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三章 東城編 邂逅

三章 東城編 邂逅 (1)



○沖縄・琉球街の大通り (夜)

T「19日前  2017年12月9日 19:32」


 東城、覆面姿で、秋山と共に琉球街の大通りまでやってきている。周囲の視線をほぼ独占している状態。


 秋山、弱々しい声で話しかけてくる。




   秋 山 「東城さん……。ホントにそれで今後ずっと通すつもりなんですか?」

   東 城 「何かマズいのか?」


   秋 山 「いや、正体は隠せてますけど……。逆に目立っちゃうんじゃないのかなと……」


   東 城 「正体さえバレなきゃそれでいい」


   秋 山 「そりゃそうですけど」


       「ま、設定としては、本職のレスラーが宣伝も兼ねて覆面姿のまま巡行中――ってとこですかね」




 すると東城、やや笑い混じりに言う。



   東 城 「なら、おまえがマネージャーってことになるな」

   秋 山 「ええ、ええ、きっと傍目にはそう見えてますよ」


       「しょうがない、こうなったら乗りかかった船だ。マネージャー業、きっちり務めさせてもらいますよ」




 そこで秋山、真面目なトーンに戻る。



   秋 山 「それにしても、その……。ホントに会わなくて良かったんですか?」

       「誰にも知られずこっそり打ち明ける、せっかくのチャンスだったのに……」


   東 城 「俺は遥の人生から消えることで遥を守ると決めた」


       「消えてさえ今回のことが起こったんだ」


       「もし俺が生きている状態で一緒にいたら、この先もっとひどいことが起こり続ける」


   秋 山 「そりゃそうかもしれませんけど……。何か切ないですね」


   東 城 「俺の親父が引退した時も、そんな気持ちだったのかもしれないな」


       「だが、どんな形であれ、誰かを守れるってのは幸せなことだ」


   秋 山 「まあ……それは分かりますよ」






○(回想)風間の手紙を読んだ時の回想のスライドショー

 ここで、画面は「風間の死後に出てきた桐生一馬宛の手紙」「それを読んでいる東城」の静止画像のスライドショーとなる。

 そこに東城の内心の声が乗る形。




   東城M (風間のおやっさんが残した手紙……)


       (それによると、親父が引退を決めたのも、それが理由だった)


       (自分の存在が却って東城会と神室町に害を及ぼす――そうなった時に引退した)


       (きっと親父も辛かっただろう)


       (とは言え、それで誰かを守れるということの満足感もあったはずだ)


       (だが……。のちに斉木という兄弟分と話した後で、親父は東城会に戻る意思を示した)


       (結局、それで二代目に消される破目になっちまった)


       (親父は元の居場所に戻って、今度はどうみんなを守り切るつもりだったんだろう?)


       (もし、そんな方法があるのなら……)


       (いや、今さら未練だな)




 ここでスライドショーは終了。





○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 戻って、琉球街の大通り。




   秋 山 「じゃ、俺はいったんアサガオに戻って、東京に戻る支度をしてきます」


       「ただ……。ホテルで待ってなくてよかったんですか?」


   東 城 「ああ。この覆面姿で往来を歩き回ったらどんな扱いを受けるのか、慣れておきたいんだ」


   秋 山 「(苦笑して) 幸運を祈ってますよ。それじゃ」




 そして秋山、アサガオへと戻っていく。

 東城、覆面&スーツという怪しさ全開の姿で、沖縄随一の繁華街に取り残されることに。


 【この後、数々の不良やチンピラたちから絡まれ、戦闘を繰り返す破目になる】


 (※以降、この東城の「覆面姿」が、不良などに絡まれ戦闘に発展する要因となる)






○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 戦闘をさんざん繰り返した後で、登場したのは琉道一家の若衆たち3人。


 そのうちの最も兄貴分らしき若衆に絡まれる。




   兄貴分 「おいおまえ、その覆面は何だ? 取って見せろ」



 東城、何も言わず直立不動。

 そのため兄貴分、さらに詰め寄ってくる。




   兄貴分 「俺らは琉道一家のモンだ。今ちょっと身内同然のモンが大変なことになっててな」

       「うちの親父から「怪しい奴は片っ端から引っ張ってこい」と命令されてんだ」


       「だから、怪しいモンじゃねえってとこを見せてくれ。そしたらこっちも引き下がる」




 そこで東城、内心考える。



   東城M (ハルトのために、名嘉原が動いてくれているのか……)

       (ありがたい話だが、この状況はちょっと厄介だな)




 よって東城、無言&スルーを決め込む。

 そのため兄貴分、大声で怒鳴る。




   兄貴分 「そっちがそのつもりなら、こっちだって引くわけにゃいかねえんだ!」



 ここで、「vs. 琉道一家の若衆」の戦闘となる。





○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 戦闘後。兄貴分と弟分2人、コテンパンにやられている。




