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二章 秋山編 混迷

二章 秋山編 混迷 (1)



○沖縄・琉球街の街外れ (夜)

T「20日前  2017年12月8日 19:16」


 秋山、ほぼ廃墟のような区画を歩いている。


 倒壊寸前のあばら家を目の当たりにして苦笑しつつ、内心考える。




   秋山M (花ちゃんを疑うわけじゃないけど……)

       (ホントにこんなとこに情報屋なんかいるのかね……)




 そのとき秋山、ふとスマホを取り出す。

 振動するスマホ画面に「堂島大吾」とあるのを確認、すぐに出る。




   秋 山 「はい、もしもし? 秋山です」

  大吾の声 「秋山さん。大変なことになりました」


   秋 山 「えっ。……何です?」


  大吾の声 「実は、夏目さんが何者かに拉致されたんです」




 そのため秋山、つい叫ぶ。



   秋 山 「何ですって!? それって――どういうことなんですか?」

  大吾の声 「午後にあった緊急幹部会の後のことです」


       「犯人は高速道路で夏目さんの車に機関銃を掃射し、強引に足止めした上で連れ去っていったんです」


   秋 山 「何てこった。それで……」


  大吾の声 「庄司くんは無事です。肩を撃たれてはいますが軽傷です」


   秋 山 「そうですか……。で、夏目さんは……」


  大吾の声 「スタンガンで身動きが取れないようにされてから、連れ去られたそうです」


   秋 山 「スタンガン!」


  大吾の声 「ええ。夏目さんには庄司くんを、庄司くんには夏目さんを人質に取り、銃で脅した後、そうしたそうです」


   秋 山 「くそっ、やり方が汚いな」


  大吾の声 「全くです。そしてついさっき、犯人からメールが届きました」


   秋 山 「……どんな内容ですか?」


  大吾の声 「午前0時までに二代目白峯会の会長を殺し、死体を神室町ヒルズに吊るして晒せ」


       「さもなければ真島組の若頭を殺す――と」


   秋 山 「そんな!」




 秋山、何とか平静を保とうと努めたのち、改めて話し出す。



   秋 山 「それで……どうするつもりなんです?」


  大吾の声 「これからまた緊急幹部会です」


   秋 山 「でも、今回は金で手を打てることじゃないでしょう?」


  大吾の声 「ええ。ですが、まさか槇を殺すわけにはいきません」


   秋 山 「そりゃそうですけど。でも、何もできないまま待つなんて……」


  大吾の声 「とにかく、報告だけはと思い、お伝えしました。むろん内密に願います」


   秋 山 「もちろんです」


  大吾の声 「じゃ、これで」


   秋 山 「ええ、どうも」




 通話を切った秋山、内心考える。



   秋山M (何てこった。ハルト君に加え、夏目さんまで……)

       (しかも、今回の要求が金じゃないってのは……)


       (敵さん、一体どういうつもりなんだ?)




 そこへ突如、得体の知れない風体の輩が4人、のそのそと登場。

 四方から現れたため、秋山を囲う格好となる。


 そのうちのボス格(街外れの男Aと表記)が話しかけてくる。




街外れの男A 「ずいぶん騒がしいじゃねえか」

   秋 山 「あっ、すいません、起こしちゃいました? せっかく早寝してらしたのにすいませんね」




 秋山の愛想のいい謝罪を聞き、街外れの男A、鼻で笑う。




街外れの男A 「てめえ、何のつもりでこんなとこに来た?」

   秋 山 「えっと……人に会いに来たんですけど」


街外れの男A 「誰だ?」


   秋 山 「運天さんって人なんですけど」




 街外れの男A、目を眇める。



街外れの男A 「てめえ、運天のおじいに何の用だ?」

   秋 山 「いや、だから、会って話を聞きたいなと……」


街外れの男A 「とっとと帰れ。おじいは誰にも用はねえ」


   秋 山 「いや、用があるのはこっちなんですけど」


街外れの男A 「うるせえ! 帰らねえってんなら腕尽くでここから叩き出してやるぜ!」




 ここで、「vs. 街外れの謎の集団」の戦闘となる。





○沖縄・琉球街の街外れ (夜)

