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一章 東城編 龍興

一章 東城編 龍興



○アメリカ・バージニア州マクレーン・CIA本部

T「20日前  バージニア時間 2017年12月7日 09:25」


 多国籍な人々が行き交う広々とした現代的な建物内を、「本人の視界」たるカメラアングルの状態で歩き進める人物。


 途中、白人女性に英語で話しかけられる。




  白人女性 「Hi, Caz. (ハイ、カズ)」


       「George has been waiting impatiently for you. (ジョージがお待ちかねよ)」


  東城の声 「Thanks. (ありがとう)」




 引き続きカメラアングルは「本人の視界」のままで歩き進める。






○CIA本部・ローガンの部屋の前→中

 歩き進めて辿り着いた部屋のドアを、ノックする。




ローガンの声 「Come in. (入れ)」




 室内に入ると、ソファーに座っているのはパトリック・ローガン(53)。


 こちらを向いていたローガン、笑顔を浮かべる。


 部屋の奥の窓際には、向こう向きで立っている1人の男がいる。


 その彼がこちらを振り返ることで、それが風間新太郎の弟、譲二(68)であることが分かる。




   譲 二 「よく来たな、カズ」

   東 城 「久しぶりだな、譲二」




 ここで客観的視点へと戻ったカメラ、返事した東城を撮る。

 そこに立っているのは、桐生一馬(49)。


 (※このシーンから以降ずっと、桐生を「東城」と表記)


 ここで東城の顔の大写しになる。


 画面が一時停止し、画面下部に「CIA職員 東城一馬」の表示。


 ここで暗転し、場面転換。






○CIA本部・ローガンの部屋

 すでに3人がソファーに着席し、向かい合っている状態。




   譲 二 「本当に久しぶりだな。もうCIAには慣れたか?」

   東 城 「ああ。――それより、体はもう大丈夫なのか?」


   譲 二 「こうしてリハビリがてらに散歩できるくらいには回復したよ。ユーには本当に迷惑をかけたな」


   東 城 「いや、そんなことはない」


   譲 二 「ユーをCIAに引き抜いておきながらすぐ入院……。結局指導をすっかり人任せにしてしまった」


       「――ユーにも迷惑をかけたな」




 そう言われた隣のローガン、底知れない深みのある顔つきに温厚そうな笑みを浮かべ、流暢な日本語で答える。




  ローガン 「困った時はお互い様ですよ。今さら遠慮する仲でもないでしょう」



 ここでローガンの顔の大写しになる。


 画面が一時停止し、画面下部に「CIA情報担当次官 パトリック・ローガン」の表示。一時停止が解除。




  ローガン 「カズは優秀な生徒でした」


       「身体能力はもちろんですが、ほとんど話せなかった英語を三ヶ月でマスターしたんですからね」


       「その他いろいろ、教育係として本当にやり甲斐がありましたよ」


   譲 二 「(微笑み) そうだろうな。できることなら私が直接指導したかった。悔しいよ」




 ローガン、愉快そうに笑って見せる。



  ローガン 「何を言ってるんです、今からやるんですよ。悔しがってる暇なんかないでしょう?」



 譲二、つられて微笑む。



   譲 二 「そうだな。ありがとう、パット」



 そして譲二、少し改まった口調になり、東城に向き直る。



   譲 二 「さて……今日ユーを呼んだのは、実を言うと私のおせっかいなんだ」



 東城、怪訝そうにする。



   譲 二 「ユーはもう二度と関わるつもりはないと心に決めたことだろう」

       「しかし、知れば絶対に無視はしないはずだ」


       「また、後から知らされれば、なぜ教えてくれなかったと我々を責めるに違いない……」


       「そんな事案だ」


   東 城 「どういうことだ?」


   譲 二 「宇佐美ハルトだよ」




 東城、やや目を瞠る。



   譲 二 「今から9時間前、ハルトがアサガオから誘拐されたんだ」

   東 城 「ハルトが……」




 ショックを受けた東城。だが一瞬後、表情を引き締め、姿勢を正す。



   東 城 「これまでに分かっていることを全て聞かせてくれ」



 それに対し譲二、無言で頷き、ローガンを見やる。

 ローガン、無言で頷き返す。


 そして長い暗転。








○バージニア州マクレーンの公道・東城の車中

 東城、運転中の車中にて、ハンズフリーでスマホから電話をかける。


 しばらくして、繋がる。




  伊達の声 「誰だ?」

   東 城 「……伊達さん。俺だ」




 それにより向こうの伊達真(53)、びっくり仰天。



  伊達の声 「はあ!? ウソだろ!?」






○東京都内の公道・伊達の車中 (深夜)

T「20日前  2017年12月8日 00:18」


 真夜中の道路を車で走行中の伊達、仰天の顔でさらに叫ぶ。 (※もちろんハンズフリー)




   伊 達 「何だ!? おい、まさか――ニセモンじゃねえだろな?」



 ここで伊達の顔の大写しになる。

 画面が一時停止し、画面下部に「警視庁捜査一課 警部補 伊達真」の表示。一時停止が解除。


 その伊達に対し、向こうから東城が答える。




  東城の声 「本物かどうかの確認のために、どんな質問をしてもいいぜ」

   伊 達 「……遥のパンツの色は?」






○バージニア州マクレーンの公道・東城の車中

 運転中の車中で、東城の眉根はしかまり、まさしく苦虫を噛んだような顔になっている。


 東城、内心を押し隠し、ゆっくり答える。




   東 城 「笑えねえぜ」


  伊達の声 「よかった、本物の桐生だな」




 ホッとしたらしい伊達の口調に、東城もつい微笑む。


 しかし、すぐに表情を引き締める。




   東 城 「伊達さん、話があるんだ」


  伊達の声 「そうなんだろうな、わざわざ電話してくるぐらいだからな。いいぜ、今は車ん中だ」


   東 城 「警察車両は音声記録されてないのか?」


  伊達の声 「音声記録だあ? いや、これは俺の車だ。そんな機械はついてねえ、安心しな」


   東 城 「……盗聴したいなら伊達さんのケータイに仕込むだろうから、もう手遅れか」


  伊達の声 「おまえ、まるでスパイか何かみたいな口ぶりじゃねえか?」




 東城、少し沈黙したのち、本題に入る。




   東 城 「ハルトの誘拐について知りたい」


  伊達の声 「えらく早耳だな!」


       「いや、実を言うと、俺もついさっき知らされたばかりでな。本庁に車ぶっ飛ばしてるとこだ」


       「何か分かったらすぐ連絡するよ。――この番号にかけりゃいいのか?」


   東 城 「ああ」


  伊達の声 「そうか。――ところでおまえ、今どこにいるんだ?」


       「あの日、「このまま消える」っつって別れて、それっきりホントに何の連絡も寄こさねえでよ」


   東 城 「実は今、アメリカにいるんだ」


  伊達の声 「アメリカ!? おまえ、パスポートも取れねえのにどうやって行ったんだ!?」




 それで東城、また微笑む。



   東 城 「長い話なんだ、伊達さん」

  伊達の声 「ったく……。分かったよ、聞くよ、聞きゃあいいんだろ」


   東 城 「悪いな」




 そして東城、少し考えたのち、話し始める。



   東 城 「風間のおやっさんの弟の譲二を覚えてるか?」

  伊達の声 「もちろんだ。CIAの風間譲二だろ?」


   東 城 「そうだ。その風間譲二が、あの日伊達さんと別れた後、突然俺の目の前に現れて――」




 そこで暗転。







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