と傷の感覚により、泣き出すハルト。

 静子、ハルトを抱きかかえて立ち上がる。




   静 子 「ああ、ああ、もう台無しだよ」


       「あんたがおとなしく出すもの出してりゃ、あたしもここまでしなくて済んだんだからね」


       「みんな、あんたのせいだ」


       「近付くんじゃないよ、下がりな。でなきゃこの坊やがどうなるか……」




 静子と睨み合った遥、睨み据えたままながらも、じりじりと後ずさる。

 静子が進み、遥が下がるを繰り返し、遥が廊下をだいぶ下がったところで、やっと静子は部屋の外に出る。


 その瞬間、静子はハルトを抱いたまま、裸足で脱兎のごとく外へ飛び出す。




     遥 「待って!」




 遥も追うが、静子は老女らしからぬ健脚で、飛ぶようにアサガオを駆け出していく。


 もちろん遥も追いかける。






○沖縄・アサガオ外の道

 外に出てかなり行った先に、黒い車が停まっている。

 その脇に、サングラス&スーツ姿の男・ホサカが立っている。

 ホサカは40前後の年配で、身長185㎝ほど。スーツ越しにも鍛えられた体であることが見て取れる。


 そこへ駆けつけた静子、ハルトを渡す。


 ホサカ、ハルトを受け取ると、すぐさま車の中へパス。


 車の中で受け取ったのもサングラス&スーツ姿の、別の男。


 やっと駆けつけつつある遥の耳に、静子がホサカに言っているセリフが聞こえてくる。




   静 子 「さあ、やったよ。残りの金をよこしな」



 ホサカ、その瞬間に銃を構え、静子の額を撃ち抜く。

 静子、スローモーションで後ろにばったり倒れる。

 遥、その光景を目の当たりにし、一瞬立ち尽くす。


 ホサカ、その遥を一瞥したのち、すばやく車に乗り込む。


 ドアが閉まり、ハルトの泣き声も聞こえなくなる。


 その途端、車は爆走で去ってゆく。


 遥、悲鳴に近い声で叫ぶ。




     遥 「ハルト――!!」




 そこで長い暗転。








○沖縄・アサガオ・居間 (夜)


T「21日前  2017年12月7日 20:15」


 居間にて、遥と宇佐美が身を寄せ合って座っている。そばには私服警官の姿もある。


 子供たちがそれぞれの部屋でひっそりしている映像が1コマ入る。


 その時、玄関から声。




  秋山の声 「すいませーん」



 それにより私服警官が警戒態勢を取ろうとするが、遥が立ち上がる。




     遥 「大丈夫です、知り合いです」





○沖縄・アサガオの玄関 (夜)

 遥、玄関に駆け付ける。


 そこに立っていたのは、秋山と品田。




     遥 「秋山さん。品田さんも……」


   秋 山 「何ができるか分からないけど、居ても立ってもいられなくて来ちゃったんだ。――ごめんね」




 その「ごめんね」に込められた意味を悟った遥、首を横に振る。



     遥 「いいえ、ありがとうございます。お二人とも、本当に」



 ここで、いったん暗転。





○沖縄・アサガオ・宇佐美夫婦の部屋 (夜)