 戦闘後。4人は地面にへたり込んでいる。


 そのとき路地に登場したのは、かなり高齢と見える運天老人(81)。




  運天老人 「もういい」



 と手で払う仕草をして見せたことにより、ボロボロの4人はよろけながら立ち去る。

 路地に残されたのは、秋山と運天老人のみ。




  運天老人 「あんた、ずいぶん粘るなあ。何の用だ?」

   秋 山 「あなたが……運天さんですか?」


  運天老人 「そうだ」


   秋 山 「実は、あなたが腕利きの情報屋で、沖縄の事件の情報なら全て手元に入る――」


       「そう聞いたもんで、来たんです」


  運天老人 「そりゃ気の毒だったな。ワシはもう引退して何年にもなる」


   秋 山 「まさか!」


  運天老人 「何だ? 何がまさかだ?」


   秋 山 「いえ、その……。まさかうちの情報屋が間違えるはずないと思ったもんで……」


  運天老人 「その情報屋は、運天って情報屋の下の名前を言ってたか?」




 秋山、少し考えたのち、素直に答える。



   秋 山 「いいえ」

  運天老人 「ワシは何年も前に引退して、その時に全てを孫に譲ったんだ。もちろんだが、孫も運天だ」


   秋 山 「ああ、そういうことだったんですか。じゃ……そのお孫さんは今、どちらにいらっしゃいます?」


  運天老人 「バイトに行ってる」


   秋 山 「……どこにですか?」


  運天老人 「琉球街にブラックバードってクラブがある。そこの黒服だ。――ただ、気を付けろよ」


   秋 山 「何です?」


  運天老人 「あの店は、なかなか派手なショーをやりおるからな」




 運天老人、ニヤリとすると、引き上げていく。

 秋山ひとり、路地に残される。


 そこで暗転。








○琉球街 (夜)

 琉球街まで戻ってきた秋山、内心考える。




   秋山M (さて、じゃ行くか)



 そして、ここからブラックバードを目指す。

 【この後、ブラックバードまでの間に、戦闘やサブストーリーをこなす】






○琉球街・ブラックバード前 (夜)

 ブラックバード近くまでやってきた秋山。




   秋山M (よし、じゃ行こう)



 そして、ブラックバードへと向かって歩き出す。

 そこで長い暗転。








○東城会本部・会議室 (夜)