   兄貴分 「畜生……このままじゃ済まさねえからな……」



 捨て台詞を吐いた兄貴分、弟分2人と共に去っていく。

 【この後も、不良などと次々に戦闘になる。また、サブストーリーにも巻き込まれる】








○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 大通りを歩いている東城。すると、遠くから琉道一家の兄貴分の声。




   兄貴分 「あっ、いた! あそこだ!」



 その声を聞いた東城、振り返る。

 駆け寄ってきたのは、先ほどコテンパンにやられた琉道一家の若衆の兄貴分。


 連れ立ってやってきたのは、宇佐美。




   兄貴分 「こいつです、こいつが覆面取れってのに取らなくて」

       「それどころか、ぜんぜん一言も喋りやがらねえ。絶対怪しいっすよ」




 そこで宇佐美、ずいと東城の前に出る。



   宇佐美 「おう、あんた。ただのカタギさんなら申し訳ねえけど、こっちも子供の命がかかってるんでな」

       「どうか一つ素直に覆面取って、怪しいモンじゃねえってとこを見せてくれねえか?」




 東城、内心考える。



   東城M (宇佐美か……)

       (ハルトのために必死になっているのは良いが……ここで正体を知られるわけにはいかない)




 そこで、やはり無言&スルーを貫くことに。

 そのため業を煮やした宇佐美、一喝。




   宇佐美  「てめえで取らねえってんなら、俺が力尽くで取ってやらあ! 覚悟しやがれ!」



 ここで、「vs. 宇佐美勇太」の戦闘となる。





○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 戦闘後。宇佐美と兄貴分、地面にへたり込んでいる。


 そこへ秋山、人込みをかき分けて入ってき、頓狂な声を上げる。




   秋 山 「宇佐美くん! 君、何してるの!」

   宇佐美 「いや、こいつ、すっげえ怪しいんで覆面取れっつったんですけど……」


       「全然聞かねえし返事もしねえから、力尽くで取ってやろうと……」


   秋 山 「宇佐美くん、この人はアメリカのプロレスラーなんだよ」


       「宣伝のために覆面姿で巡行中で、実は俺の昔からの知り合いなんだ」


   宇佐美 「そんなぁ……それ早く言ってくださいよ……」


       「何だ、アメリカ人だから日本語分かんねえだけかよ……」




 と、宇佐美はヘロヘロ。

 ここでいったん暗転。






○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 同じ場所だが、野次馬はすっかり散った状態。事情を知って引き下がった琉道一家の兄貴分も消えている。


 この場に残っているのは東城、秋山、宇佐美の3人のみ。




   秋 山 「で、君、こんなとこで何してるの?」

   宇佐美 「すんません……。ハルトからスマホに電話があって……「ホテルにいる」って言ったもんで……」


   秋 山 「ああ、じゃ、遥ちゃんが見てない隙に、勝手にかけちゃったんだな」


       「でも、だからって、何で君がここに?」


   宇佐美 「いや、その……。何かハルトがすげえ楽しそうだったもんで……」


       「どんな楽しいとこなのかなって、つい好奇心が湧いちゃいまして……」




 秋山、呆れ顔。



   秋 山 「それで、ホテルの多いこのへんまで出てきちゃったの?」

   宇佐美 「すんません!」




 宇佐美、平身低頭。

 それを見ている東城、内心考える。




   東城M (妻子を守らなきゃならないって状況で、何を呑気なことを考えてるんだ)



 そのイラッとしたのが態度に出る。

 宇佐美もそれに勘づいたようだが、いったんはスルー。




   秋 山 「とにかく、君はもうアサガオに戻んなさい」

       「一家の長たる君がいなきゃ、子供たちが不安がるでしょ?」


       「いくら琉道一家が警備してくれてるったってさ」


   宇佐美 「はあ……。でも、うちの子供たちはみんなしっかりしてるから大丈夫ですよ」




 そのため東城、また内心考える。




   東城M (いくら子供たちがしっかりしてるからといって、
それに甘えて責任を放り出すとはどういうつもりだ)



 と過去の自分棚上げでイラッとし、またもそれが態度に出る。

 そのため宇佐美、秋山にヒソヒソ申し出る。




   宇佐美 「あの……この人、日本語わかってません?」

   秋 山 「えっ? いや、わかるわけないじゃない。アメリカ人なんだからさ」


   宇佐美 「でも何か……」


   秋 山 「気のせいでしょ。とにかく、早く帰った帰った。て言うか、君、明日仕事なんだよね?」


   宇佐美 「はあ……。でもこんな気分じゃ、大して身も入んないすよ」




 そのため東城、内心でガチ切れ。




   東城M (こいつは家庭を何だと思ってるんだ)

       (どんな状況にあろうと稼いでこないで、何が一家の長だ)