 部屋には遥と宇佐美、秋山と品田の4人だけ。




   秋 山 「ハルト君をさらった女、支倉静子じゃなかったよ」

     遥 「……えっ?」


   秋 山 「情報屋から聞いてきたんだけどね」


       「警察が身元確認のために支倉家に連絡して、すぐ家政婦が奥様のスマホに電話したら――」


       「奥様とは問題なく繋がったんだよ」


     遥 「えっ!」


   秋 山 「それから警察は、沖縄に静養に来ていた彼女に話を聞きに行った」


       「その後の裏取り捜査で、彼女が本物の支倉静子であることを確認したんだ」


     遥 「そうですか……。じゃあの人、ニセモノだったんですね……」


   秋 山 「置き引き・万引き・詐欺の前科十数犯って札付きでね」


       「メイクで老け顔に作ってたけど、ホントは50そこそこらしい」


     遥 「そんな……」


   秋 山 「遥ちゃんが聞いた会話から推測するなら……」


       「彼女はハルト君を誘拐するために、ニセの支倉静子として送り込まれたんだ」


       「犯人は、遥ちゃんと2人きりのアサガオから連れ出すほうが確実と見たんだろうね」


       「人目に付く街中で拉致するよりも……」


       「だから主犯は本来、遥ちゃんの目を盗んで、ハルト君をこっそり連れ出させるつもりだったんじゃないかな」


       「
そうすれば、アサガオからハルト君が消えたとなった時、主犯はニセの支倉静子に全てを負わせることができるからね」

       「でも、ニセモノはしくじった」

       「だからああなったのか、最初からいずれどこかで始末される予定だったのか……。そこまでは分からない」




 遥、力なく頭を垂れる。

 宇佐美、隣から遥の肩を抱く。


 遥、そちらに寄りかかる。




   宇佐美 「秋山さん、誰がこんなことを? 何のためにハルトを?」

   秋 山 「分からない。ただ、これが金銭目的の営利誘拐だとしても……」


       「少なくとも主犯の狙いは、アサガオに援助された大金なんかじゃないだろうね」


       「それなら誘拐より押し込み強盗のほうがよっぽど楽だ」


       「だけど、ニセモノには、その金狙いの誘拐だと言ってあったんだろう」


       「だからこそニセモノは、主犯から前金を受け取って指示に従うフリをしながらも、
アサガオから残りの金額相当の金を盗んで逃げるつもりだったんじゃないかな」

       「それなら同額の金を手に入れた上、誘拐には加担しなくて済むからね」


     遥 「そっか……」


       「だからあの人、さっさと出せばここまでしなくて済んだとか言ってたんだ……」


   秋 山 「で、我々としては、これが単なる金銭目的の営利誘拐であってくれたほうが、むしろありがたかったくらいだけど……」


       「そうでない可能性があるからには、そこを見ないわけにはいかない」


   宇佐美 「はい」


   秋 山 「だから実を言うと、君のほうのことも調べてきたんだ」


   宇佐美 「はい……」


   秋 山 「まあ、君というよりは広瀬一家と祭汪会のほうだね」






○宇佐美の過去を説明するスライドショー

 ここで、画面は「陽銘連合会や広瀬一家」「睨み合う宇佐美とビッグ・ロウ」を説明する静止画像のスライドショーになる。

 そこに秋山の声が乗る形。




  秋山の声 「かつて君が所属していた陽銘連合会直系舛添組系の広瀬一家」


       「そして、中国マフィア随一の祭汪会と、かつてそこのボスだったビッグ・ロウ……」


       「そのへんに何かあるかもしれないと思ってね」




 そこでスライドショーは終了。





○沖縄・アサガオ・宇佐美夫婦の部屋 (夜)

 戻って、宇佐美夫婦の部屋。




   秋 山 「でも今現在、祭汪会は日本から撤退したままだ」


       「第一、もうとっくに新しいボスの新体制になってるそうでね」


       「だから今回、祭汪会のセンはまずないと言っていい」


       「で、君と陽銘連合会との縁も完全に切れてるとなると……」


       「これで君のほうの因縁の可能性は完全に消えたわけだ」


   宇佐美 「はい」


   秋 山 「つまり、もし因縁があるとしたら遥ちゃん――と言うより、桐生さん絡みってことになる」


   宇佐美 「でも、もう桐生の兄貴は死んじまったんですよ? なのにハルトを誘拐して、どうなるってんです?」


   秋 山 「今の東城会会長の堂島さんは、桐生さんの弟分だ」


       「当然、桐生さんの身内である遥ちゃんのことも気にかけている」


       「もし遥ちゃんやハルト君の身に何かあれば、東城会会長としての権限をフルに行使するだろう」


       「なら、ある程度の要求であれば……犯人の言うままに呑むかもしれない」


   宇佐美 「じゃ犯人は、東城会との取引のためにハルトを誘拐したってんですか?」


   秋 山 「あくまでも可能性の話だよ」


       「でも、もしこれが単なる営利誘拐なら、とっくに金銭要求の連絡が来てるはずなんだ」




 そうして4人、深刻な表情で顔を見合わせる。

 ここで暗転。








○東城会本部・会長室 (夜)

T「21日前  2017年12月7日 20:30」


 会長室のドアがノックされる。


 執務中の大吾、顔を上げずに応じる。




   大 吾 「入れ」




 すると駆け込んできたのは、本家の若衆。かなり焦っている様子。




 本家の若衆 「会長、大変です」


   大 吾 「何だ?」


 本家の若衆 「お電話なんですが、その――」


   大 吾 「誰からだ?」


 本家の若衆 「名乗らないんです」




 大吾、顔を上げる。




   大 吾 「名乗りもしないものを、なぜ取り次ぐんだ?」

 本家の若衆 「それがその、実は……」


   大 吾 「何だ」


 本家の若衆 「その、宇佐美ハルトを誘拐した者だと言っておりまして……」


   大 吾 「なに?」




 大吾、目つきが険しくなる。




   大 吾 「何番だ?」


 本家の若衆 「1番です」




 大吾、デスクの上の電話の受話器を取り、光っているボタンを押す。

 本家の若衆、気が気でない様子で見守る。


 (※以降、セリフの間を取る参考として、誘拐犯のセリフも括弧つきで表記。音声はナシ)




   大 吾 「堂島だ。おまえは誰だ?」

  (誘拐犯 『すでに言ったが。宇佐美ハルトを誘拐した者だ』)


   大 吾 「俺に何の用だ?」


  (誘拐犯 『身代金を払ってもらいたくてね』)


   大 吾 「なぜ俺が払うと思うんだ?」


  (誘拐犯 『払いたくなきゃそれでもいい。今すぐ殺すまでだ』)


   大 吾 「いくら欲しいんだ?」




 その答えを聞いた大吾、険しい目を瞠り、つい叫ぶ。



   大 吾 「100億!?」



 ここで暗転。







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