T「20日前  2017年12月8日 20:15」


 ズラリと顔を揃えている執行部の面々。


 午後の緊急幹部会と違うのは、夏目→真島のチェンジのみ。


 その真島に向け、斜め向かいの席の磐井、大真面目に問う。




   磐 井 「真島さん、人間ドックで入院中だと聞いてたんですが」

   真 島 「せやで。あれから医者のケツ叩きまくって、何とかギリギリ終わらしたんや」


   磐 井 「そうでしたか。――今回は夏目のこと、とんだことで」


   真 島 「ホンマになぁ。どこのドアホウがさらっていきよったんかのう」




 それに対し、ほぼ末席から声を上げたのは、矢部。



   矢 部 「真島さん、妙に引っかかる物言いするじゃありませんか」

   真 島 「ん? 何がや?」


   矢 部 「とぼけるのも大概にしましょうや。磐井さんに難癖つけてどうしようってんです?」


   磐 井 「矢部、よせ」




 磐井にたしなめられても、矢部は臨戦態勢のまま。

 そこで真島、シレッとした顔で、矢部に質問。




   真 島 「ワシ、何か引っかかる物言いしたか?」

       「誰がさらっていったんやろかっちゅう世間話しただけやろが?」


   矢 部 「それをわざわざ磐井さんに言うのが、わざとらしいって言ってんですよ」


   真 島 「おかしなこと言うのう。何もないとこに勝手に引っかかんのは、スネに傷ある奴だけやで」


       「――自分、何か心当たりでもあんのか?」




 それにより矢部、いきり立って立ち上がる。




   矢 部 「ふざけたこと言ってんじゃねえ! 俺ぁただあいつが礼儀を知らねえから説教してやっただけだ!」


   真 島 「ハン、それがスネの傷かいな。自分、分かりやすいのう」


   矢 部 「……くっ……」


   磐 井 「矢部」




 磐井にジッと見られたため、矢部は着席し、そっぽを向く。

 そこへ大吾が登場。皆が起立、頭を下げる。大吾が着席した後、皆は頭を上げ、着席。




   大 吾 「皆ももう知っているだろうが、真島組の若頭の夏目さんが、午後の緊急幹部会からの帰途で拉致された」



 皆、沈黙を守って聞いている。




   大 吾 「そして1時間前、犯人からメールから来た」

       「午前0時までに白峯会の会長を殺し、その死体を神室町ヒルズに吊るして晒せと」




 それにより室内、どよっとする。



   大 吾 「そうしなければ、真島組の若頭を殺すそうだ」



 さらにどよめく室内。

 すでに大吾から聞かされていた真島は無表情。真島から知らされていた冴島も無表情。


 槇は少しばかり戸惑った様子。磐井は内心の動揺を隠しきれない様子。


 矢部も動揺はしているらしいものの、黙って控えている。




     槇 「それで……どうするんです?」




 大吾、槇に微笑みかけ、




   大 吾 「おまえを吊るそうなんて考えちゃいない。安心しろ」


     槇 「しかし、それじゃ、どうするつもりなんです?」




 大吾、表情を引き締める。



   大 吾 「その意見をおまえたちから募りたくて、幹部会を開いたんだ」

     槇 「そうですか……」




 室内は沈黙で満たされる。意見などはいっさい出る気配がない。

 大吾は実のところ、東城会の内部犯行たることを疑っているため、隙のない目つきで全員の様子を窺っている。


 (※このためにわざわざ執行部を再度召集している)


 大吾、特に気になる反応がないことを確認したのち、真島に話を振る。




   大 吾 「真島さん」

   真 島 「ん? 何や?」


   大 吾 「何か策はありますか?」




 すると真島、ニンマリ笑い、面白半分の調子で言う。



   真 島 「せやなぁ。槇の人形でも作って、吊るしたらどないや?」



 それにより室内、ザワッとする。大吾もヘンな顔をする。



   大 吾 「それは……しかし、通用するでしょうか?」

   真 島 「せえへんかもしれんのう」


       「けど、他に何も策があれへんのやったら、やれることは全部やったったらええんとちゃうか?」


   大 吾 「しかし、それが人形と相手に知れた時……。却って夏目さんに危害が加えられるかもしれません」




 それに対し真島、厳しい口調で返す。



   真 島 「どうせ0時には殺されるんや」



 途端に室内、シンとする。

 その一瞬後、真島はニパッと笑い、いつもの明るい調子に戻る。




   真 島 「ちゅうても、夏目のことやから、そない簡単に殺られはせえへんで」

       「東城会に面倒見てもらわんでも、あいつは自分の身ぃぐらい自分で守れる」




 しかし大吾、苦悶している様子。


 そのとき磐井、隣の槇に言う。




   磐 井 「おまえ、何か心当たりはないのか?」

     槇 「えっ?」


   磐 井 「夏目の命と引き換えに要求されてるのは、おまえの命なんだ」


       「犯人はおまえにも何か含むところがあるってことだろう」


     槇 「はあ……。しかし、これといって何も……」




 すると矢部、ほぼ末席から発言。



   矢 部 「そう言やあ、白峯会はここんとこ、何かと無茶してるって聞きますがねえ」

     槇 「……何のお話ですか?」


   矢 部 「いや、単なる噂ですがね。その辣腕でよその畑を荒らし回ってるっていう……」


       「そのせいで、よその組織の企業舎弟から恨みを買いまくってんでしょ?」


     槇 「さあ、どうでしょう」


   矢 部 「こうなると、ひょっとすると最初の坊やの誘拐も……槇さん絡みなのかもしれませんねえ」




 室内、ややざわつく。

 大吾、磐井に先んじてたしなめる。




   大 吾 「おい、やめないか」



 それによりざわつきが少し静まってから、槇に向き直った大吾、改まって尋ねる。



   大 吾 「槇、本当に何の心当たりもないんだな?」



 大吾に見据えられるのを、しっかり見据え返した槇。




     槇 「はい。何も」


   大 吾 「そうか。なら、それでいい」




 そして大吾、決然として言う。



   大 吾 「では、今後の対応は、真島組に一任することにする」

       「真島さん、それでよろしいですか?」


   真 島 「おう、ええで」


   大 吾 「分かりました。では、それでお願いします」




 そこまでで、緊急幹部会は終了。

 そして暗転。






○東城会本部・エントランス (夜)