 東城の背後から立ち上る怒りの炎を感じるらしく、宇佐美、秋山に言う。



   宇佐美 「……絶対日本語わかってますよね?」

   秋 山 「気のせいだって言うのに。君もしつこいね」


   宇佐美 「いや、でも……っかしいなぁ……」




 と宇佐美、納得いかなげに首をかしげている。

 ここで暗転。






○沖縄・琉球街の大通り (夜)

 同じ場所だが、宇佐美がアサガオへ帰った後の状態。




   秋 山 「やれやれ。宇佐美くん、やっと帰ってくれましたね」

   東 城 「困った奴だ。まだどこか独り者の気分が抜けないらしい」




 機嫌がよろしくない東城に苦笑いした秋山、これまでのことを報告。



   秋 山 「夏目さんにだけは全て話しておきました。これから東城さんと一緒に神室町に戻ることも伝えました」

       「夏目さんは東城さんのこと、知ってたんですね?」


   東 城 「ああ。日本を出国する日の墓参りで待ち伏せされた」


   秋 山 「そうだったんですか!」


       「ま、そんなわけで、今後は向こうの情報の全てをこっちに回してくれるそうです」


       「東城さんに御助力願うためにもってことで」


   東 城 「そうか。それはありがたいな」


   秋 山 「ええ。じゃ、とりあえず空港に向かいましょう」


   東 城 「ああ、そうだな」




 そこで東城、秋山と共に空港行きのタクシーに乗り込む。

 ここで長い暗転。








○東城会本部・会議室 (夜)

T「19日前  2017年12月9日 23:03」


 会議室にズラッと執行部のメンバーが揃っている。


 前回と顔ぶれが違うのは、すでに会長の席に座っている堂島弥生(60)。


 ほぼ末席にいる矢部、せせらわらうような調子で独り言らしく言う。




   矢 部 「息子が誘拐されてママ登場ってか。執行部にも入ってねえ弱小の組長代行のくせによ」

   磐 井 「おい、控えろ」




 磐井にたしなめられ、首をすくめる矢部。

 すると真島、呑気らしい口調で言う。




   真 島 「オカンが息子の危機に出張って、何がアカンねん。むしろトーゼンのことやろが」

   冴 島 「俺と舎弟頭と本部長とで決めた会長代行や」


       「文句ある奴は言えや。いま俺らがここで相手になったるわ」




 超金剛力の若頭と超武闘派の舎弟頭とに見据えられた矢部、しぶしぶ引き下がる。

 そうしていったん静まったところで、会長の席に着いている弥生、宣言。




   弥 生 「では、緊急幹部会を始める」



 ここで弥生の顔の大写しになる。

 画面が一時停止し、画面下部に「六代目東城会 会長代行 直系堂島組 組長代行 堂島弥生」の表示。一時停止が解除。


 (※今作における堂島組は、「大吾の会長就任後、形だけでも自分の組を持たせるために大吾を堂島組総裁に就任させ、弥生が(堂島宗兵死去以降そうであったように)引き続き組長代行となり、爾来まさに形だけ組を存続させてきた」という設定になっている。そのため実質的な組の力はもちろんなく、だから弥生は直系組長の中では最も格下の「若衆」の代行――という、特殊待遇の状態にある)