 真島と冴島、エントランスへの階段を下りかけた時に、階下から声が聞こえてくる。


 見ると、白峯会の若衆がいきり立っているらしい。




   若衆E 「それじゃ犯人は会長の命を要求してきたんですか!?」

     槇 「おい、声が――」


   若衆F 「そんな無茶がありますか!」


       「ひょっとしてそれ……。実は会長を消そうっていう、真島組の狂言なんじゃないんですか?」




 それを聞いた真島と冴島、顔を見合わせたのち、しばしそこからコッソリ見学することに。

 一方、白峯会の面々(若衆Fの背後)へと近付いてきたのは、矢部。




   矢 部 「そりゃ面白え話だな」



 若衆F、ギョッとして振り返る。若衆Eは気まずそうで、槇は無表情。



   矢 部 「でも、そんな回りくどい狂言、仕組んでどうなる?」

       「実際、六代目は槇さんを殺る気はねえっつってんだ」


   若衆E 「いや、でも……」


   矢 部 「狂言ってことならそんなんより、もっとシンプルなほうがありそうだがな」


   若衆E 「……どういう意味です?」


   矢 部 「つまり、自分らで夏目をさらっといてさ」


       「夏目の代わりに自分とこの会長が殺されるかも――って状況を作って、被害者ぶっといてさ」


       「で、まんまと夏目を殺す――とかな」




 それにより白峯会の若衆、いよいよいきり立つ。




   若衆F 「そんなことして俺らに何の得があるってんだ!?」


   矢 部 「とぼけんなって。真島さんはもう人間ドックで数日入院しちまうくらいのヨボヨボだ」


       「近いうちに夏目が二代目真島組の組長になるのは間違いねえ」


   若衆F 「……だったら何だってんだ?」


   矢 部 「分からねえのか?」


       「つまり、そうなった時――東城会の若頭補佐筆頭になるのは誰だと思う? って話だよ」


 若衆E&F 「なっ……!」


   矢 部 「いや、実際はそれどころじゃねえか?」


       「真島さんが引退となると、後ろ盾を失くした冴島さんも引退する可能性が高い」


       「となると夏目は若頭補佐筆頭どころか…… 一気に東城会若頭って可能性もある」


       「何にしろ、あんたらには目の上のタンコブだよなあ?」


   若衆F 「てめえ、黙って聞いてりゃ――」


   磐 井 「やめないか!」




 と、そこへ割って入ったのは、磐井。



   磐 井 「こんな時に何をしてる」

       「敵の狙いは東城会内部の混乱なんだぞ。まんまとその手に乗ってどうするんだ」


   矢 部 「すいません」


   磐 井 「槇、おまえも、下のモンの口は閉じさせておけ。何が火種になるか分からない時だ」


     槇 「申し訳ありません。以後気を付けます」


   若衆F 「しかし会長――」




 まで言ったところで、槇、思いっきり若衆Fをぶん殴る。若衆F、いくらか吹っ飛んで気絶。

 階上の真島と冴島、つい顔を見合わせる。


 槇、何事もなかったかのような静かなトーンで、




     槇 「いい加減にしねえか」



 と呟いたのち、磐井に向け頭を下げる。



     槇 「申し訳ありません。躾が行き届きませんで」

   磐 井 「……とにかく、もう引き上げろ。矢部、おまえもだ」


   矢 部 「はい」




 しかし矢部、去り際に槇に問う。



   矢 部 「一つ聞いてもいいか?」

     槇 「……何でしょう?」


   矢 部 「もしこれでホントに夏目が殺られたら、あんたはどう思う?」




 若衆Eがいきりたつ前に、槇が腕を横払いする動作だけで制止し、矢部に答える。



     槇 「お気の毒です――それしかありませんよ」

   矢 部 「ヘッ、ずいぶん他人事だな」


     槇 「なら、矢部さんはどう思うんです?」


   矢 部 「そうさな。ライバル候補の夏目が殺られたとなりゃ……」