   弥 生 「これはもう皆も知っているだろうが、六代目が何者かに拉致された」

       「宇佐美ハルトと夏目を拉致したのと同じ犯人だ」


       「というのも、つい今しがた犯人からメールがあった。身代金として100億用意しろと」




 これにより室内、ザワッとなる。

 矢部、ほぼ末席からわざわざ身を乗り出して発言。




   矢 部 「ちょっと待ってください。まさか、払うつもりじゃないでしょうねえ?」



 すると弥生、矢部をギロリと睨み据える。

 二代目譲りのその気迫に呑まれ、ついキッチリ座り直す矢部。


 そのタイミングで真島、やはり呑気らしい口調で言う。




   真 島 「逆に聞くけど、何で払わんと思うんや?」


   矢 部 「えっ……いや、だって……」


   真 島 「これはハルトの時と違て、私的流用とちゃうで? 東城会会長を取り戻すための当たり前の出金や」


       「それを、何でせえへんと思うんや? せえへんと思うほうがおかしいんとちゃうか?」


   矢 部 「いや……まあ……」




 矢部はどうやら、大吾には100億の価値はないと考えているらしい。


 そして、反六代目の若頭補佐たちはみな同意見の模様。


 そのためか矢部は最後の粘りとして、本部長たる磐井に話しかける。




   矢 部 「磐井さんはそれに賛成してるんですか?」




 すると磐井、じろりと矢部を見据え、きっぱり答える。




   磐 井 「当然だ」




 それにより矢部、ふてくされた様子で舌打ちの後、黙り込む。


 そのとき槇、弥生に向けて言う。




     槇 「なら、東城会は100億を払うんですか?」

   弥 生 「ああ。そのつもりだ」


     槇 「しかし……。それは宇佐美ハルトの時と同じく、危険な賭けじゃありませんか?」


       「払って六代目を返してもらえたとしても、今後ずっと六代目には危険がつきまといます」


       「第一、これが営利誘拐であることは明白です」


       「宇佐美ハルトを奪還されてすぐ、六代目を拉致しているんですから」


       「なら、金を払った瞬間、人質が用済みになる可能性は極めて高い」




 それにより、六代目派のモブ若頭補佐たちも、ざわざわし始める。

 弥生、六代目派であるはずの槇の発言の意図がイマイチ分からず、訝しげな表情。




   弥 生 「こちらも、ただ言いなりになって金だけ払う気はさらさらないよ」


       「六代目の身柄を取り返すために、できる限りの手は尽くすつもりだ」


       「金を払うのはあくまでも最後の手段だよ」


     槇 「どう手を尽くすおつもりですか?」


   弥 生 「どう手を尽くすのがいいと思うんだい?」




 そこで槇、握り合わせていた両手を広げて見せる。



     槇 「俺には、手の尽くしようがないように思われるんです」

       「実際今も、犯人からのメッセージをただ受け取るだけ……。完全に受け身の状態です」


       「宇佐美ハルトの身柄を奪還できたのも偶然の賜物です」


       「犯人が真島組の若頭を同じ部屋に監禁したおかげです」


       「もし別々の部屋に監禁されていたら、そもそも同じ船に乗せられなかったら、
どうにもならなかったじゃありませんか?」



 さらにざわざわ言い出すモブ若頭補佐たち。

 その騒ぎを横目に、弥生は再度問いただす。




   弥 生 「つまり、おまえは何を言いたいんだい?」

     槇 「言葉尻を捉えるようですが、何の手もない状態で“手を尽くす”などという言葉を軽々しく使うのは……」




 槇、肩をすくめる。




     槇 「この際、どうかと思っただけです」



 弥生、槇を見据える。

 槇、それを臆せず見返し、言葉を続ける。




     槇 「ただし我々には、一つだけ手立てが残されています」

       「交渉――という手がね」


   弥 生 「交渉?」


     槇 「ええ。向こうからのメッセージを待つだけじゃない」


       「こちらからも向こうにメッセージを送り、交渉に持ち込むんです」


       「むろん、メディア等を利用することになります」


       「ですから、六代目の拉致に関する情報をある程度、世間にも開示することになります」




 そのため室内、ざわつく。



   弥 生 「それは……危険すぎやしないかい?」

     槇 「リスクはあります。ですが、今の受け身のままでは、本当にどうにもなりません」


       「ただし、ここから糸口が掴めれば、そして交渉次第では、相手に悟られず相手の状況を窺い知ることもできます」


       「延いては六代目を救い出すことも、まんざら不可能じゃありません」


   弥 生 「何だって? 本当にそんなことができるのかい?」


     槇 「ええ、俺はこれでも交渉術にかけては覚えがありましてね」


       「その交渉、俺に任せてもらえませんか?」


   弥 生 「いや、しかし……」


     槇 「迷う理由がありますか? 今、手立ては他に何もないんでしょう?」




 すると真島、いつになく厳然たる口調で言う。



   真 島 「手立てなら、ある」



 モブ若頭補佐たち、ザワッとする。

 そこで真島、いつものおどけ調子に戻って続ける。




   真 島 「何せ夏目が、犯人グループの顔をぜーんぶ見てきよったからのう」

       「今、うちの情報分析チームと協力して、そいつらの身元特定を急いどるとこや」




 槇、それを聞いて意味を噛み締めたらしい様子ののち、ポーカーフェイスで言う。



     槇 「なるほど、それは大きな前進だ。なら、今はその結果待ちってことですね」


   真 島 「せやな。そういうわけやから、危険な小細工はしばらくお預けや」


     槇 「……分かりました」




 槇、ポーカーフェイスのまま引き下がる。

 冴島、真島のほうをマジマジと見ている。


 真島、素知らぬ顔でよそを向いている。


 そのタイミングで、弥生が言う。




   弥 生 「では今後は、まず真島組からの報告を待つことにする。――以上、解散だ」



 ここで暗転。





○東城会本部・エントランス (夜)