       「次に殺られるのはいよいよ六代目かな、ってな」




 若衆Eがいきり立つ前に、磐井が怒鳴る。



   磐 井 「矢部! いい加減にしろ!」

   矢 部 「はい、すいません」




 態度だけはうやうやしいが、全く反省の色がない矢部、一礼するとさっさと立ち去る。

 磐井、首を横に振り、溜息。




   磐 井 「矢部の言うことは気にするな」

     槇 「はい」


   磐 井 「じゃあな。――おまえも気を付けろよ」


     槇 「はい。失礼します」




 その槇に頷きかけた磐井、その場から立ち去る。

 槇、若衆Eに向け、




     槇 「帰るぞ」



 と言い、気絶した若衆Fを若衆Eに負わせ、去っていく。

 階上にて真島、冴島のほうをジトーッと見、一言。




   真 島 「誰がヨボヨボやねん」



 それにより冴島、ハッと笑う。

 そこで暗転。






二章 秋山編 混迷 (2)



○琉球街・ブラックバード (夜)


T「20日前  2017年12月8日 21:24」


 過剰なほどオシャレでクールなアゲアゲ空間に、飄々と入ってきたのは秋山。


 店内を見回し、内心考える。




   秋山M (鼻薬を利かせて無理矢理入り込んだはいいけど……)

       (さて、どうやって運天さんの孫を探したもんかな……)




 しかし、風体からして周囲とは違って浮いているため、悪い意味で注目の的となり始める。

 そんな秋山に、奥で控えていたらしい常連5人組のうち2人が、とうとう近付いてくる。




   常連A 「おいあんた、どうやってここに紛れ込んだんだ?」

   常連B 「ここはオッサンが来るようなとこじゃねーんだよ」


   常連A 「そっそ、オッサンはあれだ、ディスコ? とかいうのに行ってりゃいーんだよ」




 常連Aと常連Bが笑い転げたことにより、周囲の客たちもつられて笑う。

 それで力を得たらしい2人、さらに言い募る。




   常連B 「てかさ、あれじゃね、ジュリアナ? あれとディスコ、どっちが古いの?」

   常連A 「知らねーし。てか、どーでもいーし」


   常連B 「だな。――つーわけだから、オッサン、帰って? 目障りなんで」




 ウッヒャッヒャッと自分たちだけで笑い転げている常連Aと常連B。

 秋山、その2人に向け、宥めすかすような口調で言う。




   秋 山 「はいはい、楽しかったね。じゃ、向こう行っててね。おじさん、大事な用があるのよ」



 とその脇をすり抜けようとした秋山の肩を、常連Aが掴もうとする。


 その手を、空手の中段受けの腕の型で止めた秋山、常連Aに少し微笑みかける。




   秋 山 「触らないでね? 服がシワになっちゃうから」



 それにより常連Aと常連B、ブチ切れる。



   常連A 「ふざけんな!」



 そこで曲が止まる。常連仲間らしい5人組のうち、残りの3人が駆け寄ってくる。

 そのためか、周囲の人間がザッと引き、秋山を中心に円形の空間が出来る。




   常連B 「やっちまえ!」



 ここで、「vs. ブラックバードの常連集団」の戦闘となる。





○琉球街・ブラックバード (夜)


 戦闘後。常連5人組は全員、フロアに倒れている。


 そこへ拍手の音が響く。その音のほうを見やる秋山。


 拍手をしながらやってきたのは、支配人らしき風体の男(28)。全身黒のスーツ姿。




   支配人 「実に素晴らしい! 格闘技はダンスの究極形――それをまざまざと証明してくださったこの方に拍手を!」



 その途端、場内からはどよめくような拍手と歓声が沸き起こる。そして、音楽が復活。


 悠然と立っている秋山に、支配人が笑顔で近付いてくる。




   支配人 「さあ、どうぞこちらへ。勝者にはトロフィーがつきもの。何なりとお望みのものを差し上げましょう」



 と秋山を身振りでいざない、歩き出す。

 秋山、肩をすくめたのち、支配人の後についていく。


 いったん暗転。






○琉球街・ブラックバード・支配人室 (夜)