 真島と冴島、連れ立ってエントランスへの階段を降りている。


 冴島、隣の真島に言う。




   冴 島 「おい兄弟」

   真 島 「あぁん? 何や?」


   冴 島 「おまえ、さっきのあれ、口からデマカセやろ」


   真 島 「さすがやのう、兄弟。せや、デマカセや」


       「夏目は俺と同じで、人の顔を覚えんのが苦手でのう」


       「覚えとるのは、アジア系が二人おった――ぐらいのもんや」


   冴 島 「ほな、何であんなこと言うたんや」


   真 島 「(楽しげに) みんな、どないなリアクションしよるか思てのう」


   冴 島 「ふん。みんなが驚いてんの見て、さぞかしおもろかったやろ」


   真 島 「手立てがあると聞いて、ヘンに焦りよった奴が一人おったで」




 それで冴島、俄然本気になる。



   冴 島 「誰や?」

   真 島 「槇や」


   冴 島 「……俺には、誰よりも顔色が変わらんかったように見えたで」


   真 島 「一瞬ギョッとした後、一瞬で顔戻しよった」


       「あの状況やったらある程度びっくりすんのが普通やのに、ポーカーフェイスに引き戻しすぎや」




 その時、階上からやってきた弥生に声をかけられる。



   弥 生 「二人とも。ちょっとこれを見てくれ」



 近付いてきた弥生が差し出したスマホ画面には、メール文が開かれている。

 文面は「白峯会の槇がこれから犯人と接触する」。


 真島と冴島、顔を見合わせる。


 それから冴島、弥生に問う。




   冴 島 「これ、ほか誰かに見せたか?」

   弥 生 「いいや。本当にたった今事務局に着いたと言うから、転送させて確認してみたんだ」


       「それで誰かに相談しようとここまで出てきたら、おまえたち二人を見つけてね」


   真 島 「そのメール、俺にも転送してくれへんか?」


   弥 生 「分かった」


   真 島 「それと、しばらくそれのことは誰にも言わんといてほしいねん。俺らが内々で何とかするからのう」


   弥 生 「そうか。じゃ、頼んだよ」


   冴 島 「おう、任せろや」




 メールを真島に転送した弥生、その場から去る。


 冴島、決然たる口調で言う。




   冴 島 「槇に話聞かなあかんな」

   真 島 「せやな」


   冴 島 「どこにおるんや?」




 指の関節を鳴らして逸る冴島を、真島が宥める。



   真 島 「待て待て、今すぐ問い詰めるより……」

       「今からどこ行きよるか跡つけたったほうがオモロいで」




 冴島、少し考えたのち、



   冴 島 「おまえの車に乗せてくれんのか?」

   真 島 「もちろんや。うちの車は乗り心地ええでぇ」




 真島と冴島、並んでエントランスから外へと出てゆく。

 ここで長い暗転。






三章 東城編 邂逅 (2)



○神室町・天下一通りのゲート前 (深夜)


T「18日前  2017年12月10日 00:05」


 日付が変わったばかりの神室町。


 天下一通りのゲート前で仁王立ちになっているのは、覆面姿の東城。


 神室町だけあってよその土地ほどには悪目立ちしていないが、それでも通りすがる人々がみな振り返ってゆく状態。


 その東城に、隣から秋山が小声で呼びかける。




   秋 山 「じゃ、さき行ってますんで」




 東城、頷く。先にニューセレナへと向かう秋山の背を見送り、内心考える。



   東城M (連れ立って目立つのを避けるための別行動だから、もうそろそろいいだろう)



 それから単身、ニューセレナへと向かう。

 【その途中、覆面が災いしてケンカを吹っ掛けてくる者との戦闘や、サブストーリーが入る】






〇天下一通り・ニューセレナが入るビル前 (深夜)

 東城、ニューセレナが入るビルに辿り着き、中へ入る。


 そこで暗転。






○ニューセレナ (深夜)

 ドアが開き、中に入ると、カウンターに座って待っていたのは、伊達。ドアベルの音で振り返ったところ。


 (※秋山もカウンター席にいる)


 東城、その場に立ったまま、伊達に向けて覆面を取って見せる。


 伊達、立ち上がり、驚きと苦笑いをごちゃ混ぜにした顔で近付いてくると、東城の両二の腕をバンバン叩く。




   伊 達 「この野郎、やっと少しばかり肩の荷が下りたぜ。何しろ、秋山の追及が一番キツかったからな」

   東 城 「すまなかったな、伊達さん」


   伊 達 「いいんだいいんだ、気にすんな」


       「ああ、ママは冬の長期休暇を取って帰省中なんだ。ここも奥も遠慮なく使ってくれ」


   東 城 「伊達さん……何から何まで本当にすまない」


   伊 達 「いいっつってんだろ。とにかく座れよ」




 ここでいったん暗転。





○ニューセレナ (深夜)

 東城、伊達、秋山の3人、カウンターに横並びになって座っている。 (※東城のグラスの脇には覆面がある)




   東 城 「伊達さん、さっそくで悪いが……。大吾の行方についてはどうなってる?」



 すると伊達、表情が曇る。



   伊 達 「それについちゃ、今はまだ何にも分かってねえんだ」

   東 城 「そうか……」


   伊 達 「第一、東城会本家が警察の介入を拒んでるんだ。堂島が拉致されたことすら否定してる」


       「だから警察は夏目の時と同様、誘拐事件とすることもできねえ状態なんだ」


       「ハルトの時のようなマニュアルどおりの対策も取れやしねえ」


   東 城 「つまり、手詰まりか……」


   伊 達 「いずれにせよ、誘拐事件ってのは神経戦になるもんだ。今は我慢するしかない」


   東 城 「そうだな」




 東城、沈痛そうな表情。


 そのとき秋山、スマホを取り出す。振動する画面を確認し、




   秋 山 「おっと、夏目さんだ」



 と言うなり、最初からスピーカー機能で通話を始める。



   秋 山 「もしもし? ついさっき、神室町に着いたとこです。レスラー付きで」





○真島ビル・若頭室 (深夜)

 若頭室では、庄司がスマホで真島と通話し、夏目がスマホで秋山と通話しているところ。 (※夏目のスマホは、以前の物と色が違う)




   夏 目 「そうですか! こんな時ちゃうかったら面白がってたんですけど……」

       「実はさっき、東城会本家の緊急幹部会が終わったんです」


  秋山の声 「緊急幹部会? ――そうか、堂島さんのことがあったからですね」


   夏 目 「はい。それに2時間ほど前に、東城会本家に犯人からのメールがあったそうです」


       「六代目の身代金として100億用意せえと」






○ニューセレナ (深夜)

 ニューセレナのカウンターに置かれた秋山のスマホを前に、ニューセレナの3人、顔を見合わせている。


 秋山、代表して発言。




   秋 山 「ま、想定内と言えば想定内ですけどね。――それで、東城会はどう出るんです?」


  夏目の声 「払うことに決まりました」


   秋 山 「そうですか。そりゃ、ハルト君の時よりすんなり出すのは当然ですよね」


  夏目の声 「まあ、それについては色々あったらしいんですけど……」


       「とにかくその身代金要求のこと、秋山さんらにはお伝えしとこうと思いまして」


   秋 山 「そうですか、ありがとうございます」


  夏目の声 「で、それはそれとしてですね」


       「実は今、親父と冴島の叔父貴が、白峯会の槇会長の跡をつけてるんです」


   秋 山 「つけてる?」


  夏目の声 「はい、何か、緊急幹部会の時に怪しい振る舞いがあったっちゅうことで」


       「あと、東城会本部の事務局にタレコミメールがあったそうです」


       「“槇会長がこれから犯人と接触する”と」


   秋 山 「それは……」




 そのため東城、重々しく発言。



   東 城 「いま槇はどこにいるんだ?」

  夏目の声 「それが……。どうも神室町に向かってるらしいです」


   東 城 「なに?」


   秋 山 「神室町に白峯会のシマはありませんよね?」


  夏目の声 「はい、全く」




 秋山、東城を見る。



   秋 山 「どうします?」

   東 城 「できれば、今どんな状況なのかを直接見たい」




 秋山、スピーカーに向けて言う。



   秋 山 「だそうです」

  夏目の声 「よかった。多分そう言いはるやろ思て、お伝えしたんです」




 と、その時、夏目が急いた調子で報告。




  夏目の声 「あの! いま槇会長の車が神室町に入ったそうです」



 東城、すっくと立ち上がる。



   東 城 「どこだ?」

  夏目の声 「千両通りから入ってまっすぐ進んでるそうです。親父の勘やと、神室町ヒルズやろなと」


   東 城 「分かった、すぐ行く。何かあったら秋山に連絡をくれ」


  夏目の声 「分かりました」




 通話を切りスマホをしまった秋山、覆面を装着している最中の東城を見て、諦めの苦笑い。



   秋 山 「それ見てると気が抜けるというか、リラックスできるというか……」

       「とにかく、準備ができたら出かけましょう」


   東 城 「よし、大丈夫だ」


   秋 山 「伊達さんは、すいません。ここで待機しててください」


   伊 達 「分かってるよ、警察関係者だからな」




 はなから諦めている伊達に会釈した秋山。

 その秋山と共に東城、ニューセレナを出る。






〇天下一通り・ニューセレナが入るビル前 (深夜)

 ビル前まで出てきたところで、さっそく不良集団(先頭を「不良E」と表記)に絡まれる。




   不良E 「おい、てめえ、ふざけたカッコしてんじゃねえよ」

       「それとも……標的(マト)になる気でやってんのか?」




 そのため東城、低い声で秋山の耳元に英語で囁く。



   東 城 「Go ahead. (先に行ってくれ)」



 秋山、ニッと笑い、



   秋 山 「Roger. (了解)」



 そして秋山、すぐさまダッシュ。

 不良集団、秋山のほうを見ようともせず、ずっと東城を凝視している。




   不良E 「おまえら! やっちまえ!」



 ここから「vs. 神室町の不良集団」の戦闘となる。

 【その後も神室町ヒルズに着くまでずっと、覆面が災いしての戦闘が入る】








○神室町ヒルズ・正面玄関前 (深夜)