 やってきた支配人室にて、支配人は単刀直入に話を切り出す。




   支配人 「それで、御用件は?」


   秋 山 「えっ? いや……運天くんって黒服さんに用があって来たんだけど」


   支配人 「それは祖父から聞きました。ですから、その用というのを伺ってるんですよ」


   秋 山 「……えっ? えっと……君、ここの店長かオーナーなんじゃないの?」


   支配人 「支配人の運天要と申します。よろしく」 (※これ以降、支配人を「運天」と表記)


   秋 山 「……お孫さんは黒服だと聞いてたんだけど?」




 運天、肩をすくめ、




   運 天 「黒い服を着ていれば黒服だというのが祖父の持論です」



 秋山、少し笑い、後頭部を撫でる。



   秋 山 「やっぱ、ユニークなじいさんだな」

   運 天 「そりゃあもう。――で、御用件は?」




 それにより秋山、説明を始める――という表情になったところで、暗転。





○琉球街・ブラックバード・支配人室 (夜)

 秋山の説明が終わった状態。




   運 天 「そうですか」



 と運天、頷いたのち、あっさりと答える。



   運 天 「いえ、俺の許にはその件の情報は入ってきていません」

   秋 山 「……君、情報屋なんだよね?」


   運 天 「ええ」


   秋 山 「なのに「情報は入ってきてません」で済ませちゃうの? それ、情報屋としてどうなのよ?」


   運 天 「しかし、入ってきていないものは入ってきていませんから」


       「それにあなたにとっては、情報が入っていない――それ自体が“情報”なのかもしれませんよ?」


   秋 山 「何だって?」


   運 天 「たとえばその誘拐事件、もし沖縄の人間がやったことなら、その話は間違いなく俺の許に入ってきています」


   秋 山 「……つまり、犯人は沖縄の人間じゃないと?」


   運 天 「ええ。それも、沖縄の人間との繋がりが一切ない人間でしょう」


   秋 山 「それって、いかにも沖縄愛に溢れた言い種だよねぇ」


   運 天 「俺が沖縄の人間を庇って、ウソをついてるとでも?」




 秋山と運天、真っ向から見合う。


 しばしのち、運天は一種の気迫のこもった口調になる。




   運 天 「もし沖縄の人間がやったことなら……」

       「こちらで草の根分けても探し出して、とっくに引きずり出して見せてますよ」


   秋 山 「……君、ただの情報屋じゃないね?」


   運 天 「ええ。教えても構わないと許可が出てますのでお教えしますが……」


       「俺は六代目の命を受けて、沖縄で裏組織を仕切ってます」


   秋 山 「えっ!」




 そこで運天、姿勢を正して説明。



   運 天 「9年前に行なわれようとした沖縄の土地買収工作――」

       「それを裏から妨害し、潰して回ったのは、六代目の命を受けた俺たちだったんですよ」


   秋 山 「そうだったのか……。詳しくは知らないけど、沖縄リゾート絡みの事件があったことは聞いてるよ」


   運 天 「今回、宇佐美ハルト君が誘拐されたとなった時、六代目はすぐに俺に連絡してきました」


       「その後、俺たちはチームの総力を挙げて調べ回ったんですが……何の情報も掴めなかったんです」


       「はっきり言って、これは異常です」




 秋山、黙って聞いている。




   運 天 「俺はさっき言いましたよね? 沖縄の人間がやったことなら、必ず情報は入ってくる――と」


       「ただ、いくら県外の人間であろうとも、誘拐レベルの事件を起こしたら……」


       「こちらが動きさえすれば、その情報は得られるのが普通なんです」


       「県外の人間が沖縄の人間と関わらずに沖縄に滞在することは不可能ですからね」


   秋 山 「なのに、情報は入ってこない……」


   運 天 「ええ。――正直、ずっと落ち着きません。ここまで何も掴めないことは初めてで、薄気味悪くて」


   秋 山 「じゃ……君はこの件に関して、どう考えてるの?」


   運 天 「これが単なる誘拐事件でないことは確かです」


       「それに、ずいぶん手際のいい犯行だったそうですから――おそらく素人の仕業じゃないでしょう」


   秋 山 「だろうね」




 溜息をついた秋山、踵を返す。




   秋 山 「お邪魔さま」



 そのまま部屋を出ようとする秋山に、運天が声をかける。



   運 天 「もうよろしいんですか?」



 秋山、立ち止まると、横顔になるところまで振り返る。



   秋 山 「堂島さんに先を越されてたんじゃね。もう逆さに振っても鼻血も出ないでしょ」



 運天、微笑む。



   運 天 「お疲れ様でした」

   秋 山 「全くだよ。――ただまあ、暴れられてスカッとはしたかな」


   運 天 「それはよかった。あなたのおかげで客も盛り上がりましたよ。ありがとうございました」


   秋 山 「そりゃどうも」




 そして秋山、支配人室を出る。






○琉球街・ブラックバード・支配人室の外 (夜)