 東城、道路越しに神室町ヒルズの正面玄関が見えるところに立つ、秋山の許へ到着。


 その時、秋山のスマホが振動。すぐに出る秋山。


 東城、スマホに耳を近付けて聞く。




   秋 山 「どうも。今、どんな状況ですか?」

  夏目の声 「槇会長がひとりで、神室町ヒルズに正面玄関から入ったそうです」




 秋山、東城をちらりと見、



   秋 山 「もし槇が犯人の一味だとすれば、やっぱり仲間に会いに来たんですかね?」

   東 城 「あるいは、監禁している大吾の様子を見に来たのかもな」


   秋 山 「よし、いずれにせよ追いましょう」


       「夏目さん。いま真島さんと冴島さんはどうしてます?」


  夏目の声 「尾行中です。親父はノリノリです」


       「スパイ気分がたまらんらしくて、ずーっとスマホで状況報告してくれてはります」


   秋 山 「(笑って) じゃ、このままこれ、繋いどいてもらっていいですか?」


       「その貴重な状況報告をこちらにも報告願います」


  夏目の声 「はい」




 ここから報告口調になり、




  夏目の声 「あの、いま槇会長が、エレベーターに乗り込んだそうです」

       「屋上にも行けるやつに、わざわざ向かってまでです」


   秋 山 「それって確か……乗ってから特別なボタン操作が必要なやつですよね?」


       「特別室に宿泊してる客しか、今日の暗証番号のボタンを知らないっていう……」


  夏目の声 「そうです。せやから親父も別の、屋上にも行けるエレベーターに向かってはります」




 それにより秋山、「おっ」という楽しげな笑みを浮かべる。





○神室町ヒルズ・エレベーター内 (深夜)

 真島と冴島、エレベーター内に二人きりになっている。


 真島、操作盤にかぶりつきとなり、眉間を指でトントンしながら集中している。


 そのだいぶ後方で仁王立ちで腕組みしている冴島、仏頂面の呆れ顔。




   冴 島 「兄弟、ほんまにそれで分かんのか?」


   真 島 「だあっ、もう、集中さしてくれや」




 真島、真剣に眉間トントンで勘を働かせる。

 まず何の表示もないボタンを押したのち、次に階のボタンを1つ押す。


 そして、さらに別の階のボタンを1つ押す。


 すると、これまで何の表示もなかったボタンに明かりがともり、「R」の文字が浮かび上がる。




   冴 島 「おっ」



 真島、ニターッと笑い、そのボタンに指を近付けてゆく。





○神室町ヒルズ・屋上へ向かう階段があるフロア (深夜)

 到着音ののちエレベーターの扉が開き、その中に立っているのは東城と秋山。




   秋 山 「さて、行きますか」


   東 城 「ああ」




 東城と秋山、エレベーターを降りる。

 そこへ、ぞろぞろとスーツ&サングラス姿の男たちが現れる。 (※全員アジア人)


 そのうちのボス格(スーツ男Bと表記)、流暢な日本語で言う。




 スーツ男B 「ここから先は立入禁止だ。下に戻れ」



 秋山、小声で東城に言う。



   秋 山 「What are we gonna do ? (どうします?)」



 東城、小声で秋山に答える。



   東 城 「We have no choice. (やるしかねえ)」

   秋 山 「I knew it. (ですよね)」




 秋山、スマホに向けて、



   秋 山 「夏目さん、いったん切りますね」

  夏目の声 「はい」




 そうしてスマホをしまった秋山。

 その後、東城と秋山、同時に構えを取る。


 ここから「vs. 謎の武装集団」の戦闘となる。


 (※秋山も戦うが共闘ではなく、背景に過ぎない)






○神室町ヒルズ・屋上へ向かう階段があるフロア (深夜)

 戦闘中にムービーに切り替わる。


 移動しつつ戦闘しているうちに、いつの間にか秋山とはぐれていた東城。


 そこへ突然、




   真 島 「うぉりゃあああ!!」



 という気合が響き渡ったため振り返ると、今しも真島が思いっきりジャンピング襲撃をかます寸前。

 その攻撃を東城が両腕クロスで止め、跳ね返したことで、真島は少し離れたところに着地。




   真 島 「何や、やるやないか。今までの雑魚とはちゃうらしいのう」



 東城、内心考える。



   東城M (真島の兄さんか……面倒なことになったな)


       (どうする? 正体を明かすか?)


   真 島 「それに、おもろいモンかぶっとるやないかい。よっしゃ、ワシが力尽くで引きはがしたるでぇ!」




 真島が最高に楽しそうに本気モードで構えたため、東城も構える。



   東城M (チッ、しょうがねえな)



 ここで、「vs. 東城会直系真島組 組長 真島吾朗」の戦闘となる。






○神室町ヒルズ・屋上へ向かう階段があるフロア (深夜)

 戦闘の最中に、ムービーに切り替わる。


 東城が戦闘中、桐生特有の技を出したことにより、勘のいい真島が、




   真 島 「おまえ……!」



 と、覆面男の正体に気付く。


 が、一瞬ニヤリと笑ったのち、そのまま楽しげに戦闘続行。


 そして、ユーザーが操作できる戦闘へと再び切り替わり、戦闘再開。






○神室町ヒルズ・屋上へ向かう階段があるフロア (深夜)

 戦闘後。決着がつかないまま、ムービーに切り替わる。


 そこへ秋山、冴島と共に駆けつけてくる。




   秋 山 「真島さん! その人、俺たち側の人間ですよ!」

   真 島 「おう、秋山か。――分かっとるわ」


   秋 山 「え?」


   真 島 「闘っとる最中に気付いたんや。けど、久しぶりやったからつい熱なってしもてなぁ」




 そして真島、東城を見やる。



   真 島 「そのおもろいのん取れや。――桐生ちゃん」

   冴 島 「何やと!?」




 東城が生きていようとは夢にも思っていなかった冴島、驚愕。

 東城が覆面を取り、冴島が目を瞠って愕然とする中、真島はニンマリ笑う。




   真 島 「神室町にウェルカムバーック! やで、桐生ちゃんよ」



 それを受け、東城の目元と口元だけにうっすら笑みがよぎる。



   冴 島 「どないなっとるんや……」

   秋 山 「今は説明してる時間がありません。とにかく屋上に急ぎましょう」


   真 島 「せやな。ほな行くで」




 と言うなり真島が駆け出し、東城と秋山が続いたため、我に返った冴島も追いかけて走り出す。

 (※この際、東城は走りながら咄嗟にサングラスだけ装着)






○神室町ヒルズ・屋上 (深夜)

 屋上へ出るドアからなだれ込んできた真島、東城、秋山、冴島。


 屋上の中央には着陸しているヘリがあり、その手前で2人の男が向かい合って会話しているらしき状態。


 こちらに背を向ける格好でいるのは、槇。


 こちらに向かう格好で立っているのは、ハットを目深にかぶり、サングラスもかけている謎の男。


 (※なお、この男の首から下は、オープニングで刺青の男を撃った「謎の男」と全く同じ)


 槇、なだれ込んできた4人のほうを振り返り、そこに真島と冴島がいることに驚いた様子。




     槇 「真島さん。冴島さんも……一体どうされたんです?」

   真 島 「それはこっちのセリフやで」


       「おまえが何や隠し事しとるらしいから、掘り出したろうと思て追ってきたんや」


     槇 「尾けたんですか? あまりいい趣味とは言えませんね」




 槇、余裕の態度で、この場を取りまとめるように話し出す。



     槇 「おそらく勘違いしてらっしゃるんでしょうが、これは六代目のこととは無関係ですよ」

       「俺の個人的なビジネスの話です」


   真 島 「ほぉ~~。ほな、そのビジネスっちゅうのを一つ聞かしてもらおやないか」


     槇 「構いませんよ。俺は――」




 その瞬間、銃声が2発響く。笑顔が消えた槇、ゆっくりと前に倒れ込む。

 それによりその背後にいる謎の男が、銃を片手中段で構えているのが見える。




   冴 島 「槇!」



 冴島、叫びながら槇の許へと駆けつける。

 謎の男、冴島を害するそぶりはなく、銃をしまうとすぐにヘリへと向かう。




 東城、思わず叫ぶ。



   東 城 「おまえ!! どういうつもりだ!? おまえが大吾をさらったのか!?」



 すると謎の男、ゆっくりと振り返ると、口元に大きく笑みを浮かべる。



   謎の男 「どうだろうな。人に聞いてばかりいないで、たまには自分で考えてみちゃどうだ? 兄弟」



 そしてハットを取り、サングラスを取った謎の男の顔は――傲然とした笑みを浮かべる錦山。

 東城、驚愕。自分もついサングラスを取って、相手を凝視。




   東 城 「おまえ……!」



 しかし錦山を知らない冴島と秋山、



   冴 島 「何や? 誰なんや?」

   秋 山 「さあ……」




 と困惑。

 そんな中、謎の男のほうを睨み据えている真島の正面に、カメラは迫る。


 顔が大写しになったところで、うなるように呟く真島。




   真 島 「あれは……錦山や」

   秋 山 「錦山って――えっ!? それって……」


       「桐生さんと兄弟分だった錦山組長は、12年前に亡くなったんじゃ……」




 冴島、ともかく怪しい相手だとして、謎の男のほうを睨みつける。


 謎の男、傲然とした笑みのまま、東城に言い放つ。




   謎の男 「兄弟。大吾は無事だ。まだ今のところはな」

   東 城 「何だと?」


   謎の男 「ま、とにかく100億用意して待ってるんだな。そのうちに連絡が来るさ」


   東 城 「おまえがやってることじゃないのか!?」




 すると謎の男、錦山特有の困り笑顔を浮かべる。



   謎の男 「自分で考えろっつったろ。――じゃ、またな、兄弟」



 謎の男、ヘリに乗り込む。ヘリはすぐ離陸し、飛び去ってゆく。

 5人の人間が取り残された屋上で、東城は街中に響かんばかりの声で叫ぶ。




   東 城 「錦――!!」



 そして暗転。







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