 支配人室を出てきた秋山、立ち止まって内心考える。




   秋山M (やれやれ。とんだ無駄足だったな)


       (しかし……犯人、一体どういう奴なんだろう?)


       (運天くんも言ってたけど、ちょっと薄気味悪いな……)




 秋山、考え込む。

 そこで暗転。








○港区・二代目白峯会のオフィス・会長室 (夜)

T「20日前  2017年12月8日 21:45」


 槇、ひとり黙々とトレーニング中。その背には麒麟の刺青がある。 (※峯のとは微妙に違う)


 デスクに置いているスマホが鳴ったため、トレーニングを中止。


 そばのタオルを取り、デスクまでやってきた槇。


 デスクには峯の写真が入った写真立てが飾られている。


 槇、タオルで汗をぬぐいながら、スマホを置いたまま指操作でスピーカー機能にし、繋ぐ。




     槇 「何だ?」

女性秘書の声 「例の件、完了しました」


     槇 「分かった」




 それっきりで通話終了。スマホを操作し終えた槇、峯の写真に目をやる。






○(回想)8年前の事件を含む槇の過去のスライドショー

 ここで、「ユーザーのための説明映像ではあるが、槇の回想でもあるらしい映像」として、画面は「8年前の東都大病院の正面玄関脇」「病院の屋上」の静止画像のスライドショーになる。

 そこに槇と大吾の声が乗る形。


 8年前、東都大病院の正面玄関脇に駆け付け、峯とリチャードソンの遺体であろうものを見た槇。 (※遺体は映されない)


 呆然として立ち尽くし、絞り出すような声で呻く。




   槇の声 「会長……!」




 場面替わり、病院の屋上(夜)。大吾が槇を呼び出した形。




  大吾の声 「今回は大変だったな」

   槇の声 「はい……」


  大吾の声 「こうなった以上、もう白峯会は解散するしかないだろう」


       「峯は完全にワンマンでやっていたから、跡を継げる者はいない」


   槇の声 「はい……」


  大吾の声 「そこでなんだが……。おまえ、本家の若衆になる気はないか?」


   槇の声 「……本家の若衆? 俺がですか?」


  大吾の声 「ああ。峯が目をかけていたおまえならやれるはずだ」




 ここからは回想のムービーとなる。東城会本部の会長室(昼)にて、大吾と槇が話している。



  大吾の声 「この間のベンチャー企業への投資、よくやった」

   槇の声 「ありがとうございます」


  大吾の声 「で……。おまえ、組を持つ気はないか?」


   槇の声 「えっ?」


  大吾の声 「おまえに組を持たせたいんだ。もちろん直系として」


       「直接に組を持たせるのは、峯と冴島さん以来だな」


   槇の声 「俺に直系の組を……。でも、どうして……」


  大吾の声 「理由は簡単だ。おまえが有能だからだ。――不満か?」


   槇の声 「いえ、まさか! ありがとうございます! これからも御期待に沿えるよう、尽力いたします!」


  大吾の声 「そうか。ありがとう」


   槇の声 「ただ、その……」


  大吾の声 「うん? 何だ?」


   槇の声 「組の名前なんですが……」


  大吾の声 「うん」


   槇の声 「……二代目白峯会とすること、お許しいただけますか?」




 それにより大吾、少し目を瞠ったのち、微笑む。



  大吾の声 「もちろんだ」

   槇の声 「(笑顔になり) ありがとうございます!!」




 槇、最敬礼。

 ここで回想のムービーが終了。






○港区・二代目白峯会のオフィス・会長室 (夜)

 戻って、会長室。


 槇、峯の写真立てを手に取ってしばし見つめ、それから呟く。




     槇 「会長……」



 そして暗転。







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